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How did you feel at your first kiss?
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 パソコンに向かっている跡部の背中に、神尾がいきなり覆い被さってきた。
 たいした衝撃ではない。
 こいつは軽い、こいつは小さい、そんなことを跡部がはっきりと体感するだけだ。
「何だよ」
 跡部はモニターから目線を外さずに問う。
 きゅっと神尾の腕に力が入る。
 実際の所首元を絞められているに等しい体勢だが、それにしてはやけに接触が擽ったいので跡部は溜息をついた。
「…十秒」
 だけ、と語尾が小さくなる声に跡部は呆れた。
「ふざけたこと言ってんじゃねえ」
「………ぅ……、じゃ…五秒…」
「減らしてどうすんだ馬鹿」
「…え?」
「珍しく懐いてきやがったんなら、これが終わるまでそうしてろ」
 指先でひっきりなしにキーボードを叩きながら跡部が言うと、神尾は情けない声を出して跡部の肩口に顔を伏せた。
「ああ? どういうリアクションだ。それ」
「だめだ。恥ずかしすぎる…」
 ずっとは無理だよぅ、だの。
 十秒が限界だよぅ、だの。
 腹の立つ泣き言を耳元で聞きながらも跡部が怒らなかったのは熱の上がった軽くて小さな身体が、ちゃんと自分の首に腕を絡めて抱きついたままでいるからだ。
「神尾」
「…なんだよー」
「カイロの役目まで担うとは、てめえにしちゃ気が利いてるじゃねえの」
 少し熱すぎるがなと跡部が付け足せば、神尾はやけっぱちに跡部の首筋に額を押し当ててきた。
「ほっとけよぅ…!」
 熱い。
 移される。
 跡部は溜息をついた。
「おい、そこのモニターの横の丸い缶開けろ」
「…へ?」
「それだ」
 赤い、丸い、アルミ缶。
 ハンドクリームやメンタム缶の容器を大きくしたようなサイズのそれに、神尾は跡部の背中に覆い被さったまま手を伸ばした。
 それを眼差しで確認して、跡部はあと少しで終わる文書を片付けるべくピッチをあげる。
「…あ、チョコレートだ」
「カカオ含有率五十八%」
 眠気覚ましとして外国のドライブインでは必ずそれを売ってる。
 跡部が言うと、神尾は円形を均等に八等分したそのチョコレート、ショカコーラを一つ指先に摘まんだ。
「…で、…これ…どうしたら…?」
「どうしたらいいと思う」
 今日はバレンタインデーだ。
 バレンタインデーにチョコレートときたら。
「ええと……」
 いつも跡部が食べているチョコレート。
 特別に用意したものではないチョコレート。
 神尾は少し悩んで。
「跡部に…俺が食わせりゃいいの?」
「まあ、二番目に良い答えだな」
「えー、二番かよ。じゃあ一番良い答えって何?」
 跡部の背後から、神尾は跡部にショカコーラを食べさせながら聞いてくる。
 跡部は舌の上でほろ苦いそれを溶かしながら言った。
「残りはてめえが食え」
「それが一番良い答え?」
 いかにも不思議そうな神尾に、跡部は短く笑った。
「眠気覚ましチョコレートっつったろうが」
 事前に食っとけ。
 寝かさねえから。
 モニターを見据えたまま跡部が告げると、たちまちくたくたと力の抜けた神尾の唇からは先程の比ではない泣き言が止め処もなく零れまくった。
 それでも、跡部の作業が終わるまで神尾は跡部の背中に貼りついていたので。
 跡部の機嫌はすこぶる良かった。
 さっさと食って待っていろと思う。
 寝ない夜の為の、ショカコーラ。
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