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How did you feel at your first kiss?
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 気付かない振りをするべきだと判っていて声をかけた。
「眠れない? 宍戸さん」
「………………」
「どうしたの?」
 理由なんか、とうに知っていて尋ねた。
 嫌な夢でも?と囁きながら腕を伸ばした。
 同じベッドにいる宍戸を、鳳は、もっと自分の方へと抱き寄せる。
「………………」
 横たわったまま肩を抱き寄せると、手にひどくか細く感じた宍戸の身体は温かかった。
 髪の匂いが甘い。
 氷帝の特別枠での全国大会出場が決まった日だから、眠れない事を指摘してしまうのは、あまり趣味の良い話ではないと鳳は判っている。
 それでも。
 本当はいつだって、こじ開けてでも、宍戸の心情を知りたい欲求が鳳の中にはあって。
 飢餓するように欲して。
 鳳は、部活が終わった後、宍戸を連れ帰った。
 無理を通して泊まっていかせた。
「………………」
 短くなっても柔らかい黒髪に頬を寄せて、黙って宍戸の背を抱きこんでいた鳳の耳に、漸く宍戸の声が届く。
 静かな、微かに苦笑めいたものの交じる声だった。
「いいぜ。そんな気使わなくて」
「使ってません」
 多分宍戸は、どういう経緯でもいいからと、全国大会への出場を望んだ今。
 それでも考えるであろうあれこれを、この肢体の中に抱えている。
 それは鳳にも判っていて、しかし、高揚にか、懸念にか、寝付けずにいる宍戸を、気遣ってこうしているわけではないのだと、苦笑いを浮かべるのは寧ろ鳳の方だった。
「そう言う所が優しいんだよ。お前は」
「優しくなんかありません……」
 ひどいですよ、と全て判るように身体を宍戸に密着させて抱き締め直した。
「…………さっき……したよな」
「しました」
「………二回、したよな?」
「二回しましたね」
 じゃあなんでこれ、ともつれるような声を吸い取るように鳳は宍戸の唇に口付けた。
 躊躇ってもがく指を、全部の自分の指でからめとって手を繋ぐ。
「俺も、もう眠れない」
「…………………」
 宍戸の腿に放熱する自分を密着させながら、鳳は宍戸を組み敷いた。
 小さく息を飲んで震えた宍戸のTシャツを毛布の中でたくし上げる。
 見えない素肌に手を這わせると宍戸の唇が物言いた気に動いた。
「……っ…ん…」
 噛み付くようなキスを首筋に繰り返すと、宍戸の指が鳳の指と組み合ったまま震えた。
 鳳の手の甲、指の付け根に。
 宍戸の指先が食い込む。
「…ァ、…っ…ッ」
「いい匂い……」
「………ッ、…ん、っ」
 剥き出しの首筋に唇を滑らせながら宍戸の脇腹を膝の側面で擦り上げると、鳳の正気も飛ぶような濡れた溜息で宍戸が息を詰めた。
「宍戸さん…」
「……………ぁ…、……ぅ…」
 手の中であやすように触れたのは一瞬で。
 痛ませないように加減をしながらも、手のひらで繰り返し力を加えて、宍戸の声を引き出して。
 熱い吐息を零す苦しげな唇に口付けを幾重にも重ね、宍戸が先をよめないうちに深くその身体を拓いていった。
「ぅ……、…っ……く、…ン…」
 それもやはり毛布の中で、宍戸は両目を見開いたまま顎を反らせて衝動に喉を震わせている。
 鳳は、ゆっくりと、深くまで進み、両手で宍戸の頭を抱え込むように唇も同じだけ深く重ねた。
「……、…ッ……、っ、ッ…」
「………日吉の事いつから名前で呼んでました? 宍戸さん」
「…ぇ……?…な…、…っァ…」
 鳳の手は宍戸の顔を固定しながら指先で耳の縁も辿っていて、体感するものに呑まれてか、言葉を聞き取りづらい為にか、宍戸が混乱したような声をもらして息を乱す。
「ね、…宍戸さん…」
「……ァ……、っア、…な…に…、…っ…ァ…」
 身体を繋げたまま、宍戸の上半身をシーツに押し付けるようにうつ伏せさせて、鳳は宍戸の耳を唇に吸い込みながら細い腰から揺さぶり上げた。
「…ャ…、…ッ……あ…っ…ァ」
「若、って……」
「……ン……ぅ…、…っ…」
 うつ伏せになったものの自らの腕で身体を支える余裕もまるでない宍戸に、鳳は覆い被さり、肩を抱き込み囁きながら繰り返し身の内を奪う。
 耳朶に直接囁かれる言葉にも宍戸は崩れていって、だから鳳も何が何でも答えを聞きたい訳ではなく、次第に問いかけは止めていった。
 代わりに背後から、宍戸の身体を突き上げては引きずりおろし、宍戸に触れていた手では濃すぎる愛撫を執拗に与えた。
「長…太郎…、…」
「………はい…」
 肩越しに振り仰いできた宍戸の濡れた眼差しに、辛いですか、と鳳は口にする。
「も、……っ………」
 宍戸はそれだけ言うのが精一杯だったようで、きつく目を閉じると、鳳に揺さぶられたまま身体を痙攣させた。
 枕に最後の声を埋める宍戸の細いうなじに、鳳は口付けた。
 震えの一層酷くなった宍戸の首の裏側に強く印した真紅の跡を、間近に見下ろし、鳳は。
 きっかけは些細な事でしかないものから生まれる、この焦燥感や、飢餓感、独占欲が。
 せめてこれ以上宍戸を傷つけることのないように。
 これがせめて見極めの見張り線であるように。
 祈るように、口付け続けた。

 鳳の感情が宍戸の項に紅く在る。
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