How did you feel at your first kiss?
寝返り、というほどのものではなかった。
宍戸のほんの僅かな身じろぎは、鳳の腕の中だけのこと。
「目…覚めちゃいました…?」
「………………」
やわらかな声は低く甘く、宍戸はゆっくり瞬いて、自分をそっと囲う長い腕に擦り寄る。
薄暗い部屋、ベッドの上。
まだ目が慣れない。
「………………」
寝かしつけるような優しい手のひらに背中を撫でられる。
もう少し。
もう、少し。
近づいた。
「宍戸さん」
ひらいた腕。
ひろげた胸。
抱きとめて、受け止めて、鳳の囁きと一緒に唇が頭上に寄せられる感触がした。
「まだ…早いよ…時間」
眠っていいよと抱き締められる。
睡魔を濃密にする声だ。
鳳は、では何故そうしているのか。
喋っているのか。
宍戸を抱き締めて、背中を撫でて、いるのか。
「眠っていいよ」
繰り返される囁きに、瞼はとろりと閉ざされたまま開けられない。
けれども、もっと、いろいろと、欲しくて。
声とか、抱擁とか、言葉とか、体温とか、匂いとか。
もっと近くに、もっと深いところに、もっと濃く、浸りたくて。
宍戸はこめかみを鳳の胸元に微かに摺り寄せる。
鳳の大きな手のひらが、ぐっと宍戸の背を抱きこんでくる。
唇を、掠られた。
鳳の、唇で。
一瞬、それで思考が蕩けて、沈んで、奥深く。
「宍戸さん……」
吐息が唇にふれる。
まだ近くにいる。
宍戸は目を閉じたまま、微かに唇をひらく。
零れた微かな呼気を拾ってくれた唇が、すぐに柔らかく吸い付いてきて、宍戸は、こくりと喉を鳴らした。
唇は、離れて。
また近寄って。
重なって、こすれて、離れて、たわんで。
与えられる小さなキスが散らばってしまわないように唇で受け止めて、宍戸はうっすらと目を開けていく。
間近で、鳳は唇に笑みを浮かべていた。
ごめんね?と笑って。
起こしちゃいましたねと目を伏せて。
唇を啄ばまれた。
「………長…太郎…」
「……はい……」
頬と、顎と。
鳳は宍戸にキスをする。
睫と、瞼と。
キスをする。
宍戸はまた自分から唇をひらき、だるいような腕を持ち上げて鳳の後ろ首に絡めた。
布ずれの音がした。
鳳が宍戸を組み敷くように抱き込んできたからだ。
角度のついた、深いキスで塞がれる。
首筋を固い手のひらに逆撫でされて、耳の縁を指先に微かに辿られ、宍戸は小さく息を弾ませ身体を竦ませる。
両頬を鳳の手に包まれて、至近距離から幾度となく角度を変えてキスされる。
足と足とが絡んでいる。
腰や、胸が重なって。
鈍くまどろんでいた身体に浸透してくる、互いからの熱や重みや感触。
痺れるように、身体を走っていく、その経路は血管なのか神経なのか。
感情の流れる路だ。
「……そっと見るってことも出来なくて、…ごめんね…宍戸さん」
「…………長太郎……」
鳳に見られていて。
見つめられていて。
気づかずに眠り続けていることの方がいやだと、宍戸は思って。
判って自分が目覚めたのなら、それが嬉しいのだと、キスに応えて、伝われと願って。
舌が、ふれあい、気持ちが、緩んで、潤んで。
「…………、…っ…」
喉元から手を這わされ、足を辿られ、撫でられる。
宍戸が欲しいものは次々と与えられ、愛して、眠るように、身体が吸い込んで。
欲して、温まる。
好きだと、蕩けた口調で告げていた。
寝ながら言わないでと、鳳は笑ったけれど。
同じ気持ちで彼からもまた返して貰ったから。
宍戸は眠りに、深く、口付けごと沈んで。
沈んで。
キスごと溺れていった先に眠りの続きが待っていた。
宍戸のほんの僅かな身じろぎは、鳳の腕の中だけのこと。
「目…覚めちゃいました…?」
「………………」
やわらかな声は低く甘く、宍戸はゆっくり瞬いて、自分をそっと囲う長い腕に擦り寄る。
薄暗い部屋、ベッドの上。
まだ目が慣れない。
「………………」
寝かしつけるような優しい手のひらに背中を撫でられる。
もう少し。
もう、少し。
近づいた。
「宍戸さん」
ひらいた腕。
ひろげた胸。
抱きとめて、受け止めて、鳳の囁きと一緒に唇が頭上に寄せられる感触がした。
「まだ…早いよ…時間」
眠っていいよと抱き締められる。
睡魔を濃密にする声だ。
鳳は、では何故そうしているのか。
喋っているのか。
宍戸を抱き締めて、背中を撫でて、いるのか。
「眠っていいよ」
繰り返される囁きに、瞼はとろりと閉ざされたまま開けられない。
けれども、もっと、いろいろと、欲しくて。
声とか、抱擁とか、言葉とか、体温とか、匂いとか。
もっと近くに、もっと深いところに、もっと濃く、浸りたくて。
宍戸はこめかみを鳳の胸元に微かに摺り寄せる。
鳳の大きな手のひらが、ぐっと宍戸の背を抱きこんでくる。
唇を、掠られた。
鳳の、唇で。
一瞬、それで思考が蕩けて、沈んで、奥深く。
「宍戸さん……」
吐息が唇にふれる。
まだ近くにいる。
宍戸は目を閉じたまま、微かに唇をひらく。
零れた微かな呼気を拾ってくれた唇が、すぐに柔らかく吸い付いてきて、宍戸は、こくりと喉を鳴らした。
唇は、離れて。
また近寄って。
重なって、こすれて、離れて、たわんで。
与えられる小さなキスが散らばってしまわないように唇で受け止めて、宍戸はうっすらと目を開けていく。
間近で、鳳は唇に笑みを浮かべていた。
ごめんね?と笑って。
起こしちゃいましたねと目を伏せて。
唇を啄ばまれた。
「………長…太郎…」
「……はい……」
頬と、顎と。
鳳は宍戸にキスをする。
睫と、瞼と。
キスをする。
宍戸はまた自分から唇をひらき、だるいような腕を持ち上げて鳳の後ろ首に絡めた。
布ずれの音がした。
鳳が宍戸を組み敷くように抱き込んできたからだ。
角度のついた、深いキスで塞がれる。
首筋を固い手のひらに逆撫でされて、耳の縁を指先に微かに辿られ、宍戸は小さく息を弾ませ身体を竦ませる。
両頬を鳳の手に包まれて、至近距離から幾度となく角度を変えてキスされる。
足と足とが絡んでいる。
腰や、胸が重なって。
鈍くまどろんでいた身体に浸透してくる、互いからの熱や重みや感触。
痺れるように、身体を走っていく、その経路は血管なのか神経なのか。
感情の流れる路だ。
「……そっと見るってことも出来なくて、…ごめんね…宍戸さん」
「…………長太郎……」
鳳に見られていて。
見つめられていて。
気づかずに眠り続けていることの方がいやだと、宍戸は思って。
判って自分が目覚めたのなら、それが嬉しいのだと、キスに応えて、伝われと願って。
舌が、ふれあい、気持ちが、緩んで、潤んで。
「…………、…っ…」
喉元から手を這わされ、足を辿られ、撫でられる。
宍戸が欲しいものは次々と与えられ、愛して、眠るように、身体が吸い込んで。
欲して、温まる。
好きだと、蕩けた口調で告げていた。
寝ながら言わないでと、鳳は笑ったけれど。
同じ気持ちで彼からもまた返して貰ったから。
宍戸は眠りに、深く、口付けごと沈んで。
沈んで。
キスごと溺れていった先に眠りの続きが待っていた。
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