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How did you feel at your first kiss?
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 もう本当に今度こそと意を決した顔で鳳が身体を離そうとするのを宍戸は伸ばした両腕で引きとめた。
「宍戸さ……」
 窘めるような声をもらした鳳の唇を宍戸は無言で塞いだ。
 力ない舌を差し出せば鳳の気配が怒ったような困ったようなものになって、舌はひどく優しくも噛まれてしまう。
 宍戸の誘いかけは、鳳に咎められているのだと判ったけれど。
 構わずに、宍戸は鳳の首に両手を絡めた。
 鳳の腰を合間において、まだ大きく開いている片足も擦り寄らせて縋れば、鳳が小さく息を詰めたのが触れ合わせた唇の感触で判る。
 そっと噛まれた舌で、懲りずに鳳に唇を舐めれば、宍戸の身体の奥が確かに重くなる。
 こうやって、何度繰り返しているのか。
 宍戸が誘う以上の激しさを、鳳は送り返してくるけれど、さすがに心配の度を越したような、どこか辛そうな目をしてキスをほどいてきた。
「宍戸さん」
「……………」
「無茶……しないで…」
「………るせえ」
「これ以上したら」
「うるさい」
 お前が悪いんだろうがと睨みつけて。
 俺は怒ってるんだと言ってやれば、宍戸の視線の先、鳳が頷いた。
「反省してます。本当に。だから、」
「……じゃ…抱け」
「だから、……これ以上は無茶ですって……」
 幾度したのか、ちょっとすぐには答えられないのはお互い共だ。
「ごめんなさい。ごめんね、宍戸さん。もうあんなこと絶対言わないから」
「だから……ゆるしてほしかったら、しろ。…バカ」
「宍戸さん……熱っぽいよ…?」
「………………」
「声もね、嗄れてるし。…息するのも苦しそうじゃないですか」
 労る手が宍戸の肩や頬を擦る。
 優しい所作は、普段ならば行為の終焉の時のものだ。
「涙、止まらなくなってるって…判ってる?」
 だからそんなのは誰のせいでどうしてかなんて。
 判ってるだろうと宍戸は鳳を睨みつける。
 涙が滲み続ける目元を、気遣いに溢れた鳳の大きな手が優しく優しく撫でていく。
「痙攣の仕方もだんだん酷くなってきてる。……これ以上は…ね…? 本当に無茶ですから」
「……、…れでも…」
「宍戸さん……」
「それでも、!」
 お前が悪い。
 だから抱け。
 宍戸はもう一度そう言った。
 それしか言えないのだ。


 鳳が。
 数年、十数年、先の話をした時に。
 宍戸さんが哀しんだりするような事が何もないといいな、と優しく綺麗な目を切なげにしてみせたから。

 数年、十数年、先の未来に。
 宍戸の隣に、まるで居ない可能性があるような、そんな眼を鳳がみせたから。

 
 それしか言えないのだ。
「お前が、悪いんだよ……!」
 繰り返し宍戸が怒鳴っている言葉に、鳳はその都度、真剣に詫び続けている。
 そういう意味ではないのだと。
 自分がどれだけ宍戸を好きか、それも全部言葉にして、かき口説いて、くるけれど。
 宍戸はそんな風に、自分に向けられた鳳の恋情を知るたびに。
 唯一生まれてしまった不安にどうしようもなくなった。
 もう無茶だと鳳が言っても。
 身体が熱っぽくなっていて。
 声は嗄れ、息が苦しく、涙が止まらず、痙攣がおさまらなくなっていても。
 抱け、と繰り返し言った。
「……俺を壊すこと、覚えろよ」
「宍戸さん、」
「俺に傷をつけること、お前はちゃんと覚えろ」
 そんな事に怯えて手放されるなんて宍戸は我慢出来なかった。
「一生、俺を壊さないとか、傷つけないとか、」
「………宍戸さん」
「そんなことするくらいなら離れた方がいいなんて、そんな馬鹿な決断なんかお前が一生、絶対、出来ないように」
 今、何度でも、覚えろと宍戸は思う。
 壊されたって、傷ついたって、鳳を好きなままでいる自分をちゃんと知っていろと宍戸は願う。
 だから宍戸は、無茶でもなんでも。
「……抱け…って……!」
 子供じみた癇癪のように声を振り絞れば、優しくて、優しくて、愛情を注ぐ事を惜しまない男は、宍戸の潤んだ視界の中で、奥歯を噛み締め険しい顔をした。
「………ッ……ん、っ…」
 唇に訪れたきつい口付けに宍戸は安堵する。
 壊れたって、傷がついたって、鳳の事を好きでいる自分を見て理解しろと。
 喉元を噛み付かれるように埋められたキスに、宍戸の唇は。
 幸福を溶かしこんだ透明な笑みを浮かべた。
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