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How did you feel at your first kiss?
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 何だよと宍戸が聞く前に、宍戸の右手は鳳の左手に握られていて、冷たいですねと真面目に心配するような声で呟かれた。
 何だよとは今更口に出しづらくなる。
 鳳が意図してそうしたのか、そうでないのか、宍戸は少しばかり恨めしく背の高い後輩を睨んだ。
「………………」
 でも鳳と視線が合ってしまうと、宍戸はぎこちなく視線を彷徨わせてしまう。
 繋がれた自分たちの手と手が見える。
 大きな手のひらに負けない長い指はまっすぐに伸びていて、鳳のその手に包まれた自分の手が随分頼りなく宍戸の目に映る。
 冬の冷気に悴む手を労わるように軽く撫でさする鳳の手つきはさりげないようでいてひどく甘い。
 じわりと熱が滲んできたのは鳳に触られている手ではなく、何故か顔で。
 宍戸は思わずその場から逃げだしたくなった。
「………………」
 初詣と称して、いつもよりも大分遅い時間にたやすく出歩けている大晦日。
 待ち合わせた公園から夜空の下、二人でまだ、歩き始めてもいない。
 会話らしい会話を始めるよりも先、鳳の手はいきなり宍戸の手を包んだ。
「宍戸さん」
 鳳の表情を見ないでその声を聞いた宍戸は、自分がうなだれるように地面を見据えている事に気づかされる。
 優しい甘い声は低く響いて、鳳ははっきりと宍戸を呼んだ。
「顔、あげて?」
「………………」
「ね…? 顔、見せて?」
 手を握られたまま、宍戸の左頬が鳳の右手に包まれる。
 心臓、壊れる、と宍戸は思った。
「宍戸さん」
 耳元に近づいて、鳳が懇願するように呼んでくる。
 緊張ではない。
 困惑でもない。
 でも、少しだけ久しぶりに会う鳳に、自分がどんな感情でこんなにも縛られているのか宍戸には判らなくて。
「待て、…ちょっと」
「宍戸さん」
「悪ぃ…変だって判ってるから、もうちょっとだけ待っててくれ」
 宍戸は握られていない方の手のひらで、そっと鳳の胸元を押す。
 ああもう、とやけっぱちに喚きだしたくなる。
 顔が死にそうに熱い。
 頭の中は煮えそうで、胸の中ではどくどくと血が走っている。
 何なんだと思ったのと同時に、判った、とも宍戸は思った。
 変な自分、つまりそれは。
 つまり自分は、おそろしく照れているのだという事。
「宍戸さん…」
 声にも、手にも、匂いにも。
 時間にも距離にも恋情にも。
 そう、びっくりするほど宍戸は餓えていて、鳳が足りないでいたのだ。
 だからこんな風にそれら全てが与えられてしまえば、それはもう尋常でなく照れてしまって。
 確かに二人きりで会うのは久し振りなのだけれど、これはないだろうと宍戸は呆然とした。
 こんな、急激にふくれあがるような気持ちが、今の今まで自分のどこに潜んでいたのだろうかと困惑した矢先だ。
「無理、」
「…え?」
 いきなり耳元で囁かれた鳳の呻くような一言に、反射的に宍戸が顔を上げかけ、それが適わない。
 宍戸は鳳の胸元に押し付けられていて、長い両腕にきつく抱きすくめられていた。
「長…太郎…?」
「………無理、です…、もう…ほんと無理…」
 かわいい、と苦しげに吐かれた言葉に。
 宍戸は固まった。
「…、は?」
 誰もそんなことを宍戸に言う人間はいない。
 鳳だけが口にする言葉。
 破壊力は凄まじい。
「おかしくなる…」
「……っ……、…」
 一方的に責められ、詰られているようにも聞こえる声なのに、少しも宍戸は苛立たない。
「宍戸さん。俺、お願いがあるんですけど」
「………んだよ…」
「来年は、今年より、もっと一緒にいたい」
 突拍子もないように鳳が宣言してきた。
「離れてる時間がすこしでも長くなると、久しぶりに会った時に、おかしくなるので」
 ほんとに、お願いします、とやけに真面目に、真面目すぎるほどに真面目に、鳳に乞われてしまって。
 宍戸は、自分自身でも確かにちょっとそんな気がしたので、鳳に抱きしめられたまま、こくりと黙って頷いた。
 約束をとりつけて、ほっと息をついたのは二人同時だ。
 本当に。
 来年はそれだけ気をつけよう。
 お互いがお互いに、そうかたく決意した。
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