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How did you feel at your first kiss?
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 留守番をする事になった。
「ここには誰も来ないが、万が一誰かが訪ねてきても、絶対にドアを開けるな」
「……信用ねーなー……俺、ちゃんと応対くらい出来るぜ?」
 そういう事を言ってるんじゃねえと跡部に凄まれ、訳わかんねえと神尾は唸った。
 跡部の家にやって来て、小一時間も経たないうちに跡部の携帯が鳴った。
 テニス部の監督からの呼び出しである。
「急ぎの用なんだろ? 早く行けよ」
 何故か跡部は神尾にしてみればどうでもいいような事を念押ししているばかりで、なかなか出て行かない。
 神尾の方が気が急いてしまう。
「跡部」
「俺が帰ってくるまで絶対にここから出るな」
「……あのなあ……! 近くだとしても、買い物に出る時は俺だって鍵くらいかけるってば」
「そういう事言ってんじゃねえって何遍言わす」
「おんなじ回数訳わかんねーって俺に言わせておいてそういうこと言うか?」
 喧嘩なんかしてる暇ないだろうにと思いながらも、ついつい神尾は跡部に食ってかかってしまった。
 すると。
 舌打ちが聞こえて。
 後ろ首をつかまれて。
 神尾は思わず首を竦めた。
「…、…………」
「………誰もここに入れるな」
「………………」
「飽きて帰ったりするな」
「……跡部?」
 何だか声の感じが違って聞こえる。
 不思議に思って目を開けた神尾の唇に、跡部の唇が掠った。
 キス、された。
「………………」
「どこのいかれた野郎に手出されるか判ったもんじゃねえからドアは開けるな。俺じゃない奴と二人きりになったりするな。まだ帰したくないから帰らないでくれ。……こう言や判るのか。てめえの馬鹿な頭でも」
「ば、……!」
 馬鹿とか言われてむかつくし、からかってくる態度にも腹がたつのに。
 それなのに。
 何だか気分がひどく甘くなって、神尾の罵声は敢無く途切れた。
 間近に見る跡部の顔とか、言葉の調子ほど茶化した様子のない目だとか。
「………………」
 頬を撫でられ、もう一度されたキスだとか。
 跡部が好きで、胸が詰まる。
「………………」
「待ってろよ」
「……うん…」
 最後に軽く抱き寄せられ駄目押しされた。
 甘ったるい余韻を残す抱擁をして、跡部が出て行った後。
 即座にその場にしゃがみ込んでしまった神尾は、がなっているみたいな自分の胸元を押さえて呟く。
「………心臓に悪ぃってば……」
 そう呟くが精一杯で。
 神尾は。
 跡部が帰ってくるまでの時間の大半を、呆けて過ごす羽目になった。


 扉の開く音。
 我に返ったみたいな気分で、神尾は玄関まで走った。
 どれくらい時間が経ったのか確かめる余裕も無く、帰ってきた跡部を迎えにいく。
「跡部!」
「……三倍速でファイルチェックしてきてやった。有難く思え」
 相当悪い奴のような不機嫌極まりない顔で跡部は言った。
 凄む声。
 えらそうな言葉。
 不遜な態度。
「よしよし、いい子いい子」
「………ああ?」
 なんだか可愛かった。
 思わず手が出て跡部の頭を撫でた神尾に。
 呪いでもかけるような凶悪な面相で唸った跡部は、しかし目と目があうと、不意に口を噤んだ。
 なんだ?と小首を傾げて神尾が見つめると。
 跡部は舌打ちして目を逸らす。
 片手で頭を抱える。
 神尾は慌てた。
「……どうした? 具合悪いのか?」
 焦って表情を伺おうと顔を近づける神尾の目の前で、跡部が呪詛めいた悪態をいくつか口にしたが神尾の耳には届かない。
「跡部?」
「…………くそったれ…」
「え? 大丈夫か跡部?」
「大丈夫なわけあるかっ」
 神尾は更に慌てる。
「取り合えずベッド行く?」
 気遣わし気に跡部の様子を伺いながら尋ねると、荒っぽい返事がすぐに返ってくる。
「当たり前だ」
「そんな具合悪いのか? 医者とか行かなくて平気か?」
「てめえが連れてけ」
 天国の近くまで、と。
 神尾の耳にひどく理解し難い跡部の声が届く。
「は? 何、……っ……ぅわ、跡部、っ?」
 いわゆる抱っこ、そしてそのまま勢いで肩に担がれるようにされて、神尾は跡部の背にだらんと両手を落とし、ついでに宙に浮いている両足もばたつかせて叫んだ。
「ちょ、っ……おい、何の真似……!」
「お前下ろした場所でやるからな。廊下でやられたくなけりゃじっとしてろ」
「……やる、?!」
 何で、どうして、そういう話になっているのか。
 さっぱり判らず神尾はくらくらしてきた。
 跡部のベッドに放られて、いきなり深いキスをされても目をまわしていた。
「あとべ……?」
 もつれた舌で、キスの合間に懸命に名前を呼べば。
「………これ以上駄目押ししてどうすんだ。この馬鹿」
「……っ……ン…、」
 唇が離れる前の、何倍かの深さでまた口付けられた。


 結局神尾は何がどうしてこうなったのか、最後の最後まで判らないまま。
 跡部を連れて行き、跡部に連れていかれた。
 入り口どころか、それは恐らく、別天地そのものにまで。
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