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How did you feel at your first kiss?
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 暴君はいつでも命令口調で横暴で身勝手だ。
 だから暴君なのかと、当たり前といえば当たり前の事を神尾が朦朧としている頭で考えていると、冴え冴えと張りつめた声がもう一度同じ言葉を繰り返してきた。
「おい。口開けて舌出せ」
 今の今まで散々に貪られたキスで、呼吸も途切れ途切れで息苦しい。
 漸く開放されて肩で息をしている神尾は、跡部の言う言葉が二度目でもよく判らなかった。
 ぼんやりと見返すと小さく舌打ちされた。
「ン…っ………」
 いきなり口の中に跡部の指が差し込まれる。
 人差し指が神尾の舌の下にもぐりこみ、上から親指で押さえて口腔から引き出されていく。
 舌。
「……、…っ……な……」
 強く引かれてはいない。
 でも咄嗟に首を竦ませて怯えた神尾を跡部は至近距離から眺め下ろしてくる。
 跡部の部屋に入って、すぐに部屋の壁に押し付けられてキスされた。
 壁と跡部の狭間にいるまま、神尾は訳が判らず身体を竦ませる。。
 長いことキスで塞がれていた口腔は潤んでいて、跡部に舌を摘ままれて引き出された反動で飲みきれないものが零れてしまう。
 唇の端から喉を伝う感触に神尾が震えると、いきなり噛み付くように唇が塞がれた。
 また、深くて濃いキスだ。
 長くて執拗で身体中バラバラになりそうなキスをされる。
「……ん、…、ゃ…、」
 外気に触れてこわばるようにかわいた神尾の舌は跡部に執拗に絡めとられた。
 濡れた音をたてて舌が交わる。
 唇が、粘膜が、こすれる。
 膝が、かくんと砕けた。
 座り込んでしまった神尾を今度は床に押し付けるようにして跡部も膝をつく。
 唇がずれて、また零れて、濡れて。
 汚れた口元を神尾が手の甲で拭おうとすると、手首をきつく握り込まれて顔の横で拘束される。
 挙句にまた跡部の指は神尾の口腔に入ってきて、舌を弄る。
「なん、っ…なんだよっ……」
 半泣きで神尾が声を上げると、細めた目でまじまじと神尾の舌を見ていた跡部が皮肉気に唇の端を引き上げた。
「どういう舌してんだお前」
「、ど……ゆ…って……」
 何を言われているのか判らない。
 でも、跡部の低い声だとか鋭い視線だとかに反応するかのように、神尾の声は弱く消え入っていく。
 とんでもないことを言われてしまうのではないだろうかと神尾がうっすら思った通りに。
 跡部は神尾の舌をつかまえてぬめった指先で、神尾の唇も挟み、触れる側から唇を寄せてきた。
 舌で舐められる。
 すでにもうキスではない。
 口腔の粘膜を、体内を抉るようにして弄られているのと同じだ。
「ヤ……だ、…、…も、いじ…んな……っ…、」
 神尾は涙目で首を打ち振るのに、跡部はまるで夢中になっているかのように神尾の唇を塞ぐ。
 舌を食み、とろとろとひっきりなしに神尾の口の中を濡らしながら唇を犯す。
 しまいには啜り泣くような声を神尾が上げ出しても跡部はそれを止めなかった。
 神尾はしゃくりあげながら跡部の背中のシャツを掴む。
 もう、口が、キスをするだけの器官だとしか思えなくなって、言葉も紡げなくなった。
 声もなく泣いて、びくびくと幾度となく肢体を震わせた神尾に、どれほどキスをしてからか、跡部が唇を離して抱きこんでくる。
 今頃になって、宥めるように背筋を軽く撫でられた。
「止めんのも一苦労だぜ。……ったく」
 半ば詰るように言われた言葉も理解が出来ない。
 神尾は空ろに跡部を見上げた。
 視線が合うと跡部はどことなく不機嫌そうでいながらも、今度は触れるだけのキスを神尾の瞼に落としてくる。
 ひくりと慄いた神尾の身体を強い腕で抱きこんで、跡部ははっきりとした溜息と共に悪態をつく。
「お前の中は、どこもかしこも甘ったるくて腹立つんだよ」
「………あとべ…」
「頭の中も、口の中も、身体の中も」
 嵌って、のめり込んで、抜け出せないじゃねえかと。
 苦しがるみたいに言われて、神尾はうろたえる。
 どうして、と懸命に跡部を見上げていると、跡部は神尾を抱き締める腕を一層強くして神尾の視野を奪ってしまう。
「全部寄こせ」
「…跡…部?」
「全部だ。全部、俺に寄こせ」
 暴君が、まるで懇願するかのように告げてくる。
 その呻き声に、感情が揺さぶられる。
 神尾は黙って跡部の背中を抱き締め返した。
 横暴に、神尾を、奪うだけ奪うくせに。
 それでもまだ足りないと、奪えないものがあるのだと、それを、結局は切願してくる声に、態度に。
 浮かされて、溶かされて、神尾は跡部の背中を抱きしめ返すのだ。
 いつも。
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