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How did you feel at your first kiss?
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 閉じている瞼に光が見えた、そんな気がして。
 海堂は眠気に思い瞼を引き上げていく。
 暗い部屋の中。
 眠い視界にやけにくっきりと海堂の目に映った乾の背中。
 座っていても長身と判る身体のラインから滲んでいるのは、乾が対面しているパソコンのディスプレイ光だ。
 海堂は暫くベッドに横向きに寝たまま乾の背を見つめていた。
 はめたままだった腕時計を、音のしないように毛布の中から引き上げて時間を見れば溜息が零れる。
「…………いい加減休んだらどうなんですか」
「あ、ごめん。眩しかったか」
 低い小声は、そのうえ掠れてもいたのに。
 乾は即座に海堂を振り返ってきた。
 背中の筋肉がシャツ越しに滑らかに隆起するのが見てとれる。
「…………俺の話じゃない」
「ん…?…」
 いいからほら、と海堂は寝ていた寝具の空いたスペースを手の甲で軽く叩く。
 海堂は泊まりに来た身で、これでは誰の為のベッドだが判ったものではない。
 しかし乾はやけに嬉しそうに近づいてきた。
「………………」
 海堂は上掛けの端を軽く持ち上げる。
 更に乾が笑うから、何だか恥ずかしい事でもしているみたいな気にさせられて。
 海堂は目つきもきつく乾を睨み上げた。
 ベッドに寝そべったまま乾を見上げる。
 見慣れぬ角度だ。
 襟ぐりの広いシャツから見える骨ばった鎖骨から首へのラインがやけに雄めいて見えるのは、少し前にそこに両手で縋りついた感触がまだ海堂の手のひらに生々しい所為だ。
「………………」
 足の狭間を口腔に長いこと捕らわれて、肩を押し返していたのは束の間で。
 最後はもう泣き声を噛み殺しながら乾の髪や首の裏側に指先を沈ませていた。
 実際には目にしていない筈の、嚥下した時の喉の動きを考えさせるような乾の首筋を見上げて海堂は唇を噛んだ。
「………………」
 毛布の端を引き上げていた手を下ろしてしまうのとほぼ同時に、するりと乾が毛布にもぐりこんできた。
 眼鏡を手探りでベッドヘッドに置くのを待って、海堂は憮然と言った。
「………あんたいつもこんなことしてんのか」
「いつもとまではいかないよ」
「人がいて落ち着かないとかなら言えばいい……」
「何言ってるんだ」
 低い低い笑い声はほんの少し気だるげで。
 疲れているのかと思えば、海堂の手は自然と乾に向かって伸びる。
 無意識に髪を撫でつけるようにして触れていると、乾は海堂の胸元に顔を伏せてきた。
「……葉末君にもしてあげた?」
「たまにですけど。……あいつ具合悪い時は一緒に寝たがったから」
「いいなあ……海堂がお兄ちゃんか」
「何言ってんっすか。先輩」
 実際の弟よりも数段に甘ったれた所作で乾は海堂の胸元にもぐりこむようにしてくる。
 けれども海堂の腰に回されてきた長い腕に、家族の気配や子供の仕草はまるで滲まない。
「……いー…匂い…」
「…、……せんぱ……、…」
 胸元から首筋に、味わうような唇が寄せられ滑ってくる。
 慈しまれながら楽しまれているように、本当に何かの匂いがするのかどうかは海堂には判らない。
 ただ海堂には、普段とは少し違って、ベッドの中ではあっても、自分に擦り寄って肌と肌を密着させてくる年上の男が、本当に心地良さそうな吐息を零すのに煽られた。
「海堂抱っこしてるとよく眠れるんだよな……」
 臆面もない言葉に、馬鹿言ってんじゃねえと海堂が言えば言ったで。
「海堂に叱れると気持ち良い。すっきりする」
 海堂の胸元で乾が笑うから。
「いいからもう寝ろ! 先輩」
「……ああ」
 怒鳴りつけて、乾の頭を枕に押し付けてやったのに。


 翌朝海堂が目覚めると、恋人はちゃっかりと。
 海堂を抱き締めながら、海堂の胸元におさまっていた。
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