How did you feel at your first kiss?
一緒に眠る。
そうするといつも決まって、寝つく時には赤澤にキスをされる。
普段の観月はあまり寝つきの良い方ではないのに、甘い丁寧なやり方で優しく口付けられていると、首の辺りからじわりと温かくなって、そこからゆるく溶け込んだ熱に手足の先まで温まって、眠くなる。
恐らくそれまでの間に散々疲れるような事をされているせいもあるのだろうが、キスの為に閉じた瞼がそのまま眠りにつながって、甘やかされる舌の感触を体感しながらいつの間にか眠ってしまっているのが常だ。
その時だけのやり方のキス。
眠りにつく時以外に、そのキスはされない気がする。
ぼんやりと、観月は考えていた。
その、不思議なキスの事、それから。
「………………」
寝つきのよくない観月の、寝つきをよくする男は、目覚めのよくない観月の、目覚めもよくする。
観月は目を閉じたまま、昨夜の事を考えている。
そうしている今はもう、朝なのだと判っている。
低血圧気味の観月は、正直な所朝は苦手だった。
マネージャー業もこなす以上、部活では誰よりも早くコートにいる観月だが、毎朝だるく目覚めている。
それが、赤澤と寝た翌朝だけは、目覚めまでも甘ったるいのだ。
「………………」
赤澤は観月の髪を撫でて起こす。
観月が覚醒し出す時、いつからそうしているのか、赤澤はその大きな手のひらで観月の髪をゆっくり撫でている。
いつも。
心地良さで目が覚める。
すぐに目を開けたりは出来ないが、観月は赤澤に髪を撫でられているのを感覚で追いながら、まどろんで、目を覚ます。
声をかけられなくても、肩を揺すられなくても、とろけるように目覚める。
時間がさほどない時だけ、その上で、そう、こんな風に。
手を、握られる。
「………………」
指先を包みこむよう握り取られる。
繋がった手と手。
感じる体温。
観月は目を開けた。
「はよ」
「………………」
観月の指先に赤澤の言葉が当たる。
指に、赤澤の唇の感触がする。
ぎこちなく数回瞬いて、それから観月は、じっと赤澤を見た。
「寝起きも綺麗だなぁ…お前」
「………………」
おはよう、ともう一度言った赤澤は、同じ声の調子でそんな事を軽く言って。
それこそ朝一番によくもそんな鮮やかな笑い顔が出来るものだと観月が内心で感心するような表情で起き上がった。
横向きで寝ていた観月の身体を滑らかな所作でうつ伏せにしてくる。
赤澤にされるがままでいる観月は、喋るのがだるいので黙っているものの、もう目はきちんと覚めている。
それなのに赤澤の手のひらが観月の背筋から腰にかけて、ゆっくりとやわらかな圧でマッサージのような動きをほどこしてくるから、うっかりうっとり目を閉じてしまう。
昨晩、幾らか無理な体勢をとったりした事は事実で、それを解きほぐすかのように、赤澤は観月の薄い背から腰にかけてを擦ってくる。
起き抜けに、冗談のように気持ちがいい。
観月は小さく吐息を零した。
「………………」
赤澤は毎回普通にこんな起こし方をしてくるが、こんな事が癖になってしまったらどうしたらいいのか。
怖いような気がする。
「……も、起き…ます」
「おう」
ずっと、なんて思ってしまいそうで。
観月が小声で言って身体を起こそうとすると、赤澤はするりと手を引いて、観月の肩を抱くようにした。
手助けと気づかせないような自然さで。
「………………」
観月が上半身を起こすと、赤澤は観月の頬に軽くキスをしてベッドから下りた。
長い髪を右手でかきあげて、シャワーしてくると言って、部屋を出て行った。
「………………」
残された観月は、赤澤にキスされた頬を押さえるのも気恥ずかしく、曖昧にそこに宛がいかけていた手を、結局は自分の後ろ首に運んだ。
俯いて、小刻みに早くなる心臓の音に、じんわりと頬を熱くさせる。
赤澤がいなくなって、一人になると、こういう羞恥心が一気に膨れ上がるのだ。
寝起きの顔色の悪さは自負している観月だったが、赤澤と眠った日の翌朝の顔色は、見なくても判っていた。
あの男は、自分の身体に、良いのか悪いのか。
観月はそんな事を考えた。
それは一向に答えが出ない疑問であったが、でも、ひとつだけ判っていることがある。
例え良くても悪くても。
なくなったら、こまる。
観月はその事だけは、とてもよく、判っていた。
そうするといつも決まって、寝つく時には赤澤にキスをされる。
普段の観月はあまり寝つきの良い方ではないのに、甘い丁寧なやり方で優しく口付けられていると、首の辺りからじわりと温かくなって、そこからゆるく溶け込んだ熱に手足の先まで温まって、眠くなる。
恐らくそれまでの間に散々疲れるような事をされているせいもあるのだろうが、キスの為に閉じた瞼がそのまま眠りにつながって、甘やかされる舌の感触を体感しながらいつの間にか眠ってしまっているのが常だ。
その時だけのやり方のキス。
眠りにつく時以外に、そのキスはされない気がする。
ぼんやりと、観月は考えていた。
その、不思議なキスの事、それから。
「………………」
寝つきのよくない観月の、寝つきをよくする男は、目覚めのよくない観月の、目覚めもよくする。
観月は目を閉じたまま、昨夜の事を考えている。
そうしている今はもう、朝なのだと判っている。
低血圧気味の観月は、正直な所朝は苦手だった。
マネージャー業もこなす以上、部活では誰よりも早くコートにいる観月だが、毎朝だるく目覚めている。
それが、赤澤と寝た翌朝だけは、目覚めまでも甘ったるいのだ。
「………………」
赤澤は観月の髪を撫でて起こす。
観月が覚醒し出す時、いつからそうしているのか、赤澤はその大きな手のひらで観月の髪をゆっくり撫でている。
いつも。
心地良さで目が覚める。
すぐに目を開けたりは出来ないが、観月は赤澤に髪を撫でられているのを感覚で追いながら、まどろんで、目を覚ます。
声をかけられなくても、肩を揺すられなくても、とろけるように目覚める。
時間がさほどない時だけ、その上で、そう、こんな風に。
手を、握られる。
「………………」
指先を包みこむよう握り取られる。
繋がった手と手。
感じる体温。
観月は目を開けた。
「はよ」
「………………」
観月の指先に赤澤の言葉が当たる。
指に、赤澤の唇の感触がする。
ぎこちなく数回瞬いて、それから観月は、じっと赤澤を見た。
「寝起きも綺麗だなぁ…お前」
「………………」
おはよう、ともう一度言った赤澤は、同じ声の調子でそんな事を軽く言って。
それこそ朝一番によくもそんな鮮やかな笑い顔が出来るものだと観月が内心で感心するような表情で起き上がった。
横向きで寝ていた観月の身体を滑らかな所作でうつ伏せにしてくる。
赤澤にされるがままでいる観月は、喋るのがだるいので黙っているものの、もう目はきちんと覚めている。
それなのに赤澤の手のひらが観月の背筋から腰にかけて、ゆっくりとやわらかな圧でマッサージのような動きをほどこしてくるから、うっかりうっとり目を閉じてしまう。
昨晩、幾らか無理な体勢をとったりした事は事実で、それを解きほぐすかのように、赤澤は観月の薄い背から腰にかけてを擦ってくる。
起き抜けに、冗談のように気持ちがいい。
観月は小さく吐息を零した。
「………………」
赤澤は毎回普通にこんな起こし方をしてくるが、こんな事が癖になってしまったらどうしたらいいのか。
怖いような気がする。
「……も、起き…ます」
「おう」
ずっと、なんて思ってしまいそうで。
観月が小声で言って身体を起こそうとすると、赤澤はするりと手を引いて、観月の肩を抱くようにした。
手助けと気づかせないような自然さで。
「………………」
観月が上半身を起こすと、赤澤は観月の頬に軽くキスをしてベッドから下りた。
長い髪を右手でかきあげて、シャワーしてくると言って、部屋を出て行った。
「………………」
残された観月は、赤澤にキスされた頬を押さえるのも気恥ずかしく、曖昧にそこに宛がいかけていた手を、結局は自分の後ろ首に運んだ。
俯いて、小刻みに早くなる心臓の音に、じんわりと頬を熱くさせる。
赤澤がいなくなって、一人になると、こういう羞恥心が一気に膨れ上がるのだ。
寝起きの顔色の悪さは自負している観月だったが、赤澤と眠った日の翌朝の顔色は、見なくても判っていた。
あの男は、自分の身体に、良いのか悪いのか。
観月はそんな事を考えた。
それは一向に答えが出ない疑問であったが、でも、ひとつだけ判っていることがある。
例え良くても悪くても。
なくなったら、こまる。
観月はその事だけは、とてもよく、判っていた。
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