How did you feel at your first kiss?
人一番体力のある海堂も、こればかりは、全く勝手が違う事のようで。
乾が見下ろす先、乱れた髪で目元を隠して浅く息を継いでいる。
口元には手の甲が宛てられ、背けた首筋が汗で濡れていた。
「海堂」
「………、…」
前髪をかきあげてやると泣き濡れた目が現れる。
乾が海堂の眦に唇を寄せても、海堂は嫌がらなかった。
まだ小さく弾んだ息を繰り返す海堂の肩を抱きこみながら、乾もそっと身を横たえた。
腕枕をするような体勢になる。
それでも海堂はおとなしかった。
「……………」
人馴れしない海堂が、自分にだけは特別扱いのようにこんな事を許してくれるのを。
乾は決して、当然のことだと思った事はなかった。
少しずつ少しずつ。
警戒心が強くて、礼儀正しいのに人との接触に不自由な海堂との距離を縮めた。
気詰りと感じさせないよう、二人きりでいる時間も徐々に覚えさせた。
「……………」
乾は海堂の前髪を手すさびに弄りながら、そのくらいまでは冷静だった自分を思い返して微苦笑する。
一緒に自主トレをするようになった。
一緒にダブルスを組むようになった。
抱き締めたくなった。
抱き締めた。
キスをしたくなった。
キスをした。
「……海堂」
顔を近づけ、声を潜め、名前を呼ぶと微かに海堂の睫毛が動く。
伏し目になった後、目線がゆっくりと上がってくる。
まだ戻ってこられないのかも知れない。
頑是無い眼差しは普段と違って頼りないくらいに柔らかだった。
「大丈夫か?」
「………………」
唇が僅かに動く。
乾は言葉を聞くより先に口付けたくなって、海堂の唇に自分のそれをゆっくりと重ねた。
また微かに海堂の唇が動く。
そうすると今度はそこに潜む清潔な舌が欲しくなって乾は深く口付けた。
「………ん………」
「………………」
「…………………っ…」
海堂に覆いかぶさるようにして。
ひとしきり唇を重ねた後、乾は海堂の唇から離れたが、その時に、熱っぽく乱れたような海堂の吐息が唇に触れて離れがたくてどうしようもなくなった。
「………………」
海堂は眠ってしまいたいように見えた。
億劫そうに瞬きを繰り返す。
乾が海堂の髪を再び弄り出すと、幼児のように、ことりと眠りに落ちた。
呆気ないくらいに。
容易く。
「………………」
少しそれも寂しい気がしたが、はっきりいって自業自得と乾は理解している。
ここまで海堂を疲れさせたのは誰か。
何をしたからか。
「……海堂…」
それでも。
眠ってしまった海堂が、まるで、乾のことなど知らない人間であるかのように見えて。
こうしてじっと見つめているのもやはり寂寥感が募って落ち着かない。
「……追いかけてくか…」
夢の中に。
「…………………」
乾は海堂を抱き込んで、目を閉じた。
すぐに見つけられると、いい。
データも、推測も、まるで役にたたない世界の話だが。
見つけられない筈もないだろうと乾は思う。
そして眠る。
乾が見下ろす先、乱れた髪で目元を隠して浅く息を継いでいる。
口元には手の甲が宛てられ、背けた首筋が汗で濡れていた。
「海堂」
「………、…」
前髪をかきあげてやると泣き濡れた目が現れる。
乾が海堂の眦に唇を寄せても、海堂は嫌がらなかった。
まだ小さく弾んだ息を繰り返す海堂の肩を抱きこみながら、乾もそっと身を横たえた。
腕枕をするような体勢になる。
それでも海堂はおとなしかった。
「……………」
人馴れしない海堂が、自分にだけは特別扱いのようにこんな事を許してくれるのを。
乾は決して、当然のことだと思った事はなかった。
少しずつ少しずつ。
警戒心が強くて、礼儀正しいのに人との接触に不自由な海堂との距離を縮めた。
気詰りと感じさせないよう、二人きりでいる時間も徐々に覚えさせた。
「……………」
乾は海堂の前髪を手すさびに弄りながら、そのくらいまでは冷静だった自分を思い返して微苦笑する。
一緒に自主トレをするようになった。
一緒にダブルスを組むようになった。
抱き締めたくなった。
抱き締めた。
キスをしたくなった。
キスをした。
「……海堂」
顔を近づけ、声を潜め、名前を呼ぶと微かに海堂の睫毛が動く。
伏し目になった後、目線がゆっくりと上がってくる。
まだ戻ってこられないのかも知れない。
頑是無い眼差しは普段と違って頼りないくらいに柔らかだった。
「大丈夫か?」
「………………」
唇が僅かに動く。
乾は言葉を聞くより先に口付けたくなって、海堂の唇に自分のそれをゆっくりと重ねた。
また微かに海堂の唇が動く。
そうすると今度はそこに潜む清潔な舌が欲しくなって乾は深く口付けた。
「………ん………」
「………………」
「…………………っ…」
海堂に覆いかぶさるようにして。
ひとしきり唇を重ねた後、乾は海堂の唇から離れたが、その時に、熱っぽく乱れたような海堂の吐息が唇に触れて離れがたくてどうしようもなくなった。
「………………」
海堂は眠ってしまいたいように見えた。
億劫そうに瞬きを繰り返す。
乾が海堂の髪を再び弄り出すと、幼児のように、ことりと眠りに落ちた。
呆気ないくらいに。
容易く。
「………………」
少しそれも寂しい気がしたが、はっきりいって自業自得と乾は理解している。
ここまで海堂を疲れさせたのは誰か。
何をしたからか。
「……海堂…」
それでも。
眠ってしまった海堂が、まるで、乾のことなど知らない人間であるかのように見えて。
こうしてじっと見つめているのもやはり寂寥感が募って落ち着かない。
「……追いかけてくか…」
夢の中に。
「…………………」
乾は海堂を抱き込んで、目を閉じた。
すぐに見つけられると、いい。
データも、推測も、まるで役にたたない世界の話だが。
見つけられない筈もないだろうと乾は思う。
そして眠る。
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