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How did you feel at your first kiss?
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 唇をキスで塞ぐと、同時に目を閉じる。
 海堂の癖だ。
 乾はいつもひっそりとそれを見ていた。
 浅い、触れるだけのキスを、ゆっくりと重ねていくたび。
 その都度、海堂の睫毛は、キスが離れれば引き上がり、唇を塞げば伏せられて。
 震えて、動いて。
 そういう海堂の瞬きが乾の目にはひどく甘く映って見えた。
 寡黙で言葉数の少ない海堂の、雄弁な所作のように見えた。
 長い睫毛の先には、唇を寄せる事も可能だ。
 時折そっとキスのように睫毛を唇で掠めると、海堂は小さく息を詰める。
 ほっそりとした首筋を両手に包んで、すぐさま深く唇を塞ぎ、舌を貪る。
 乾の手のひらの中で海堂の肌が熱を持つ。
 乾が舌先で舐めている海堂の口腔も熱っぽかった。
 苦しげに逃げられそうになるとキスを深くして、それからゆっくりと柔らかに開放する。
 そんなキスを織り重ねていくと、海堂の手は乾の肩口のシャツを、ぎゅっと固く握り締めてくるようになる。 
「…、乾…先輩……」
「………ん…?」
 僅かに唇が離れた隙を狙われた海堂の呼びかけに、乾は目を伏せて問い返す。
 掠れた声は、普段の海堂の声音と違い、か細く不安気だ。
 乾がキスをほどいて間近に見下ろせば、海堂の睫毛がまた引き上がる。
 目尻が涙めいた気配をたたえていて、そこに唇を寄せてから、もう一度。
 どうした?と言葉で促すと、海堂はもどかしそうに眉根を寄せた。
 言葉が見つけられない時の表情だ。
「海堂」
「………………」
 顰められた眉間を唇を掠めて、乾はそれを海堂に教える。
 顎を指先数本で支え、唇に小さく音をたててキスをすると、唸るような呻くような声を微かに上げて、海堂は乾の胸元に顔を埋めてきた。
 乾は自分が身に纏う衣服から空気が抜ける音を聞きながら、海堂の形良い後頭部を胸元に抱え込む。
「……何怒ってるのかな。海堂は」
「あんたが笑ってるからだろ…っ」
 いつもいつもと詰る海堂の声は、乾の胸元で、直接肌に吸い込まれていくようだった。
 顔を隠してやっと海堂は言う気になったらしい。
 乾が吐息程度に問い返すのを敏感に察して、珍しく饒舌に言葉を紡ぐ。
 普段よりかは、というレベルのものではあるけれど。
「……それ、あんたの癖かもしれないですけど…! そうやって余裕かまして笑われると腹立つんだよ…!」
 怒鳴り声はやはり乾の胸元に直接響く。
 その荒い口調ほど、海堂は怒っているわけではないようだった。
 乾が黙って見下ろすと、綺麗な黒髪の毛先がかかるうなじが赤かった。
 そこにそっと指先を伸ばした乾は、びくりと震えた海堂の肌の上を指で撫でるようにしながら、余裕ねえ?と忍び笑った。
「教えてやろうな。海堂」
「………………」
「お前が見ている俺のその顔は、余裕がある笑い顔なんかじゃないぞ」
「………………」
「にやけ顔とか、しまりのない顔とか言うならまだしも」
 ちゃんと見えてるのか?と呆れた思いで笑えば。
 腹立ち紛れの所作で、握った拳を肩口にぶつけられる。
 海堂は時々こんな風に無意識にひどく幼い態度を見せてきて、それが乾には随分と気に入りだ。
「だいたいそういうことなら俺からも言わせて貰うけど」
「……、…なん……すか」
 海堂の襟足の髪を指ですくいとりながら、それこそあからさまだと自覚する笑みと共に乾は囁いた。
「キスされてる時の海堂は、色気がありすぎだと俺は思うが」
 お前の癖かもしれないけど?と。
 先程海堂に言われた言葉で、乾は返して。
 海堂が暴れ出したり逃げ出したりする前に、両腕でその身体を抱き竦める。
 しっかりと。
「……ッ…、…んな、もんある、か…!」
「そうか…海堂は見られないな」
 可哀想に。
 乾は真剣に、そう告げて、可哀想な可愛い相手を抱き締めている。
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