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How did you feel at your first kiss?
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 泊まっていけと当たり前のように跡部は命じるけれど、そうそう外泊が出来るわけがない。
 中学生だぞ俺は。
 神尾は憮然と、跡部に言った事があるのだが。
 返答は、こっちもそうだ馬鹿野郎と全くもってにべもなかった。
 神尾が帰ると答える日は、決まって跡部は不機嫌になる。
「………何でついてくんだよ」
「アア?」
 すっかり日暮れが早くなった。
 暗い道を黙って歩く沈黙の重さに耐えかねて神尾が呟けば、背後からの返答はガラが悪い事この上ない。
 それでも神尾がちらりと振り返った視線の先にいる跡部は、暗闇にあっても華やかで、秀麗な顔も整ったスタイルも嫌って程よく目立つ。
 ファーのついたジャケットなんか、そんな当たり前みたいに着こなすなよなと神尾は内心で思った。
「ついてく訳ねえだろ。何で俺がてめえなんかに」
「………………」
「送ってやってんだろうが。彼氏が直々に、こうやって」
 素っ気無くも冷たい言い方のすぐ後で、今度はそんな風に言ってくるから嫌だ。
 どういう顔をしていいのか判らない。
 神尾は黙って前を向いた。
 歩く足は止めない。
 俯きがちに歩を進める神尾の後ろを跡部は歩いてくる。
 帰ると言った神尾に、いつものように不機嫌になったくせに。
 実際神尾が身支度を始めると、何故か一緒に出てきた跡部だ。
 何にも喋らない。
 ただついてくる。
 視線だけはやけにひしひしと背に感じて神尾はどうにも居たたまれなくなった。
 振り返りたい。
 振り返りたくない。
 走ってしまいたい。
 もっとゆっくり歩きたい。
 頭の中がごちゃごちゃになる。
「神尾」
「………………」
「お前の歩き方、やけにみっともねえな」
「………ッ……誰のせいだと…、…!」
 それなのに、冷淡な声でいきなりそんな言葉を放られて。
 神尾は思わず足を止め、背後の跡部を物凄い勢いで振り返って怒鳴った。
 跡部は胸の前で両腕を組み、唇の端を引き上げて笑っていた。
「ア? 誰のせいだって?」
「……、…っ…まえのせいだよ…!」
「俺は黙ってお前の後ろ歩いてただけだろうがよ」
「ずっとあるみたいなんだよ…!」
「……へえ?」
 目を細めて笑う跡部の表情が、すごくいやらしい顔になった。
 ものすごく綺麗でもあるけれど。
 勢いで怒鳴ってしまった神尾だったが、跡部のその顔つきに、はっと息を飲む。
 ずっとあるみたいだと、言った言葉は咄嗟のもの。
 でも。
 どこに、とか、なにが、とか。
 そういうニュアンスは後からじわじわと神尾の羞恥を侵食してきた。
「ま…俺も似たようなもんだけどな」
「……え?」
 ずっとお前の、と跡部が言った所で神尾が絶叫する。
 場所も何も忘れて喚いた。
 跡部は露骨に眉を顰めた。
「うるせえな」
「おま、…っ…なに、言おうとして…っ!」
「ああ?」
 真っ赤になった神尾を、跡部は心底から呆れながらも、さも面白そうに眺めてくる。
「だから俺もずっとお前の」
「…ッ、…言うな…っ! 最低! 最悪!」
「てめえが聞いておいてその言い草か?」
 そのうえ力づくで神尾を抱き込んできて、キスまでしてきた。
「………、ぅ…、…」
「………………」
「…っ………」
「……今度から、泊まらねえ日はシャワー貸さねえからな」
 肩口の匂いを味わわれている気配に神尾は一層真っ赤になった。
 跡部自身が使っている筈のボディソープの香りが、まるで気に食わないみたいな顔を跡部はしていた。
「ゆくゆく変えてやるよ」
「……え……?」
「お前の帰る場所をだ」
「…………跡部?」
 駄目押しのようなきついキスをされた後に、軽く身体が突き放される。
「せいぜいよろよろと、帰るんだな」
 冴え冴えとした声。
 いつもの、そっけない跡部の口調だ。
 でも後ろ手に軽く手を振られて、それだけの事に神尾の顔は、やはり赤いままでいるしかなかった。
「もー……訳わかんねー…跡部…」
 珍しく泣き言めいた言葉が神尾の唇からもれる。
 身体の奥深くに、今尚残る余韻を植えつけただけでは飽き足らず。
 神尾の唇にもまた、まだキスのさなかのような余情が塗り込められて、神尾はまさしくよろよろと帰途につくしかなくなった。
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