How did you feel at your first kiss?
同じ事を何度となく繰り返すということは、基礎というか反復というか、つまりは普通ならばだんだん慣れて、どんどん上達するのが常の筈ではないのだろうか。
それなのに、どうしてこれは、そうならないのか。
寧ろだんだんと、どんどんと、後退していっている気がした。
ぐったりとベッドにうつ伏せた体勢で、神尾は空ろに考えている。
「………………」
跡部が触れたところ。
跡部が入ってきたところ。
跡部が濡らしたところ。
体感はリアルで、今はそうされていないのに、まだ全てが引き続いているかの如く、神尾の四肢は時折意味もなく、びくびくと跳ね上がる。
「…………ふ…」
息を詰めては、ほどく。
その繰り返し。
吸う息も、吐く息も、未だ燻る残り火のように神尾の口腔を痺れさせていた。
おさまらない、苦しいくらいの熱の中での呼吸。
肩が上下する。
気道が苦しい。
こめかみから汗が流れてくる。
肌の上を撫でていくような汗の微かな触感にすら、神尾は細かく震え続けた。
なんなんだよこれという泣き言めいた言葉で頭の中をいっぱいにして、唇を噛むので精一杯だった。
「………………」
初めて跡部とした時は、経験のない甘ったるい倦怠感に疲れ果てながらも、その後じゃれるような言い争いを同じベッドにいるまま跡部と繰り交わす事が出来た筈。
二度目の後は、どうにかして跡部の腕からもがいて抜け出そうとし、すぐさま捕まえられ、また逃げ出し、また捕まって、そんな真似が出来た筈。
三度目の後は直後に少し気を失いはしたけれど、目が覚めた後は跡部の軽口にも言い返す事が出来た筈。
四度目の後は、いつまでたっても呼吸が収まらずにいたものの、涙目で跡部に不平を言う事が出来た筈。
そういう事を考えていると、すでに幾度目になっているのか判らない今の自分の状態は、いったいどういう事なのかと神尾は混乱しきっていた。
上掛けに包まって、丸くなって、シーツの上で身体を竦ませ続けている自分はいったい。
「神尾」
「………っ、…」
背後から腕が伸びてくる。
身体に巻きついてくる。
神尾は思わず泣くような声を迸らせて硬直した。
余韻だけで半泣きだった所に、実際に触れられてしまってはもうひとたまりもない。
跡部は至極無造作に抱き込んできたけれど。
神尾は肩を窄ませて動けなくなる。
頬を撫でられた。
顎を支えられた。
唇を辿られる。
跡部の手に、指に、顔を触れられながら。
神尾の身体はくるりと返された。
寝そべったままの体勢で、跡部と正面から向き合う。
「………………」
目が、眩しいものでも見ている時のように、ちかちかする。
顔に在る手、繋がる視線。
そういうものを認識する都度、神尾は肌を震わせた。
「………………」
神尾の上にいて汗を浮かべていた跡部の肌は、もうさらさらとしている。
抱き寄せられて知る。
喉奥で悦楽を転がしているよう卑猥な笑み交じりの呼気を漏らしていた唇も、今はひどく涼やかに見える。
目の前に晒されている。
「………………」
神尾が、自分ばかりが未だにあの熱を引きずっている状態である事に居たたまれなさを覚える程に、跡部は穏やかだった。
ベッドに横たわったまま向かい合い、神尾の髪をゆっくりと後頭部へと撫でつけてくる手のひら。
宥められているのか煽られているのか神尾には判らなかった。
何かを言いたい気もするが、唇が動かない。
跡部を見つめ返していると涙で目の奥が熱くなる。
吐息がまた潤んだ熱をはらんで唇から漏れていく。
「………早く帰って来いっての…」
徐に跡部が言った。
唇の端を引き上げて、跡部は笑っている。
神尾の髪を撫で、頬を撫で、眦を撫で、唇を撫で、笑っている。
甘い見つめ方をされて、跡部のその眼差しに、溶けたようになって。
手足に力が入らない。
本当に、これではまるで骨抜きという状態だった。
どこにも力が入らない。
跡部に見つめられ、撫でられていると、身体はますます動かなくなった。
「………………」
どうしよう、と思って心細く。
早く帰って来いっていうのはどういう?と思って更に心細く。
神尾が手足を縮めて小さく丸まると、跡部が乗りあがってきた。
「………ったく……しょうがねえな。俺がそっち行ってやるよ」
「…………と…べ……」
「ベソかいてんじゃねえよ」
悪態をつく跡部の唇が、しかしふわりとやわらかく神尾の唇を覆った。
やさしかった手のひらが、やらしくなって、神尾の身体を辿り出した。
「どっちが甘やかされてんだか判らねえな」
「、跡……、部…、…」
甘いだけでなく危うさも含んできつく鋭くなった跡部の視線に晒されながら、神尾は跡部の言葉の意味を考えるけれど。
笑みを刻んだ形の跡部の唇に濃密なキスをされてしまうと、もう。
他所事は全て、神尾から霧散していってしまった。
それなのに、どうしてこれは、そうならないのか。
寧ろだんだんと、どんどんと、後退していっている気がした。
ぐったりとベッドにうつ伏せた体勢で、神尾は空ろに考えている。
「………………」
跡部が触れたところ。
跡部が入ってきたところ。
跡部が濡らしたところ。
体感はリアルで、今はそうされていないのに、まだ全てが引き続いているかの如く、神尾の四肢は時折意味もなく、びくびくと跳ね上がる。
「…………ふ…」
息を詰めては、ほどく。
その繰り返し。
吸う息も、吐く息も、未だ燻る残り火のように神尾の口腔を痺れさせていた。
おさまらない、苦しいくらいの熱の中での呼吸。
肩が上下する。
気道が苦しい。
こめかみから汗が流れてくる。
肌の上を撫でていくような汗の微かな触感にすら、神尾は細かく震え続けた。
なんなんだよこれという泣き言めいた言葉で頭の中をいっぱいにして、唇を噛むので精一杯だった。
「………………」
初めて跡部とした時は、経験のない甘ったるい倦怠感に疲れ果てながらも、その後じゃれるような言い争いを同じベッドにいるまま跡部と繰り交わす事が出来た筈。
二度目の後は、どうにかして跡部の腕からもがいて抜け出そうとし、すぐさま捕まえられ、また逃げ出し、また捕まって、そんな真似が出来た筈。
三度目の後は直後に少し気を失いはしたけれど、目が覚めた後は跡部の軽口にも言い返す事が出来た筈。
四度目の後は、いつまでたっても呼吸が収まらずにいたものの、涙目で跡部に不平を言う事が出来た筈。
そういう事を考えていると、すでに幾度目になっているのか判らない今の自分の状態は、いったいどういう事なのかと神尾は混乱しきっていた。
上掛けに包まって、丸くなって、シーツの上で身体を竦ませ続けている自分はいったい。
「神尾」
「………っ、…」
背後から腕が伸びてくる。
身体に巻きついてくる。
神尾は思わず泣くような声を迸らせて硬直した。
余韻だけで半泣きだった所に、実際に触れられてしまってはもうひとたまりもない。
跡部は至極無造作に抱き込んできたけれど。
神尾は肩を窄ませて動けなくなる。
頬を撫でられた。
顎を支えられた。
唇を辿られる。
跡部の手に、指に、顔を触れられながら。
神尾の身体はくるりと返された。
寝そべったままの体勢で、跡部と正面から向き合う。
「………………」
目が、眩しいものでも見ている時のように、ちかちかする。
顔に在る手、繋がる視線。
そういうものを認識する都度、神尾は肌を震わせた。
「………………」
神尾の上にいて汗を浮かべていた跡部の肌は、もうさらさらとしている。
抱き寄せられて知る。
喉奥で悦楽を転がしているよう卑猥な笑み交じりの呼気を漏らしていた唇も、今はひどく涼やかに見える。
目の前に晒されている。
「………………」
神尾が、自分ばかりが未だにあの熱を引きずっている状態である事に居たたまれなさを覚える程に、跡部は穏やかだった。
ベッドに横たわったまま向かい合い、神尾の髪をゆっくりと後頭部へと撫でつけてくる手のひら。
宥められているのか煽られているのか神尾には判らなかった。
何かを言いたい気もするが、唇が動かない。
跡部を見つめ返していると涙で目の奥が熱くなる。
吐息がまた潤んだ熱をはらんで唇から漏れていく。
「………早く帰って来いっての…」
徐に跡部が言った。
唇の端を引き上げて、跡部は笑っている。
神尾の髪を撫で、頬を撫で、眦を撫で、唇を撫で、笑っている。
甘い見つめ方をされて、跡部のその眼差しに、溶けたようになって。
手足に力が入らない。
本当に、これではまるで骨抜きという状態だった。
どこにも力が入らない。
跡部に見つめられ、撫でられていると、身体はますます動かなくなった。
「………………」
どうしよう、と思って心細く。
早く帰って来いっていうのはどういう?と思って更に心細く。
神尾が手足を縮めて小さく丸まると、跡部が乗りあがってきた。
「………ったく……しょうがねえな。俺がそっち行ってやるよ」
「…………と…べ……」
「ベソかいてんじゃねえよ」
悪態をつく跡部の唇が、しかしふわりとやわらかく神尾の唇を覆った。
やさしかった手のひらが、やらしくなって、神尾の身体を辿り出した。
「どっちが甘やかされてんだか判らねえな」
「、跡……、部…、…」
甘いだけでなく危うさも含んできつく鋭くなった跡部の視線に晒されながら、神尾は跡部の言葉の意味を考えるけれど。
笑みを刻んだ形の跡部の唇に濃密なキスをされてしまうと、もう。
他所事は全て、神尾から霧散していってしまった。
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