How did you feel at your first kiss?
明け方、やけに寒いなとは思ったのだ。
季節柄、日に日に気温は下がっていっているから。
寒いのは当然だと思いながらも、さすがに、身体の芯から身震いするような寒さを覚えて跡部は目を開けた。
「………………」
毛布はしっかりと肩までかかっていて、しかも胸元には神尾がすっぽりとおさまっている。
体温の高い神尾は確かに跡部の腕の中にある。
ここまで密着していて寒いも何もないだろうと思いながら、跡部は億劫に瞬きを繰り返しながら一層深く神尾の身体を抱き込んでみる。
熟睡している神尾は、すうすうと音にならない音程度の寝息で、されるがままだ。
「………………」
家人が全て出払っているのをいい事に、跡部は神尾を半ば強引に家に泊まらせた。
こうして平日に神尾を泊まらせたのは初めてだったけれど。
身体を横向きにして、小さくなって。
指先を軽く握りこんだ手を、顔の近くに置いて眠る様子は見慣れたそれだ。
丸まった指が、神尾の寝姿をやけに幼く見せる。
跡部は眠気を引きずったまま、その神尾の曲げられた指の関節に唇を寄せた。
「…………と…べ……?…」
「………………」
起こす気はなかったのだが、眠気にとろりとなった声で確かに神尾は跡部の名前を呼んだ。
跡部が無言のまま神尾の背中に手を回すと、大人しく抱き込まれたまま、今度はもう少しはっきりとした声で神尾が言った。
「…あとべ……さむいのか…?」
神尾のくせに何でそんなことが判ると、悪態をつく気はあったのだが、跡部の唇から零れたのは別の言葉だった。
「…………寒ぃ……」
言いながら一層強く華奢な身体を抱き寄せる。
神尾が初めて焦ったように身じろいだ。
「跡部、……おまえ…身体熱い…」
「……バァカ……熱いんじゃなくて寒いんだよ」
毒づく跡部に、神尾はいつものように反論してはこなかった。
急いた仕草できつい束縛の中から引き出した手を跡部の額に当てて、もがき出す。
「熱、…熱あるって…お前…!」
「………暴れんな。風起きて寒い」
不機嫌に跡部は呻いた。
本気で寒い。
しかし、抱き込んだ神尾の身体だけが今跡部にとって温かなものだった。
「薬、どこにあるんだよ?」
「いらね……」
「今のうちに飲んでおいた方がいいって……!」
「いらねえって言ってんだろ………逃げんじゃねえ。馬鹿」
「ちょ、…おい、離せってば…! 俺探してくるから…!」
どうやら神尾はすっかりと目覚めてしまったようだった。
代わりに跡部は倦怠感にどっと襲われたかのように身体が重くて何もかもが億劫で堪らない。
このままただ抱かせておけばそれでいいものを、神尾は躍起になって跡部の腕の中から出て行こうとする。
それがとにかく腹立たしい。
舌打ちして、しかし跡部の口から零れたものは。
「………行くな」
「跡部、……」
「行くな。ここにいろ」
「………薬探してくるだけだぜ…?」
「行くな」
これではもうただの懇願だ。
跡部は不機嫌に眉根を寄せたまま、しかし、神尾を縛り付けるように一層深く身のうちに抱きこんだ。
寒気は相変わらずだったが、今腕の中からこの存在が離れていく事の方がどれだけ身体に負担かと思う。
「なあ……すぐ戻るから」
「嫌だ」
「……、…いやだ…って」
小声で即答してやったら、跡部の腕の中で神尾の体温がふわりと上がったのが判る。
心臓の音も早いじゃねえの、と。
普段なら口にしている言葉も。
今は跡部の胸中でのみ発せられている。
神尾を抱き締める腕も、もはや拘束というよりは逃すまいとしがみついているばかりだ。
「大人しくしてねえと、さっきよりかボロボロに泣かす」
「、ばかかおまえはっ」
熱あるくせしてと叫んでいる神尾の唇を跡部は塞いだ。
やけに甘い。
甘く濡れて、甘く熱い。
むさぼるようにして跡部がしかけるキスの合間で、神尾の泣き声交じりの声が途切れ途切れになった。
「………ふ……ぁ、っ」
「………………」
「んゃ……、ん、ャ」
完全に飢えた気分で跡部は神尾に口付ける。
それは身体の欲というより。
「み、ず……っ…、ん、っ、…くん、できてや…、から……っ」
「………………」
「…ゃ……跡部……っん、ぁ、く」
口付けた神尾の口腔から喉の渇きを収めてくれそうなものを手当たり次第奪った。
毛布ではどうにもならない寒気だけれど、こうしてこの肢体を抱き締めていれば温かい。
薬だとか、水だとかも、いらないだろう。
渇きはむさぼる口付けで得られるもので潤し、例え一時でも離れられたら跡部の体調不良は悪化しそうなのだから。
今片時も手放せない、毛布であり薬であり水である相手を跡部は抱き締めて、口付けて。
いとおしんだ。
季節柄、日に日に気温は下がっていっているから。
寒いのは当然だと思いながらも、さすがに、身体の芯から身震いするような寒さを覚えて跡部は目を開けた。
「………………」
毛布はしっかりと肩までかかっていて、しかも胸元には神尾がすっぽりとおさまっている。
体温の高い神尾は確かに跡部の腕の中にある。
ここまで密着していて寒いも何もないだろうと思いながら、跡部は億劫に瞬きを繰り返しながら一層深く神尾の身体を抱き込んでみる。
熟睡している神尾は、すうすうと音にならない音程度の寝息で、されるがままだ。
「………………」
家人が全て出払っているのをいい事に、跡部は神尾を半ば強引に家に泊まらせた。
こうして平日に神尾を泊まらせたのは初めてだったけれど。
身体を横向きにして、小さくなって。
指先を軽く握りこんだ手を、顔の近くに置いて眠る様子は見慣れたそれだ。
丸まった指が、神尾の寝姿をやけに幼く見せる。
跡部は眠気を引きずったまま、その神尾の曲げられた指の関節に唇を寄せた。
「…………と…べ……?…」
「………………」
起こす気はなかったのだが、眠気にとろりとなった声で確かに神尾は跡部の名前を呼んだ。
跡部が無言のまま神尾の背中に手を回すと、大人しく抱き込まれたまま、今度はもう少しはっきりとした声で神尾が言った。
「…あとべ……さむいのか…?」
神尾のくせに何でそんなことが判ると、悪態をつく気はあったのだが、跡部の唇から零れたのは別の言葉だった。
「…………寒ぃ……」
言いながら一層強く華奢な身体を抱き寄せる。
神尾が初めて焦ったように身じろいだ。
「跡部、……おまえ…身体熱い…」
「……バァカ……熱いんじゃなくて寒いんだよ」
毒づく跡部に、神尾はいつものように反論してはこなかった。
急いた仕草できつい束縛の中から引き出した手を跡部の額に当てて、もがき出す。
「熱、…熱あるって…お前…!」
「………暴れんな。風起きて寒い」
不機嫌に跡部は呻いた。
本気で寒い。
しかし、抱き込んだ神尾の身体だけが今跡部にとって温かなものだった。
「薬、どこにあるんだよ?」
「いらね……」
「今のうちに飲んでおいた方がいいって……!」
「いらねえって言ってんだろ………逃げんじゃねえ。馬鹿」
「ちょ、…おい、離せってば…! 俺探してくるから…!」
どうやら神尾はすっかりと目覚めてしまったようだった。
代わりに跡部は倦怠感にどっと襲われたかのように身体が重くて何もかもが億劫で堪らない。
このままただ抱かせておけばそれでいいものを、神尾は躍起になって跡部の腕の中から出て行こうとする。
それがとにかく腹立たしい。
舌打ちして、しかし跡部の口から零れたものは。
「………行くな」
「跡部、……」
「行くな。ここにいろ」
「………薬探してくるだけだぜ…?」
「行くな」
これではもうただの懇願だ。
跡部は不機嫌に眉根を寄せたまま、しかし、神尾を縛り付けるように一層深く身のうちに抱きこんだ。
寒気は相変わらずだったが、今腕の中からこの存在が離れていく事の方がどれだけ身体に負担かと思う。
「なあ……すぐ戻るから」
「嫌だ」
「……、…いやだ…って」
小声で即答してやったら、跡部の腕の中で神尾の体温がふわりと上がったのが判る。
心臓の音も早いじゃねえの、と。
普段なら口にしている言葉も。
今は跡部の胸中でのみ発せられている。
神尾を抱き締める腕も、もはや拘束というよりは逃すまいとしがみついているばかりだ。
「大人しくしてねえと、さっきよりかボロボロに泣かす」
「、ばかかおまえはっ」
熱あるくせしてと叫んでいる神尾の唇を跡部は塞いだ。
やけに甘い。
甘く濡れて、甘く熱い。
むさぼるようにして跡部がしかけるキスの合間で、神尾の泣き声交じりの声が途切れ途切れになった。
「………ふ……ぁ、っ」
「………………」
「んゃ……、ん、ャ」
完全に飢えた気分で跡部は神尾に口付ける。
それは身体の欲というより。
「み、ず……っ…、ん、っ、…くん、できてや…、から……っ」
「………………」
「…ゃ……跡部……っん、ぁ、く」
口付けた神尾の口腔から喉の渇きを収めてくれそうなものを手当たり次第奪った。
毛布ではどうにもならない寒気だけれど、こうしてこの肢体を抱き締めていれば温かい。
薬だとか、水だとかも、いらないだろう。
渇きはむさぼる口付けで得られるもので潤し、例え一時でも離れられたら跡部の体調不良は悪化しそうなのだから。
今片時も手放せない、毛布であり薬であり水である相手を跡部は抱き締めて、口付けて。
いとおしんだ。
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