How did you feel at your first kiss?
これで離れていくだろうと思った鳳の唇は、微かな酸素を得てまたすぐに宍戸の唇へと重なってきた。
「………ン、…」
「………………」
「…………ッ…、…っ」
しつこい、と眉根を寄せて宍戸は鳳の腕に手を伸ばす。
でもそれは、自分から鳳を引き剥がす為ではなく、鳳に取り縋る為だ。
鳳の部屋に入ってから、長いことキスをされ続けていて、頭が本気でくらくらしている。
首が定まらないような不安定な感覚はひどくなる一方で、宍戸は鳳に唇を貪られながら大きな手が背中を支えてくれるのに任せ、体重を全部その手にかけた。
「宍戸さん」
「…………も、…いいかげんに……」
「会いたかった」
「アホ……一昨日会ったばっかだろーが…」
「中一日が、俺の限界ですね……」
宍戸の頬に唇を寄せながら話す鳳の声が、吐息に交ざって肌に触れるのに、宍戸は小さく身を竦ませる。
座ったまま抱き締められて。
こんな風に、ただただべったりしている自分達を、正直どうなのかと思う気もあるのだが。
甘えかかってくる鳳は、宍戸にしてみれば。
しっかりと抱き締め返してやって、無性にあやしたくなる、そんな存在だった。
そんな自分にも完全に問題がある。
宍戸は溜息をついた。
「……宍戸さん?」
「…紅茶、もう冷めてんじゃねえ?」
部屋に入る時に鳳が手にしていたトレイの上のマグカップからは、たっぷりと湯気がたちのぼっていたが、今はどう見ても湯気の気配はなかった。
「喉かわきました? すみません」
「…………………」
別にそういうわけではなかったのだが、鳳は漸く、終わりの印しのような微かなキスをして宍戸から腕を引いた。
テーブルの上のマグカップに手を伸ばす鳳を見ながら、何となくもの寂しい感触のする唇に宍戸は無意識に手をやっていて。
すぐに自分の行動に気付いて宍戸は居たたまれない羞恥心に襲われた。
「宍戸さん?」
「……、んでもねーよ」
マグカップを片手に持って、鳳は不思議そうに宍戸に呼びかける。
追求する時としない時とを大体正しく見極める鳳は、この時はそれ以上は何も聞いてこなかった。
やわらかに微笑んで、宍戸を後ろ抱きするように引き寄せてくる。
紅茶の入ったマグカップがあるからへたに動けなくて、宍戸はされるまま、壁に寄りかかって座る鳳の胸に寄りかからされる。
宍戸の身体を挟んで、鳳の長い両足が膝を曲げて立てられた。
「はい」
「………………」
口元にマグカップが持ってこられて、宍戸はいったい鳳は、どれだけ自分のことを甘やかしたいんだろうかと疑問に思う。
一日会ってないせいもなにもない。
毎日会っていたって鳳のこういう行動は変わらない。
「………………」
自分を甘やかしたがる鳳の、好きにさせているというこういう状況。
宍戸は宍戸でそうやって鳳を甘やかしたいのだから、もう自分達は。
「…………どうしようもねえな」
「何ですか?]
[………なんでもね。喉かわいた。早く飲ませろ」
「はい」
鳳の手にあるマグカップから、程よい温度になっている紅茶を飲む。
紅茶と一緒に持ってきていた小ぶりな籠に鳳が手を伸ばし、中に入っていた薄い白い紙に包まれていたものを宍戸の視界に翳す。
「……なんだ?」
「ポルボロン。スペインのお菓子なんですけどね」
薄紙は平たい丸いものを包んである。
両脇でキャンディのように捩じり上げられていて、側面にはPOLVORONと英字が印字されていた。
鳳が長い指先でその薄紙を解く。
粉砂糖のようなものがまぶされているその一口大の菓子を鳳は直接手にして宍戸の口元に近づけた。
「食べる時に、ポルボロンって三回唱えると幸せが訪れるって言い伝えられているものなんですよ」
「へえ……」
それでつまり唱えろって事か?と肩越しに視線を上げた宍戸は、目が合うなり鳳に頷かれた。
わかったよと宍戸はその言葉を三度口にした。
鳳の指先が宍戸の口の中にその焼き菓子を運ぶ。
ほろりとくずれるようにして口溶けする菓子だった。
「………………」
咀嚼するまでもないような繊細な感触が。
幸せを呼ぶのかもしれいが。
今でも充分幸せだがなと宍戸は内心で思う。
「どんな幸せが宍戸さんに来るんですかね。今年は」
「………………」
穏やかにそんな事を囁いてくる鳳に、深く凭れかかって宍戸は笑う。
「お前さ、長太郎」
「なんですか?」
「俺の幸せとやらは、結構お前次第かもしれないぜ?」
「俺ですか? 宍戸さんが幸せになるのに必要なものって何です?」
「俺の事だけ見てろ」
「もうそうしてますよ」
鳳が真顔で言って、それから?と言いながら微笑を浮かべる。
「長太郎が欲しい」
「それも、もうとっくにそうじゃないですか」
「ずっとかどうかが問題なんだよ。アホ」
「どっちがアホですか。そんな当たり前の事問題にしないで下さいよ」
情けないような声で嘆いた鳳に、宍戸は零れるように笑った。
顎に手がかかって、背後を振り返ったところを、キスされる。
キスが徐々に今度はパウダーシュガーの味になる。
「………ン、…」
「………………」
「…………ッ…、…っ」
しつこい、と眉根を寄せて宍戸は鳳の腕に手を伸ばす。
でもそれは、自分から鳳を引き剥がす為ではなく、鳳に取り縋る為だ。
鳳の部屋に入ってから、長いことキスをされ続けていて、頭が本気でくらくらしている。
首が定まらないような不安定な感覚はひどくなる一方で、宍戸は鳳に唇を貪られながら大きな手が背中を支えてくれるのに任せ、体重を全部その手にかけた。
「宍戸さん」
「…………も、…いいかげんに……」
「会いたかった」
「アホ……一昨日会ったばっかだろーが…」
「中一日が、俺の限界ですね……」
宍戸の頬に唇を寄せながら話す鳳の声が、吐息に交ざって肌に触れるのに、宍戸は小さく身を竦ませる。
座ったまま抱き締められて。
こんな風に、ただただべったりしている自分達を、正直どうなのかと思う気もあるのだが。
甘えかかってくる鳳は、宍戸にしてみれば。
しっかりと抱き締め返してやって、無性にあやしたくなる、そんな存在だった。
そんな自分にも完全に問題がある。
宍戸は溜息をついた。
「……宍戸さん?」
「…紅茶、もう冷めてんじゃねえ?」
部屋に入る時に鳳が手にしていたトレイの上のマグカップからは、たっぷりと湯気がたちのぼっていたが、今はどう見ても湯気の気配はなかった。
「喉かわきました? すみません」
「…………………」
別にそういうわけではなかったのだが、鳳は漸く、終わりの印しのような微かなキスをして宍戸から腕を引いた。
テーブルの上のマグカップに手を伸ばす鳳を見ながら、何となくもの寂しい感触のする唇に宍戸は無意識に手をやっていて。
すぐに自分の行動に気付いて宍戸は居たたまれない羞恥心に襲われた。
「宍戸さん?」
「……、んでもねーよ」
マグカップを片手に持って、鳳は不思議そうに宍戸に呼びかける。
追求する時としない時とを大体正しく見極める鳳は、この時はそれ以上は何も聞いてこなかった。
やわらかに微笑んで、宍戸を後ろ抱きするように引き寄せてくる。
紅茶の入ったマグカップがあるからへたに動けなくて、宍戸はされるまま、壁に寄りかかって座る鳳の胸に寄りかからされる。
宍戸の身体を挟んで、鳳の長い両足が膝を曲げて立てられた。
「はい」
「………………」
口元にマグカップが持ってこられて、宍戸はいったい鳳は、どれだけ自分のことを甘やかしたいんだろうかと疑問に思う。
一日会ってないせいもなにもない。
毎日会っていたって鳳のこういう行動は変わらない。
「………………」
自分を甘やかしたがる鳳の、好きにさせているというこういう状況。
宍戸は宍戸でそうやって鳳を甘やかしたいのだから、もう自分達は。
「…………どうしようもねえな」
「何ですか?]
[………なんでもね。喉かわいた。早く飲ませろ」
「はい」
鳳の手にあるマグカップから、程よい温度になっている紅茶を飲む。
紅茶と一緒に持ってきていた小ぶりな籠に鳳が手を伸ばし、中に入っていた薄い白い紙に包まれていたものを宍戸の視界に翳す。
「……なんだ?」
「ポルボロン。スペインのお菓子なんですけどね」
薄紙は平たい丸いものを包んである。
両脇でキャンディのように捩じり上げられていて、側面にはPOLVORONと英字が印字されていた。
鳳が長い指先でその薄紙を解く。
粉砂糖のようなものがまぶされているその一口大の菓子を鳳は直接手にして宍戸の口元に近づけた。
「食べる時に、ポルボロンって三回唱えると幸せが訪れるって言い伝えられているものなんですよ」
「へえ……」
それでつまり唱えろって事か?と肩越しに視線を上げた宍戸は、目が合うなり鳳に頷かれた。
わかったよと宍戸はその言葉を三度口にした。
鳳の指先が宍戸の口の中にその焼き菓子を運ぶ。
ほろりとくずれるようにして口溶けする菓子だった。
「………………」
咀嚼するまでもないような繊細な感触が。
幸せを呼ぶのかもしれいが。
今でも充分幸せだがなと宍戸は内心で思う。
「どんな幸せが宍戸さんに来るんですかね。今年は」
「………………」
穏やかにそんな事を囁いてくる鳳に、深く凭れかかって宍戸は笑う。
「お前さ、長太郎」
「なんですか?」
「俺の幸せとやらは、結構お前次第かもしれないぜ?」
「俺ですか? 宍戸さんが幸せになるのに必要なものって何です?」
「俺の事だけ見てろ」
「もうそうしてますよ」
鳳が真顔で言って、それから?と言いながら微笑を浮かべる。
「長太郎が欲しい」
「それも、もうとっくにそうじゃないですか」
「ずっとかどうかが問題なんだよ。アホ」
「どっちがアホですか。そんな当たり前の事問題にしないで下さいよ」
情けないような声で嘆いた鳳に、宍戸は零れるように笑った。
顎に手がかかって、背後を振り返ったところを、キスされる。
キスが徐々に今度はパウダーシュガーの味になる。
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