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How did you feel at your first kiss?
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 寝そべったベッドの上で、じっと見つめてくる視線の熱の高さ。
 嫌だと思った事は無いが、時にはその刺激が強すぎる事もある。
 こんなぐちゃぐちゃな顔見てんじゃねえよと毒づきたい言葉ももはや出てこない。
「………………」
 むずがるように宍戸が毛布の中に顔を半分までもぐりこませる。
 鳳はそれを甘ったれて嫌がるかのごとく阻止してきた。
「…苦しいですよ? もぐったら」
「………………」
 うう、と声にならない声で唸った宍戸に鳳の笑みは深くなる。
 汗や涙で濡れている宍戸の頬を、大きな手のひらで撫でつけながら、鳳は囁いてくる。
「眠いですか?」
 首を左右に振るだけの所作で宍戸は応えた。
 その間も鳳の手のひらはゆったりと宍戸の肌の上を撫でている。
「痛いとこない?」
「……ねえよ。あんだけ馬鹿っ丁寧に抱いてて言うな」
「馬鹿はひどい」
 笑いながら鳳が宍戸の唇にキスを落としてきた。
 余裕のない顔は隠さず見せるのに、ガツガツしたところのない年下の恋人の舌を宍戸は軽く噛んでやった。
「やりたいようにやれって俺は言ってんのによ…」
「してるじゃないですか。そうやって宍戸さんが許してくれるから、俺は宍戸さんに触れたいところ全部に触れてるし」
 実際それは本当の話。
 鳳は宍戸に、相当際どい事もするし、触れてもくる。
 それは宍戸も判っているのだけれど、例えばこんな風に終わった直後の状態の差などを目の当たりにしてしまうと、いっぱいいっぱいなのは自分の方ばかりのような気がしてしまうのだ。
「なんか露骨に手加減されてる気がすんだよなぁ…」
「そんな馬鹿な」
「お前な。馬鹿とか言ってんじゃねえよ」
「宍戸さんだってさっき言ったじゃないですか」
 どうでもいいような口調に紛れさせて、多分に本音を織り交ぜて言葉を放る。
 誠実で生真面目な後輩は心底呆れ返ったような返事を寄こしてきたのが宍戸を内心で安堵させる。
「背中冷えてきましたね。シャワー浴びにいきますか?」
 背筋をさらりと鳳の手のひらに撫で下ろされて、宍戸は言った。
「んー…じゃ、もう一回」
「宍戸さん?」
「起き上がってシャワー行くの面倒」
 だからもう一回する、と宍戸は鳳の身体の上に乗り上がった。
 鳳が本気で驚いているのがおかしくて、宍戸は笑った。
「なんて顔してんの。お前」
「え…そりゃ、だって…宍戸さん」
「しどろもどろじゃん」
 喉の奥で響かせるように笑って、宍戸は鳳の額に唇を落とした。
 こめかみと、頬にも口付けを滑らせると、ぐっと腰を抱かれた。
「…馬鹿ですね。宍戸さんは」
「長太郎。てめえまた馬鹿っつったな」
 本当にもう、と嘆息する鳳の喉元に噛み付くように宍戸は痕をつけてやる。
 後ろ髪がやわらかく鷲掴みにされて、顔を引き上げさせられた。
 腰を抱き込まれる力と同じ強さで後頭部も抱え込まれて、唇が深い角度で噛み合う。
 強いキスに頭の中がぐらぐらした。
 眩暈じみた感覚に囚われながら、息の止まる限界までむさぼられたキスが解ける。
 すでに潤み出していた宍戸の視界で、鳳が目を細めていた。
 艶めくように熱が上がる。
「綺麗な色」
「………、……」
 宍戸の身体の下で、じっと宍戸を見上げてくる視線の熱の高さ、言葉に交ざる呼気の熱の高さ。
 そう囁かれ、次いで鳳の舌で直接舐め上げられた宍戸の唇が、発火するかのように綻んだ。
「…長太郎」
 そうして綻んだ唇から漏れたものは、宍戸の一番大切なものの名前だ。
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