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How did you feel at your first kiss?
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 多分いつも口に入れているガムのせいだ。
 宍戸の唇はいつも清潔で、口腔はひんやりとしている。
 ミントの味のほんのり滲む舌は、鳳が貪る毎に熱を帯びて柔らかくなる。
 実際冷たいわけではないけれど、冴え冴えと冷えた印象の宍戸の口腔は静謐だ。
「…おい、長太郎」
「はい?」
 息を継ぐために少しだけ離れた唇と唇の合間。
 宍戸の呼びかけに鳳が丁寧に問い返すと、間近にある宍戸の怜悧な眼差しがきつくなる。
 そしていきなり言われたのは。
「もうしねえ」
「え、何で」
「何でじゃねえよ」
 止めだ止め、と胸元を宍戸の手に押しやられて、鳳は慌てながらも宍戸の背に回した腕は外さなかった。
「何か嫌なこと俺しましたか?」
 今していた事といえばキスで、自分が何か宍戸の嫌なやり方でもしたのかと鳳は危惧して宍戸を覗きこむ。
 目と目が合うと宍戸は憮然とした。
 額と額も合うと余計に酷くなった。
「宍戸さん?」
 それでも臆さず問い続ければ、不機嫌極まりない風体で宍戸は言った。
「……何か違うこと考えながらすんな」
「違う事…?」
 上の空で腹立つんだよと言った宍戸の頬に鳳は口付けた。
「…、…てめ……人の話聞いてんのかよ…」
「考え事はしてましたけど…違う事じゃないです」
「あ?」
「宍戸さんの舌はミントの味がするなあとか、口の中ひんやりしてて気持ちいいなあとか、そういうのです。考え事」
「……っ……お前…、…言うか、そういうの」
「だって」
 鳳は笑いながら宍戸を抱き締めた。
「宍戸さんがおかしなこと言うからですよ」
「悪かったなおかしくて…!」
 怒鳴り声も好きだった。
 我ながらどれだけ宍戸を好きなんだと鳳は笑ってしまう。
「宍戸さんがおかしいんじゃなくて、さっきの言葉がおかしいんですよ」
「あー、もううるせえ…っ」
「もうしないなんて言わないで。…ね?」
 傷つくからもう言わないでと、甘えたっぷりに繰り返し懇願すれば宍戸はひとしきり鳳の腕の中で暴れながらも、最後にはきちんと言葉と態度で継げてくれるのだ。
「………んな程度のことで傷つくな。アホ」
 宍戸の両手が伸びてきて。
 鳳の顔を包み、首を反らして傾けた顔が近づけられ、宍戸からのキスがくる。
「………………」
 唇を塞がれ、僅かに覗いた舌先で唇の表面を撫でられて、受身でいるキスの甘ったるさに浸ったまま、鳳は宍戸の薄い背中をゆっくりと手のひらで辿った。
 あたたかなからだ。
「……今度は何だ」
 再びの考え事を再び咎められたようで、宍戸に凄まれた鳳は。
 キスの主導権を奪い取ってひとしきり宍戸の唇を貪ってから囁いた。
「大好きで、大事で、そんな人を抱き締められて、嬉しいです」
「………可愛いじゃねえかよ。くそ」
「格好良い…じゃないんですか?」
 笑って鳳が言えば、悪態をつくようだった宍戸はますます憮然となって怒鳴ってくるのだ。
「どっからどう見ても可愛いだろお前は」
「それは俺の台詞だと思うんですけどねえ…」
「逆らってんじゃねえよ二年」
「現実見ましょうよ宍戸先輩」
 普段使わないような呼びかけで、結局じゃれあいの延長で、ひとしきりキスを交わしあう。
 可愛いのは、どっち。
 主張は平行だけれど、愛情は交差していて、そんな二人の関係性は。
 状態も変化も傾向も、相似の、直列。
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