How did you feel at your first kiss?
夜中にふっと目がさめて、寝返りをうつ。
即座に背後から腕が伸びてきて、宍戸の胸元に大きな掌があてがわれる。
「そっち向かないで」
寂しい、と宍戸の耳元で聞こえた鳳の声は眠気にとけている。
言ってることややっていることとのミスマッチさに、こみあげてきたのは笑いだ。
宍戸の眠気はゆるゆると解かれてしまう。
首の側面に唇を寄せるようにして顔を埋めてきている鳳を振り返る様に。
宍戸は再度寝返りをうった。
「おまえ…」
「……宍戸さん」
からかいの言葉を紡ごうとしていた宍戸は、自分の胸元に甘えるように顔を埋め直す鳳の仕草に結局何も言えなくなってしまった。
長身の鳳だが、ベッドに横たわってしまえば、宍戸の胸元に顔を伏せる事もたやすいようだった。
無意識に鳳の髪に手をやった宍戸は、やはり無意識にその頭を抱き込むように指先を髪に沈ませる。
寝ぼけているにしても過敏すぎるだろう。
夜中の宍戸の寝返りすら嫌がる年下の男をゆるく抱きしめて、自分の腕の中で和らいでいるその気配に、宍戸は眠気を払拭していく笑いを奥歯で噛み殺す。
「我慢、しなくていいのに」
「……起きてんのか、長太郎」
宍戸がそっと腕を緩めると、顔を上げた鳳が寝具の上で身じろいで伸びあがり、宍戸の唇を浅く塞いだ。
お互いの体温であたたまったような身体を摺り寄せて、唇を合わせて。
小さく零れた吐息の甘さにお互い同時に瞬きする。
睫毛も触れ合いそうな距離だ。
落ち着いて、でも胸の中で音は鳴る。
「背中、向けられんの、やなのかよ…?」
「……いやですよ。寂しいから」
掠れた、真摯な声。
「わかった」
おぼえておく、と宍戸はつぶやいた。
声にもならない声だったのに、鳳が甘えるように宍戸の頬に甘くて軽いキスをしたから、きちんとそれは届いたのだろう。
「…眠い?」
「……んー……」
じゃまだったら、と鳳が言いかけた言葉を、可能性がない提案だから宍戸は聞かなかった。
鳳は何かを言って、反応のない宍戸に、邪魔でないと返答されたと理解したらしい。
鳳の両腕に、先ほどまでより、もっとしっかりと抱きしめられた。
顔を押し付けることになった鳳の胸元からは、優しい体温の香りがした。
宍戸よりも広い胸元と、長い腕と。
不思議と対抗心のようなものはまるで湧いてこない。
こうして囲われる事は心地よかった。
乞われている事が判るからかもしれない。
頭上に寄せられている唇の感触。
時折宍戸の身体を寝間着越しに撫でていく手のひら。
うとうとと、眠気を再び誘うものでもあり、何かをしっかり目覚めさせてしまうようでもある。
「苦しくない…?」
鳳が、返事がなくても構わないというようなかすかな声で聞くので、宍戸は黙ったまま自分からも鳳にすり寄った。
そこは心臓の真上だろうか。
やわらかい布地に耳を寄せるような体制になると、はっきりとした鼓動が聞き取れた。
どこか耐えかねたような所作で鳳の手が強く宍戸を抱き込んでくる。
咄嗟の抱擁はしばらくはそのままで。
宍戸は身体の力を抜いたまま鳳の腕の中でじっとしていた。
しばらくののち、ふわりと抱擁の腕はほどけて。
どこか意を決したような微かな嘆息と共に鳳が背を向けたので、宍戸は今度は滲んだような笑いを隠さなかった。
自分に向けられた背中に腕を伸ばし、身体を寄せて、告げてやる。
「そっち向くんじゃねえよ…」
寂しい。
これまで、言ったことのない、言葉を言って。
宍戸は鳳の背にしがみつく。
「……あの…ねえ…!」
鳳は、幾分はっきりとした声をあげてすぐに宍戸の方を振り返ってきた。
いつもより少しだけ雑な言い方で、鳳が性急に宍戸の唇をふさいでくる。
宍戸は笑った形の唇を、自ら薄くひらいた。
「…我慢、しなくていいのによ」
先程言われた言葉をそのままキスの合間に返した。
宍戸が噛み殺したのは笑い。
鳳が噛み殺そうとしていたものは。
「つーか、するな」
下した命令。
「……宍戸さんは…本当にもう」
年下の男は、全面降伏と顔に書いた上で、甘く宍戸を詰って。
そして宍戸を抱き締める。
宍戸は真夜中、眠ることよりそのことに満足して、あたたかな背中を両手で抱き締め返したのだった。
即座に背後から腕が伸びてきて、宍戸の胸元に大きな掌があてがわれる。
「そっち向かないで」
寂しい、と宍戸の耳元で聞こえた鳳の声は眠気にとけている。
言ってることややっていることとのミスマッチさに、こみあげてきたのは笑いだ。
宍戸の眠気はゆるゆると解かれてしまう。
首の側面に唇を寄せるようにして顔を埋めてきている鳳を振り返る様に。
宍戸は再度寝返りをうった。
「おまえ…」
「……宍戸さん」
からかいの言葉を紡ごうとしていた宍戸は、自分の胸元に甘えるように顔を埋め直す鳳の仕草に結局何も言えなくなってしまった。
長身の鳳だが、ベッドに横たわってしまえば、宍戸の胸元に顔を伏せる事もたやすいようだった。
無意識に鳳の髪に手をやった宍戸は、やはり無意識にその頭を抱き込むように指先を髪に沈ませる。
寝ぼけているにしても過敏すぎるだろう。
夜中の宍戸の寝返りすら嫌がる年下の男をゆるく抱きしめて、自分の腕の中で和らいでいるその気配に、宍戸は眠気を払拭していく笑いを奥歯で噛み殺す。
「我慢、しなくていいのに」
「……起きてんのか、長太郎」
宍戸がそっと腕を緩めると、顔を上げた鳳が寝具の上で身じろいで伸びあがり、宍戸の唇を浅く塞いだ。
お互いの体温であたたまったような身体を摺り寄せて、唇を合わせて。
小さく零れた吐息の甘さにお互い同時に瞬きする。
睫毛も触れ合いそうな距離だ。
落ち着いて、でも胸の中で音は鳴る。
「背中、向けられんの、やなのかよ…?」
「……いやですよ。寂しいから」
掠れた、真摯な声。
「わかった」
おぼえておく、と宍戸はつぶやいた。
声にもならない声だったのに、鳳が甘えるように宍戸の頬に甘くて軽いキスをしたから、きちんとそれは届いたのだろう。
「…眠い?」
「……んー……」
じゃまだったら、と鳳が言いかけた言葉を、可能性がない提案だから宍戸は聞かなかった。
鳳は何かを言って、反応のない宍戸に、邪魔でないと返答されたと理解したらしい。
鳳の両腕に、先ほどまでより、もっとしっかりと抱きしめられた。
顔を押し付けることになった鳳の胸元からは、優しい体温の香りがした。
宍戸よりも広い胸元と、長い腕と。
不思議と対抗心のようなものはまるで湧いてこない。
こうして囲われる事は心地よかった。
乞われている事が判るからかもしれない。
頭上に寄せられている唇の感触。
時折宍戸の身体を寝間着越しに撫でていく手のひら。
うとうとと、眠気を再び誘うものでもあり、何かをしっかり目覚めさせてしまうようでもある。
「苦しくない…?」
鳳が、返事がなくても構わないというようなかすかな声で聞くので、宍戸は黙ったまま自分からも鳳にすり寄った。
そこは心臓の真上だろうか。
やわらかい布地に耳を寄せるような体制になると、はっきりとした鼓動が聞き取れた。
どこか耐えかねたような所作で鳳の手が強く宍戸を抱き込んでくる。
咄嗟の抱擁はしばらくはそのままで。
宍戸は身体の力を抜いたまま鳳の腕の中でじっとしていた。
しばらくののち、ふわりと抱擁の腕はほどけて。
どこか意を決したような微かな嘆息と共に鳳が背を向けたので、宍戸は今度は滲んだような笑いを隠さなかった。
自分に向けられた背中に腕を伸ばし、身体を寄せて、告げてやる。
「そっち向くんじゃねえよ…」
寂しい。
これまで、言ったことのない、言葉を言って。
宍戸は鳳の背にしがみつく。
「……あの…ねえ…!」
鳳は、幾分はっきりとした声をあげてすぐに宍戸の方を振り返ってきた。
いつもより少しだけ雑な言い方で、鳳が性急に宍戸の唇をふさいでくる。
宍戸は笑った形の唇を、自ら薄くひらいた。
「…我慢、しなくていいのによ」
先程言われた言葉をそのままキスの合間に返した。
宍戸が噛み殺したのは笑い。
鳳が噛み殺そうとしていたものは。
「つーか、するな」
下した命令。
「……宍戸さんは…本当にもう」
年下の男は、全面降伏と顔に書いた上で、甘く宍戸を詰って。
そして宍戸を抱き締める。
宍戸は真夜中、眠ることよりそのことに満足して、あたたかな背中を両手で抱き締め返したのだった。
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