How did you feel at your first kiss?
快晴の青空に、泳ぐ色鮮やかな魚がいる。
強い春の風に、閃き、棚引いているその様を。
彼はじっと見上げていた。
「こいのぼりって、目印なんだそうですね」
肩を並べて歩きながら鳳がそう告げると、空を見上げたまま宍戸が問い返してくる。
「何の?」
「天の神様に、この家には男の子が生まれたので、この子を守って下さいっていう目印」
「……神様ってのは、女もちゃんと守ってんだろうな」
いぶかしむ宍戸の横顔を、鳳は笑んで見つめた。
「フェミニストですね。宍戸さんは」
「アホ」
「ひどい」
別にからかったつもりなど鳳にはない。
けれど、こいのぼりから鳳へと視線を移してきた宍戸の一言はにべもない。
鳳はまた笑い、吹き付けてきた強い風を浴びて目を閉じた宍戸を見つめて繰り返した。
「優しい人ですねって意味ですよ」
「アホ」
「んー…これもだめですか」
乱れた宍戸の髪を、指先で、そっと払う。
なめらかな額に軽く指の関節を当てて、鳳は宍戸に顔を近づけて声をひそめた。
「俺も目印にならないですかね?」
「何のだよ」
「ですから天の神様に。ここに宍戸さんがいますよー、と」
だからこの人を守って下さいと。
「俺が目印。幸い今の所まだ背も伸びるみたいだし」
鳳がそう続けると。
宍戸はいかにも不服そうな目をして睨んできた。
「目印になんざならなくていい」
「だって宍戸さん、俺が守るって言ったら怒るでしょう」
俺だって神様に任せようなんて本当は思っていないですと鳳が言えば言ったで。
宍戸は憮然と返してくるのだ。
「当たり前だ。何でお前に守られなきゃなんねーんだよ」
「大事にしますって意味なのに」
ひどい、と繰り返しながらも、結局鳳はまた笑った。
こういう宍戸のことが、とても、とても好きだからだ。
「じゃあ、俺の本音を言ってしまうと……その目印っていうのもね。神様の為って訳じゃないんですよ」
「は?」
「俺は、ずうっとここにいますっていう意味ですよ」
ね?と鳳は一瞬だけ宍戸の手を握った。
ここに。
一緒に。
ずっといる。
宍戸とずっと共にいる。
それを知っていて欲しいのは、神様ではなく、宍戸だけでいい。
「………………」
不思議とあどけない目の色で鳳を見つめ返してきた宍戸が、今度は、軽口でも拒絶の言葉を口にしたりはしないので。
宍戸の方からも、一瞬、鳳の指先を握りこんできたので。
「宍戸さん」
「………とけそーなツラで笑ってんじゃねーよ…」
「宍戸さんはそんなに綺麗な顔で赤くならないで下さいよ」
「…………お前なぁ…!」
「はい」
そっぽを向いた怒声も心地良く受け止めて、鳳は微笑んだ。
恐らくは宍戸の言葉のまま。
それこそ蕩けそうな顔をしているであろう自覚は持って、宍戸の耳元に囁いた。
「大好きです」
「長太郎」
「ずっとね」
さすがにこの場でこれ以上の事はしないし出来ないけれども。
また強く吹きつけてくる春の風で、頭上のこいのぼりが空を強く泳ぐ。
至近距離の自分達は、共に縛られ、繋がれたような気になって風を受ける。
幟、昇れ。
強い春の風に、閃き、棚引いているその様を。
彼はじっと見上げていた。
「こいのぼりって、目印なんだそうですね」
肩を並べて歩きながら鳳がそう告げると、空を見上げたまま宍戸が問い返してくる。
「何の?」
「天の神様に、この家には男の子が生まれたので、この子を守って下さいっていう目印」
「……神様ってのは、女もちゃんと守ってんだろうな」
いぶかしむ宍戸の横顔を、鳳は笑んで見つめた。
「フェミニストですね。宍戸さんは」
「アホ」
「ひどい」
別にからかったつもりなど鳳にはない。
けれど、こいのぼりから鳳へと視線を移してきた宍戸の一言はにべもない。
鳳はまた笑い、吹き付けてきた強い風を浴びて目を閉じた宍戸を見つめて繰り返した。
「優しい人ですねって意味ですよ」
「アホ」
「んー…これもだめですか」
乱れた宍戸の髪を、指先で、そっと払う。
なめらかな額に軽く指の関節を当てて、鳳は宍戸に顔を近づけて声をひそめた。
「俺も目印にならないですかね?」
「何のだよ」
「ですから天の神様に。ここに宍戸さんがいますよー、と」
だからこの人を守って下さいと。
「俺が目印。幸い今の所まだ背も伸びるみたいだし」
鳳がそう続けると。
宍戸はいかにも不服そうな目をして睨んできた。
「目印になんざならなくていい」
「だって宍戸さん、俺が守るって言ったら怒るでしょう」
俺だって神様に任せようなんて本当は思っていないですと鳳が言えば言ったで。
宍戸は憮然と返してくるのだ。
「当たり前だ。何でお前に守られなきゃなんねーんだよ」
「大事にしますって意味なのに」
ひどい、と繰り返しながらも、結局鳳はまた笑った。
こういう宍戸のことが、とても、とても好きだからだ。
「じゃあ、俺の本音を言ってしまうと……その目印っていうのもね。神様の為って訳じゃないんですよ」
「は?」
「俺は、ずうっとここにいますっていう意味ですよ」
ね?と鳳は一瞬だけ宍戸の手を握った。
ここに。
一緒に。
ずっといる。
宍戸とずっと共にいる。
それを知っていて欲しいのは、神様ではなく、宍戸だけでいい。
「………………」
不思議とあどけない目の色で鳳を見つめ返してきた宍戸が、今度は、軽口でも拒絶の言葉を口にしたりはしないので。
宍戸の方からも、一瞬、鳳の指先を握りこんできたので。
「宍戸さん」
「………とけそーなツラで笑ってんじゃねーよ…」
「宍戸さんはそんなに綺麗な顔で赤くならないで下さいよ」
「…………お前なぁ…!」
「はい」
そっぽを向いた怒声も心地良く受け止めて、鳳は微笑んだ。
恐らくは宍戸の言葉のまま。
それこそ蕩けそうな顔をしているであろう自覚は持って、宍戸の耳元に囁いた。
「大好きです」
「長太郎」
「ずっとね」
さすがにこの場でこれ以上の事はしないし出来ないけれども。
また強く吹きつけてくる春の風で、頭上のこいのぼりが空を強く泳ぐ。
至近距離の自分達は、共に縛られ、繋がれたような気になって風を受ける。
幟、昇れ。
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