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How did you feel at your first kiss?
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 跡部は外で会う時の方が、余裕がある気がする。
 神尾が時々跡部の家に行くと、跡部はあまり外では見せない顔をする。
 それが素なのかもしれないけれど。
 その少し疲れたような、大人びた気配が未経験の感情で神尾を雁字搦めにする。
「神尾」
「………なに?」
 広いベッドで声がする。
 跡部を探す。
 まだ元に戻らない呼吸が邪魔をしているのか、散々に泣いた眼球が疲労しているのか、神尾は実際はこんなにも近くにいた跡部を、すぐに見つめてやれなかった。
 跡部の手が神尾の髪に乱暴に押し入ってきたから漸く、同じように身体を投げ出し、顔だけ向けてきている跡部を見つけた。
「………………」
 神尾を貪るだけ貪った跡部はテニスをした後のように汗で額を濡らしていて、怖いようなきつい目で神尾を見ていた。
「………………」
 神尾は身じろぐ事すら大儀な身体を、息を詰めて動かした。
 ベッドに腕をつき、跡部に必死で近づいていく。
 感覚は真綿のように軽いのに、実際は碌に動かない重い腰をひきずるようにして、横たわったままで跡部と向き合うような角度まで身体をずらす。
 跡部は食い入るような目でずっと神尾を見ていた。
「………………」
 八つ当たりとか、鬱憤晴らしとか、そういうものではなかったと神尾は思う。
 今日の跡部に、ちょっと容赦がなかったのは。
 嫌だと言うと一層動きがきつくなって、だからもう無理だと何度も告げたのに、神尾は跡部に神経のひとつひとつを潰されるようにして長い時間抱かれていた。
 外で待ち合わせた時は、跡部は相変わらず、どこか人をくったような笑みを唇にたたえていたのに。
 この部屋の扉を閉めてからだ。
 もう跡部は笑わなかった。
 伸びてきた腕。
 噛み付くようなキス。
 引き千切る勢いで服が剥ぎ取られ、伸し掛かってきた屈強な肢体。
「………………」
 最近やっと身体が慣れてきたように思っていたけど、全然だったんだなあと、神尾は跡部を見つめながらぼんやりと思った。
 心臓の音が、聞いたこともないような速さで乱れて。
 喉の奥の方から声が出っぱなしになる感じだとか、身体を普段動かさない方向に押さえられたり捻られたり広げられたりするのとか。
 今こうして、半ば放心した状態でなければ、とても思い返せないことばかりだ。
「神尾」
「………………」
 両手首をシーツに真上から押し付けられ、跡部が神尾を組み敷いてくる。
 正直、もうどうやったって、するのは無理だ。
 神尾はいきなりの跡部の行動に息をのんだが、されるままでいる以外に、今出来る事は何もなかった。
「………………」
 怒っているわけでも、不機嫌なだけでも、ないようだった。
 跡部の炯眼は、ひたすら鋭く、神尾だけを見つめてくる。
 その目を見ていて、なんとなく、神尾には判った気がした。
「………………」
 跡部が、神尾の片足を手で掴む。
 腿の裏側に手のひらを宛て、神尾の胸に密着させるように押さえつける。
 現れたふくらはぎに唇を宛て、跡部は神尾の目を貪婪に見据えた。
「一生縛ってやる」
「………………」
「もし俺から逃げ出したら」
「……ばかだなあ…跡部は…」
 やっぱりそうだった。
 神尾はもうどこにも力の入らない身体を投げ出したまま、跡部に、そっと言う。
「お前から逃げたいって思ってる奴相手にじゃなきゃ、それ、脅し文句になんねーじゃん……」
「………………」
「それが脅し文句になる相手じゃないじゃん。俺」
 跡部って、ばか、と力の入らない声で呟く。
 試すなら判りやすくすればいいのに。
 試されてると、もし自分が気付かなかったら、どうする気なのかと。
 神尾は内心で毒づいた。
 でも半面で、自分が絶対に気付くと判っているから、神尾はへたをすると一方的にダメージを受けているのかもしれない跡部のきつい表情をじっと見上げた。
「跡部がするなら、どんなことでもいいや。俺」
 何をされてもいいなんて笑っちゃうけど、と告げて実際笑ってみせれば。
 跡部は神尾の足から手を離した。
「………………」
 無理だと思いながらも、跡部がしたいなら自分もそうなるかも、と思って晒していた身体を跡部の腕に抱き締められる。
 互いから擦り寄るような抱擁で、位置がずれ、神尾の胸元に跡部の頭がくる。
 神尾は両腕で、ゆるく跡部の頭を抱いた。
 甘えてよと言って、素直に甘えてくるような相手ではないから。
 甘えられている事に気付かない振りで、こうして抱き締める。
「…………おい。身体」
「……気持ちいい…」
「馬鹿野郎」
「うん」
 跡部の髪が胸元にある。
 響いてくる声ごとゆるく抱き込んで、神尾は微笑んだ。


 跡部がここにいてくれるから、気持ち良い。
 一生縛ってやるなんて言葉、嬉しいだけだ。
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