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How did you feel at your first kiss?
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 三人で結託した時の彼らは最強だ。
 越前、菊丸、不二、彼ら三人の力が最大に発揮される時、恰好の対象となってしまうのが海堂だった。
「海堂先輩って、休み明けだと雰囲気変わるよね」
「………あ?」
「うんうん。休み明けは、一際美人さんだにゃー」
「…………は?」
「そのあたりの秘訣なんかを是非教えて欲しいな」
「…………………」
 朝から、件の三人に取り囲まれ捕まってしまった海堂は、怪訝な顔をしたり唖然となったり困惑を深めたりと忙しい。
 海堂のそんな表情は、さして付き合いがなければ恐らくは全く汲めないものなのだろうが、ここにいる三人には面白い程の変わりようだ。
「おい……お前達」
 海堂の隣に並んで一緒に登校してきた乾は、彼らに提言し、溜息をつく。
 近頃頓に、この三人による、こういった類のからかいが多いのだ。
 乾と海堂が一緒にいたりするともう。
 どこからともなく連れ立って現れては、あれこれとかまをかけてきたり、構ってきたりする。
 乾を突っついても面白くないと言ったのは確か菊丸で、その言葉通り彼らの目的は、恋人同士となった乾と海堂をからかいたい、それだけらしい。
 故に、乾は反応がつまらないとかで、専らその対象は海堂に絞られている。
 基本的に不二と菊丸は海堂に目をかけ可愛がっているようだし、越前も口調の割りに実は海堂にはちょっかい出しつつ懐いているようなので。
 例えばからかう事で海堂を傷つけるのではないかという心配はしていない乾なのだが、何分乾のようには彼らをあしらえない海堂である。
 あまり度が過ぎると、後々大変なのは乾なのだ。
 三人には強く返せない海堂も、その分乾には手厳しい。
「お前達な、毎度毎度そう海堂に無闇に構うな」
「うるさいよ! 乾バイバイ!」
「………英二。まずは普通、今はおはようだろう」
「お疲れーっす」
「………越前…お前な」
「それで海堂は、連休も、この過保護男とずっと一緒だったのかな?」
 菊丸と越前に邪険にされるくらい何でもないと思えてしまう。
 不二が、柔らかな微笑と共に海堂の横にぴったりとついたのを見て、乾はがっくりと肩を落とした。
 これでもう海堂には近づけない。
 とりあえず俺に海堂を返してくれと乾は思うのだが、不二に引き続いて菊丸と越前にも周囲を固められてしまった海堂には、乾は全く近寄れなくなった。
 見当外れのからかいならばまだしも、実際連休中は殆ど一緒にいた乾と海堂である。
 普段ではちょっと出来ないような、時間とかやり方とかで、睦んでいたのもまた事実。
 それ故に、隠し切れない海堂の狼狽は普段よりも色濃くて。
 恰好の餌食にされてしまっている。
「………勘弁してくれよ」
 三人にあれこれとからかわれて海堂は。
 唇を引き結んでいるものの、きつめの目元がうっすらと赤い。
 これは後々自分が責められるなと予測して、乾は最後尾を歩くのだった。


 朝練が始まってしまえばさすがに菊丸達も海堂から離れて、漸くというか代わりにというか、今度は乾が、一緒にストレッチをすべく海堂の横に立った。
「……………先輩」
「……うん?」
 案の定、海堂は乾を睨み上げてきたけれど。
 先ほどの事は手助け無しに傍観者を決めこんでいたわけでもないし、ましてや恰好のからかいネタになるような、例えば見える所にキスマークを残すとか、そういう事をした覚えもないので。
 八つ当たりに近いものだろうと踏んで、小さく笑んで海堂を見返した乾に。
 海堂はいきなり手を伸ばしてきた。
 乾の眼鏡を強引に外す。
「か、……?…」
「………ずるいだろ。あんたばっかり」
 乾から奪い取った眼鏡を手に握り込んで海堂は毒づいた。
「眼鏡に表情隠れてて。俺ばっかりからかわれて。あんたの目だって、眼鏡外せば考えてる事まるわかりな………、って…何で赤くなるんですか」
 きつい目をして言い募っていた海堂が、呆気にとられたような顔をする。
 乾はといえば、海堂の指摘通りの状態で。
 口元を手のひらで覆って、呻くような声で言いよどんでしまう。
「やー……だってさ…」
「……………」
「スイッチが入るだろ……」
「………スイッチ?」
「お前がそうやって俺の眼鏡外したら……なんかもうパブロフの犬で」
 海堂に触れると、すぐに。
 乾は眼鏡を外す事すらも億劫になってしまう。
 眼鏡をかけたままでも無論特には支障はないものの、キスの時だけは、その距離だけ。
 まだ近づける事を知っているから、海堂が手を伸ばして乾の眼鏡を外す。
 まずキスからだから。
 まず眼鏡を外す所からだから。
 すっかり慣習化した行動に、スイッチを入れられてしまう。
「………、……」
 乾の言っている意味が判ったらしく、海堂が言葉を詰まらせ赤くなったが、この時ばかりは海堂の比ではない状態の乾が、呻いて固まって赤くなっている。
 向かい合ったまま、そんな状態からなかなか脱出出来ない彼らであったが、手塚の一喝で漸くストレッチを始める。
 しかし、ちょっと手が触れては赤くなってみたりするものだから。
 その突然のぎこちなさには、あまりに甘ったるく気恥ずかしくて、最強三人組ですらも見て見ぬふりが精一杯なのだった。
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