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How did you feel at your first kiss?
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 そもそも最初から怒りに任せて食って掛かったくらいだから、神尾は別段、跡部を怖いと思ったことはない。
 跡部が年上で、他校生で、どれだけ有名な相手だったとしてもだ。
 それは今も変わらない。
 怖いとは、思わない。
 状況によるけど、と。
 内心で思ってしまうくらいの逃げ場は実のところあるのだが。
「………てめえ」
 跡部は神尾を見据えて凄んだ。
 低い声もだが、眼が、とにかくその眼が、恐ろしい程に鋭い。
 お互い全裸で、今の今まで跡部に抱かれていた訳なのだが。
 優しい余韻など欠片もない。
 神尾は固まった。
「口開けろ」
「やだ」
 口は動いた。
 拒絶すると跡部の眼が、すうっと細められて。
 光が引き絞られてきつくなる。
 凶暴だ。
 むしろ、狂暴に近い。
 神尾は息を飲んだ。
「開けろって言ってんだよ」
「…………ぅ。…ゃ、だ」
 声も出なくなってきた。
 しかし断固として神尾が拒めば、神尾を組み敷いた体勢で、跡部は手を伸ばしてきた。
 神尾の口元に。
「………………」
 右手が神尾の顎を固定して。
 親指で下唇を引き下げられる。
 冴え冴えとした眼が、神尾の下唇の内側を撫でるように見て。
 そして。
 至近距離から、跡部は神尾が痛いと思うくらいのきつい視線で睨みつけてきた。
「噛むなっつったよな。俺は」
 顔をぎりぎりまで近づけてきた跡部は、囁くような声で言った。
 声は、決して大きくない。
 しかし。
「唇、噛むな、っつったよな? ああ?」
 おっかない。
 これは、本気で、おっかない。
 神尾は再び、ぐっと息を詰める。
 眦が、音でもしそうにきりきりと釣り上がっている。
 整いすぎた顔は、怒ると、凄みで余計怜悧になる。
 逃げようもないこの体勢で、神尾は跡部のきつい顔を見続ける。
「………………」
 確かに噛むなと跡部は言って、神尾は噛んだ、訳なのだが。
 噛まずにはいられなかった神尾の心中だって、跡部は充分判っている筈なのだ。
 本当は、噛むなと繰り返した跡部の心中を神尾が判っているように。
 でも、それでもどうにもならなかったのだから。
 仕方ないだろうと神尾は思うが、跡部は思わないらしかった。
「………………」
 不機嫌に跡部は唇を寄せてきた。
 神尾の唇にではなく、耳の少し下辺りの皮膚を、噛む様に、して。
「………ッ、……」
 実際竦むほど痛かったわけではないから、充分に跡部に加減をされた甘噛みだったのだろう。
 脈が一気に速くなった。
 首筋が湯につけられたように熱くなった。
「……と…べ…」
 どうしていいのか判らない手で、神尾は跡部の肩に指先で縋る。
 首が熱い。
 皮膚一枚の話ではなく、血まで煮えたように熱い。
「そういう傷をつけるな」
「………跡部…、…?」
「そんなもんつけたくて抱いてるんじゃねえんだよ」
「………………」
 実際跡部は、多少が口調が荒くても、行動が手荒になっても、決して、絶対、神尾を傷つけたりはしない。
 それは絶対にしない。
 不思議だけれど、跡部はいつも好き勝手に神尾にふるまうけれど、その事が神尾の何かを傷つける事はない。
 いつでも。
 今も。
「人がめちゃくちゃ可愛がってやってるもんにな、勝手に傷つけんじゃねえよ、バァカ」
 辛辣に言ってよこしながら、跡部は神尾の唇を塞いでくる。
 息をきつく奪われて。
 苦しいけれど。
 痛むことはない。
 どこも。
 なにも。
「……っ…、……ぅ」
 自分で噛み切って作ってしまった傷からうっすらと血が滲み、神尾の眉根が寄ると跡部はやわらかく唇を吸いなおしてきた。
 吐息が互いの唇から零れて、擽られるような感触に息が乱れる。
「ん、………ん…」
 ゆっくりと重ね直される唇。
 舌先に甘く擽られて、ひくりと震えた神尾の身体に、跡部が一層体重をかけてのしかかってくる。
「神尾」
「……に…、…?」
 唇が、頭の中が、痺れる。
「二度やりやがったら、」
「………ぇ…?………っ、ぅ…」
 跡部は何かを言いながら、神尾の唇をキスで塞ぎ、手のひらを滑らせてくる。
 何か、脅されるような事を言われた気がした。
 よく、判らなかった、けれど。
「ん……、ぁ…っ、…」
 名前を、呼びたかったけれど。
 噛むな、ということだろうか。
 神尾はずっと、口腔に跡部の舌を与えられていて。
 何も、何も、喋れなかった。
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