How did you feel at your first kiss?
手塚に呼ばれた乾は、手塚に向けて判ったと言うなり振り返り、海堂の事を呼んだ。
「悪い。少しそこで待っててくれる?」
「………………」
海堂が小さく頷いたのを見てから乾は手塚の元へ向かう。
何とはなしにその背を見送り、海堂は首にかけたタオルでこめかみからの汗を拭う。
「………………」
約束というほどの約束ではない。
部活のさなかに、終わった後残れる?と言ったのは乾だ。
いきなり屈み込んで海堂のふくらはぎに手を当ててそう言ったので、恐らくメニューの修正か何かのようだ。
手塚に呼ばれたのならわざわざ自分に確認とらなくても帰りはしないのにと少し呆れて。
そういえば前にも似た様な事があったのを海堂は思い出した。
口に出してそれを告げた時、海堂は手塚崇拝主義者だからなあと乾に苦笑いされたのだ。
「かーいどう。乾のこと、そんなに好き?」
「………………」
いきなりすぎる程いきなり、軽やかにそんな声をかけられ海堂は固まった。
背中に飛び掛ってくるようにぶつかってきた身体。
「………………」
部内で、海堂に対して、可愛がりたいという態度を顕著に表すのが、乾と、そしてもう一人。
この菊丸だ。
入部当初は菊丸のスキンシップにも大概戸惑った海堂だったが、最近はこれでも幾らか免疫が出来て、前ほどは激しくうろたえなくなった。
「薫ちゃん?」
背後からぐっと顔を近づけてきた菊丸の大きな目を目の当たりにして。
幾らかの慣れと、そして。
こんなにも性格は違うのに、何故か同類意識で自分に構ってくる菊丸に、海堂も時折素になって言葉を返してしまう事があって。
でも、そういう時の菊丸がひどく嬉しそうなので、最近何となく海堂は菊丸に対して肩の力が抜けている。
「ね。乾のこと、そんなに好き?」
「……好きなんじゃない」
「うん?」
すごく好きなんだと小さくもはっきりと口に出してしまってから、海堂は急に我に返った。
「……、…ッ……」
「あー…大丈夫大丈夫」
飛びのきかけたところを力で抱え込むように菊丸に抱きつかれ。
「俺しか聞いてないよ、大丈夫!」
「………っ……、…」
宥められてしまった。
まるで噛んで含めるみたいにだ。
「…………………」
でも実際菊丸は、乾がいる時は割合盛大にからかってくる事が多いけれど、海堂一人の時は無闇に突付いてくるような事はしない。
乾曰く、お兄ちゃんぶりを発揮しているという事らしい。
「あ。乾が睨んでるー」
「…………………」
海堂を抱き締めたまま菊丸は明るく笑い、もっと抱きついちゃえーと言って力を入れてくる。
「うわー。走ってくるよー」
愛されてるなあと、さらりと言われた言葉が。
海堂の耳に優しく残った。
あまり余裕のない顔で駆け寄ってきて、菊丸を引き剥がし、怒りたいのか泣きつきたいのか微妙な声で、乾は海堂の名を口にする。
「………海堂…!」
「先輩って」
「何」
「意外と子供っぽいんですね」
自覚はあるのか咄嗟に言葉に詰まった乾を見つめて。
海堂は、恐らく乾だけが判る範囲で。
かすかに。
わらった。
「………そういうアンタも嫌いじゃないッスよ」
「…、海堂」
たまにはそういう風に、慌てる乾を見るのもいいと海堂は思う。
言葉を考えあぐねている乾の姿は、海堂の目にも、優しく残った。
「悪い。少しそこで待っててくれる?」
「………………」
海堂が小さく頷いたのを見てから乾は手塚の元へ向かう。
何とはなしにその背を見送り、海堂は首にかけたタオルでこめかみからの汗を拭う。
「………………」
約束というほどの約束ではない。
部活のさなかに、終わった後残れる?と言ったのは乾だ。
いきなり屈み込んで海堂のふくらはぎに手を当ててそう言ったので、恐らくメニューの修正か何かのようだ。
手塚に呼ばれたのならわざわざ自分に確認とらなくても帰りはしないのにと少し呆れて。
そういえば前にも似た様な事があったのを海堂は思い出した。
口に出してそれを告げた時、海堂は手塚崇拝主義者だからなあと乾に苦笑いされたのだ。
「かーいどう。乾のこと、そんなに好き?」
「………………」
いきなりすぎる程いきなり、軽やかにそんな声をかけられ海堂は固まった。
背中に飛び掛ってくるようにぶつかってきた身体。
「………………」
部内で、海堂に対して、可愛がりたいという態度を顕著に表すのが、乾と、そしてもう一人。
この菊丸だ。
入部当初は菊丸のスキンシップにも大概戸惑った海堂だったが、最近はこれでも幾らか免疫が出来て、前ほどは激しくうろたえなくなった。
「薫ちゃん?」
背後からぐっと顔を近づけてきた菊丸の大きな目を目の当たりにして。
幾らかの慣れと、そして。
こんなにも性格は違うのに、何故か同類意識で自分に構ってくる菊丸に、海堂も時折素になって言葉を返してしまう事があって。
でも、そういう時の菊丸がひどく嬉しそうなので、最近何となく海堂は菊丸に対して肩の力が抜けている。
「ね。乾のこと、そんなに好き?」
「……好きなんじゃない」
「うん?」
すごく好きなんだと小さくもはっきりと口に出してしまってから、海堂は急に我に返った。
「……、…ッ……」
「あー…大丈夫大丈夫」
飛びのきかけたところを力で抱え込むように菊丸に抱きつかれ。
「俺しか聞いてないよ、大丈夫!」
「………っ……、…」
宥められてしまった。
まるで噛んで含めるみたいにだ。
「…………………」
でも実際菊丸は、乾がいる時は割合盛大にからかってくる事が多いけれど、海堂一人の時は無闇に突付いてくるような事はしない。
乾曰く、お兄ちゃんぶりを発揮しているという事らしい。
「あ。乾が睨んでるー」
「…………………」
海堂を抱き締めたまま菊丸は明るく笑い、もっと抱きついちゃえーと言って力を入れてくる。
「うわー。走ってくるよー」
愛されてるなあと、さらりと言われた言葉が。
海堂の耳に優しく残った。
あまり余裕のない顔で駆け寄ってきて、菊丸を引き剥がし、怒りたいのか泣きつきたいのか微妙な声で、乾は海堂の名を口にする。
「………海堂…!」
「先輩って」
「何」
「意外と子供っぽいんですね」
自覚はあるのか咄嗟に言葉に詰まった乾を見つめて。
海堂は、恐らく乾だけが判る範囲で。
かすかに。
わらった。
「………そういうアンタも嫌いじゃないッスよ」
「…、海堂」
たまにはそういう風に、慌てる乾を見るのもいいと海堂は思う。
言葉を考えあぐねている乾の姿は、海堂の目にも、優しく残った。
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