How did you feel at your first kiss?
鳳の家の玄関で、靴を履き終わり帰ろうとしている宍戸と見送りに出ていた鳳は、顔を見合わせるなり、ふと口を噤んでしまった。
それまではあれこれと他愛無い話をしていたのだけれど。
同時に黙ってしまって、そのまま数秒。
鳳の手が伸びてくる。
宍戸の首の後ろに、手がかけられる。
大きな手のひらと、長い指。
そのまま引き寄せられるのが判って、それが嫌だった訳でも怖かった訳でもないけれど、宍戸は唇を避けた。
「………………」
避けた、行先は眦に。
鳳の目元に宍戸から口付けて、少し爪先立って、目を閉じる。
すぐに背中を抱かれた。
背筋が反る。
「宍戸さん」
「………………」
少し顔を動かして、宍戸の耳の下、顎に繋がる骨の上に鳳はキスをした。
同時に首の裏側の皮膚を撫でられる。
存在を知らなかった残り火を焚きつけられたようで、宍戸は息を詰めた。
小さく慄いて、うつむいて、また顔を上げて。
目と目が合う。
こうなったら、もう駄目だ。
結局唇と唇で近づいていく。
キスをする。
数回、繰り返し、深くなる寸前、僅かな隙間で宍戸は呟いた。
「……帰れなくなるって…」
もう勘弁、と。
珍しいと自覚する泣き言を口にすれば、鳳もまた珍しく、少し強引に宍戸の唇を塞いできた。
「………っ……ぅ…」
「………………」
「ン…、……、…」
舌と舌が密着して濃厚に繋がってしまう。
腰を抱かれて、唇がやわらかくすきまなくかみあって、中から濡れてくる感触に膝が震え出した。
「……長、太郎…、…っ」
息を継ぐために離れた合間で名前を呼ぶと、鳳は少し辛そうな目をして動きを押しとどめ、宍戸を見つめてきた。
「………、っ」
舌で、濡れた宍戸の唇の表面を舐め上げてくる。
欲望の明け透けな鳳に、宍戸の脚は一層震えて止まらない。
「やっぱり送っていきます」
呟く声に、ぞくりとしながら。
宍戸は鳳の胸元に顔を伏せる。
きりの無い恋情に、流されてしまった方がいっそ楽なのかもしれない。
でもそう出来る事の方が少ないから苦しい。
「……外でこんな真似出来ねえだろ」
鳳の送られたとして、別れ際には、また。
今と同じ気持ちになるのだろう。
「宍戸さん」
強く抱き締められて、ほっとする。
同時に、もっとと、欲しもする。
「たしなめる方も、いい加減しんどいんだからな」
年上だからと思って言うのだけれど。
望んでいるのは、自分だって同じ程。
恨み言を鳳の胸元になすりつけてやれば、ぽつんと鳳が低く小声で囁いてくる。
「ちょっとは、そそのかされてくれたらいいのにって思うんですけど」
「人の努力をぶち壊そうとすんな、アホ」
「なるべく普段は精一杯に聞き分け良くしてる反動です」
ああもうかわいい。
宍戸は心中でがなるように思う。
強い腕で優しく抱きこんできて、言葉遣いを崩す事も無く、滑らかに甘い声で、ぐずる年下の男の我儘なら。
いっそ何でも聞いてやりたいと思うけれど。
「長太郎」
ほら、と広い背中を軽く手のひらで叩くと、鳳は宍戸の肩口から視線を引き上げてきた。
その唇に、頬に、目元に。
浅く口付けてやって、宍戸は囁いた。
「明日な」
「………………」
鳳が宍戸の右手を取る。
手の甲を親指の腹でゆるく撫でさすってから、指先を支えて爪の上に口付けてくる。
綺麗な仕草で、爪先に灯る熱。
感じ取って、感じ入って、浮かされる。
「………………」
宍戸の指先に唇を寄せながら、鳳は眼差しを上目に引き上げて、唇を動かした。
声にはしない言葉に指で触れる。
好きだ、と動いた唇と。
煮詰まった熱を湛えた瞳。
だからもう、と泣き言を言いたい気分で宍戸は背中を向けるのだ。
甘ったるい余韻が色濃い指先を握りこんで。
明日までどうしたらいいのか、本気で思い悩むような濃い想いに雁字搦めにされたまま。
「………………」
鳳の家の扉を閉めて、ドアに一時背中を当てて寄りかかる。
冬の夕刻の外気に吐息をこぼすと、白く煙るようにそこだけ色が変わった。
意識も何もなく、宍戸は右手の指先を唇に押し当てて目を閉じた。
もう本当に、どこかでどうにかしないといけない、そう思うほどに高まっていくばかりの感情。
でも、どうにかできるのならば、とうにしている筈だと、判ってもいるから身動きもとれない。
ずっと、ずっと、二人して。
自分達は甘苦しい坩堝の中に在るのだ。
ずっと、ずっと、二人して。
それまではあれこれと他愛無い話をしていたのだけれど。
同時に黙ってしまって、そのまま数秒。
鳳の手が伸びてくる。
宍戸の首の後ろに、手がかけられる。
大きな手のひらと、長い指。
そのまま引き寄せられるのが判って、それが嫌だった訳でも怖かった訳でもないけれど、宍戸は唇を避けた。
「………………」
避けた、行先は眦に。
鳳の目元に宍戸から口付けて、少し爪先立って、目を閉じる。
すぐに背中を抱かれた。
背筋が反る。
「宍戸さん」
「………………」
少し顔を動かして、宍戸の耳の下、顎に繋がる骨の上に鳳はキスをした。
同時に首の裏側の皮膚を撫でられる。
存在を知らなかった残り火を焚きつけられたようで、宍戸は息を詰めた。
小さく慄いて、うつむいて、また顔を上げて。
目と目が合う。
こうなったら、もう駄目だ。
結局唇と唇で近づいていく。
キスをする。
数回、繰り返し、深くなる寸前、僅かな隙間で宍戸は呟いた。
「……帰れなくなるって…」
もう勘弁、と。
珍しいと自覚する泣き言を口にすれば、鳳もまた珍しく、少し強引に宍戸の唇を塞いできた。
「………っ……ぅ…」
「………………」
「ン…、……、…」
舌と舌が密着して濃厚に繋がってしまう。
腰を抱かれて、唇がやわらかくすきまなくかみあって、中から濡れてくる感触に膝が震え出した。
「……長、太郎…、…っ」
息を継ぐために離れた合間で名前を呼ぶと、鳳は少し辛そうな目をして動きを押しとどめ、宍戸を見つめてきた。
「………、っ」
舌で、濡れた宍戸の唇の表面を舐め上げてくる。
欲望の明け透けな鳳に、宍戸の脚は一層震えて止まらない。
「やっぱり送っていきます」
呟く声に、ぞくりとしながら。
宍戸は鳳の胸元に顔を伏せる。
きりの無い恋情に、流されてしまった方がいっそ楽なのかもしれない。
でもそう出来る事の方が少ないから苦しい。
「……外でこんな真似出来ねえだろ」
鳳の送られたとして、別れ際には、また。
今と同じ気持ちになるのだろう。
「宍戸さん」
強く抱き締められて、ほっとする。
同時に、もっとと、欲しもする。
「たしなめる方も、いい加減しんどいんだからな」
年上だからと思って言うのだけれど。
望んでいるのは、自分だって同じ程。
恨み言を鳳の胸元になすりつけてやれば、ぽつんと鳳が低く小声で囁いてくる。
「ちょっとは、そそのかされてくれたらいいのにって思うんですけど」
「人の努力をぶち壊そうとすんな、アホ」
「なるべく普段は精一杯に聞き分け良くしてる反動です」
ああもうかわいい。
宍戸は心中でがなるように思う。
強い腕で優しく抱きこんできて、言葉遣いを崩す事も無く、滑らかに甘い声で、ぐずる年下の男の我儘なら。
いっそ何でも聞いてやりたいと思うけれど。
「長太郎」
ほら、と広い背中を軽く手のひらで叩くと、鳳は宍戸の肩口から視線を引き上げてきた。
その唇に、頬に、目元に。
浅く口付けてやって、宍戸は囁いた。
「明日な」
「………………」
鳳が宍戸の右手を取る。
手の甲を親指の腹でゆるく撫でさすってから、指先を支えて爪の上に口付けてくる。
綺麗な仕草で、爪先に灯る熱。
感じ取って、感じ入って、浮かされる。
「………………」
宍戸の指先に唇を寄せながら、鳳は眼差しを上目に引き上げて、唇を動かした。
声にはしない言葉に指で触れる。
好きだ、と動いた唇と。
煮詰まった熱を湛えた瞳。
だからもう、と泣き言を言いたい気分で宍戸は背中を向けるのだ。
甘ったるい余韻が色濃い指先を握りこんで。
明日までどうしたらいいのか、本気で思い悩むような濃い想いに雁字搦めにされたまま。
「………………」
鳳の家の扉を閉めて、ドアに一時背中を当てて寄りかかる。
冬の夕刻の外気に吐息をこぼすと、白く煙るようにそこだけ色が変わった。
意識も何もなく、宍戸は右手の指先を唇に押し当てて目を閉じた。
もう本当に、どこかでどうにかしないといけない、そう思うほどに高まっていくばかりの感情。
でも、どうにかできるのならば、とうにしている筈だと、判ってもいるから身動きもとれない。
ずっと、ずっと、二人して。
自分達は甘苦しい坩堝の中に在るのだ。
ずっと、ずっと、二人して。
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