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How did you feel at your first kiss?
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 広いベッドの上で。
 柔らかい毛布の内側で。
 囲われてしまう腕の中でのおいかけっこ。

 
 跡部の声は、まるで自分に手をやいているかのように聞こえた。
「おい。逃げるな」
「逃げるだろ。逃げるよ普通。何で引っぱんだよ」
 疲れた身体で必死にもがく神尾を、跡部は難なく封じ込めた。
 裸の胸に引き寄せられる。
 背中に手のひらが宛がわれる。
 まだ少し息があがっている。
 跡部も、神尾も。
「しねえよ。もう。…………しねえって言ってんだろ。逃げんな。何で暴れんだ」
 神尾が尚ももがくのを止めないでいたら、跡部は不機嫌そうに、でも根気良く、神尾を宥めすかそうとしてくる。
 跡部にも多少の倦怠感が垣間見える腕に抱き締められて、神尾は、何でかなんて聞くなよと思った。
 何でかなんて、そんな事は決まっているのだ。
「だってよう……」
「…何だ」
「跡部がもうしないって言っても、……じゃあこうやってて俺がしたくなったらどうすんだよ」
「………………」
「………どうすんだよ?」
 そしたら困るだろうと神尾は思って言ったのに。
 何だかとんでもないようなすごい力で跡部に抱き締められてしまった。
「…、っ……な…、…に……?…苦し…、…って、ば…! 跡部、?」
「………どう考えても今のはお前が悪いだろ」
「は?…いや、俺は全然悪くないだろ…っ……」
 だいたいまだ服も着ていないのだ。
 お互い。
 こんな風にきつくぎゅっと抱き締められたりなんかすると、へんになる。
「………人がしねえって言ってやってる側からこれか」
 らしくもなく甘やかしすぎたと苦々しく呟いた跡部に抱き締められて、神尾はもうもがくことすら許してもらえなくなった。
「ちょっとは判れ。てめえも」
「…、跡部?」
 手をとられる。
 導かれる。
 触れさせられて、包みこむようにしろと教えられる。
「……、っ…、……」
 手のひらの中で感じた脈に背筋を震わせた神尾は、唇を跡部からのキスで深く塞がれてしまう。
 すきまなく食い違わせた唇は甘く密着して、生々しく口腔を舌で辿られる。
 手の中で。
 重くなる。
 熱くなる。
 神尾はいよいよどうにも出来なくなって、キスを受けながら瞳を潤ませた。
「…………、」
 するとすぐに跡部の唇は神尾の眦へとやってきた。
「やらねえよ。泣くな、バカ」
「……んで…?…」
「ああ?」
「しな……ぃ…、の……何で……?」
「最初に言った」
「でも、だって、これ」
 神尾は次第に顔を赤くしていく。
 伝導してきた。
 跡部に触れている手のひらから。
「あーうるせえ。こんなのはいつもだっつーの」
「………………」
「今までだってどれだけこのまんま我慢させてきたと思ってやがんだ。お前」
 いい加減呆れ返ったような跡部の物言いに、神尾は狼狽した。
「な、…そんなの俺、知らなか……」
「教えなかったんだよ」
「…………言えよ…ばか」
 くたくたと神尾の身体から力が抜けていく。
 跡部が少し笑ったのが振動で判った。
「お前はくたばってんので精一杯だからな」
「………がまんとかするなら、それでもすればよかったんだ」
 どれだけ自分がくたばっていたって。
 でも、神尾のそんな言い分は。
 跡部によって手荒に甘く切り捨てられた。
「俺の一番大事なもん壊せってのか? 正真正銘の馬鹿だな。てめえは」
 雑な声音。
 凄む言葉。
 そんな風に本気で大事にしてきて。
 本気で呆れ果てている跡部に。
 神尾が出来る事といったら。
「………どっちが正真正銘の馬鹿だよ」
「アア?」
「俺がしたくなったらどうするんだって、俺は最初にちゃんと言ったのに」
「神尾?」
「……………どうすんだよ」
 拗ねきって。
 神尾は跡部の首筋に両腕でしがみついた。


 おいかけてこないなら、おいかけていく。
 おいかけてくるなら、例え逃げはしてみても、最後にはきちんとつかまえられてやるから。

 どうするんだと、一方的に責めてやるくらいは神尾だけの特権だ。
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