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How did you feel at your first kiss?
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 制服のままするテニスは少し窮屈で、でもそれが却って程よい戒めになるかな、と宍戸は思った。
 引退した部ででしゃばりすぎるのは宍戸の意とする所ではない。
 時折顔を出し、望まれた部分だけ手を貸して、最後に少しだけコートを借りる。
 テニスは、やはり楽しかった。
 いとおしかった。
「俺が、なんて言われてるか知ってますか?」
 コートの中。
 腕でこめかみからの汗を拭っていた宍戸は、ネット越しにいる日吉にそんな風に声をかけられた。
 今の今まで対戦形式で打ち合っていた勝負は宍戸の勝ちで、日吉は悔しさを隠していない。
「いや?」
「日吉もとうとう飼い慣らされたかって」
「……ああ?」
「宍戸先輩に」
「なんだそれ」
 部内の二年や、引退した三年が、そう日吉に言っているらしい。
 日吉の性格から考えて、それはかなり腹もたつだろうと宍戸は思った。
 しかし意外にも日吉は言った。
「別に構いませんけど」
「……日吉?」
 日吉は低い声で、珍しく饒舌に話をした。
「見た目より根性あって、見た目より危なっかしいって判りましたから」
「俺の事かよ?」
「はい」
「……そう見えんのか?」
「俺にはそう見えます」
 言われた言葉に、宍戸は物凄く驚いてしまった。
 日吉が淡々と言うから、ついそれにつられた物言いをしたが、よもや日吉からそんな事を言われるとは思ってもみなくて。
 一つ年下の後輩をまじまじと見据えてしまう。
 宍戸の視線を受けて、日吉は僅かに目を伏せた。
「宍戸さんは、俺が貴方の事を好きじゃなかったの知ってましたよね」
「ああ。嫌いだろ?」
 元々そういう気配はあって、そこに敗者はレギュラーから外されるという榊のやり方に従えずに足掻いた宍戸の行動が拍車をかけた。
 目上であろうが、同級生であろうが、馴れ合う事をしない日吉の孤高のポジション、それはどこか宍戸と似てもいたけれど。
 似ている部分があるが故に、宍戸の甘さを日吉は厭ったのだろう。
 だから日吉の問いかけに宍戸は即答したのだが、日吉はまるで舌打ちのような溜息を吐き出した。
「………嫌いではなく好きじゃない、です」
「違うのか?」
「違います。加えて言えば、好きじゃなかった、です」
「今は違うのかよ」
 どこか面白そうに。
 からかいを交ぜて言った宍戸に、日吉は無表情でそれを肯定してきた。
「違います。……時々鳳に牽制されるくらいには」
「…………ばかだよな…あいつ」
 不意打ちで放られた名前に、宍戸は笑みを浮かべながら顔を伏せた。
 こんな風に人の口から聞かされる鳳の言動。
 日吉に牽制したって意味もないだろうにと。
「鳳が、宍戸先輩の事を綺麗だって言う時と同じ目してますよ。今」
「………勘弁しろよ」
 決まり悪い事この上ない。
 顔が熱くなってくるのが判って、宍戸は日吉が見られない。
 珍しくも薄く笑んでいる日吉の表情はどこか大人びている。
 赤くなって俯く宍戸なんて、大概の人間が知らないだろうと日吉は思った。
 口の悪い上級生がそんな風に可愛く見えるのは、全てあいつのした事か、と。
 感心したのも束の間。
「………………」
 日吉は、部室の方からこのコートへと走ってくる同級生、鳳に気づいて嘆息する。

 だからこの程度の会話なのだから。

 そんなに血相変えて走ってくる事はないんだ。
 それは日吉の今の呟きで、宍戸の後の呟きだ。
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