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How did you feel at your first kiss?
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 発端は不二だった。
 海堂眠そうだね、と朝練前の部室で海堂に声をかけてきたのだ。
 ちょうどその時あくびをかみころしていて、若干潤んだ目の海堂は、いつもの深い溜息と供に言った。
「………先輩は寝言でも『データ、データ』ってブツブツ言ってウルサイんス」
「へえ」
 楽しそうに微笑んだ不二に海堂は気づかず着替えの手をすすめる。
 そんな海堂の真横に並んで、不二も着替えを始めながら穏やかに話を続ける。
「乾は寝言の時は声大きいんだ?」
「別に大きくは。普段と似たような…それより小さいかくらいっスけど…」
「へえ」
 でも聞こえて困るくらいなんだと言った不二に、こくりと海堂は頷く。
「……うわ…降参」
 いきなり声を出して笑い出した不二に、漸く海堂がいぶかしむ顔になる。
「……は?」
「僕の負け」
「何がっすか?」
「不二。負けと認めたのならすぐに退散」
「乾先輩?」
 そのうえ突然に現れた乾が事も無げに不二をあしらおうとするのにも面食らい、海堂は目上の二人を交互に見やっている。
「あの……」
「あれ、ひどいな乾。そんな追い払うみたいに」
「追い払ってなんかないさ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
「海堂は、素直だね」
「は?」
 いきなり話をふられてこられて海堂はまたもや全くその展開についていけない。
「乾も少しは海堂を見習えばいいのに」
「お前もな。不二」
「、さっきからいったい何の話……」
「海堂」
「………、…」
 にっこりと笑う不二が海堂の両肩に手を置いた。
 目線は自分よりも下にあるのに、ひどく存在感の強い不二に一瞬言葉を詰まらせた海堂は、不二の手によって乾の元へと押し出される。
「はい。乾」
「………あの、不二せんぱ……」
 そっと乾に差し出される。
 海堂が肩越しに振り返ると、不二はもう背を向けていて、楽しげな足取りで歩いていってしまっていた。
「………………」
「どうした? 海堂」
「訳が判らねえよ……あんたたち」
「そうかな? 極めて判りやすい構図だったじゃないか」
 海堂が可愛くて、不二は面白がって、俺はからかわれて。
 乾はそう言って、海堂はやっぱり訳が判らない。
「それで今は、海堂は意味が判らない、俺はちょっとヤキモチやいてる。簡単だろ?」
「ヤキモチって何だよ」
 ますます話を難しくする一方の乾を睨みつけて、海堂は不機嫌になった。
 乾にヤキモチをやかれるような事は何もない。
「………俺みたいに口下手で無愛想な奴、先輩意外に誰が面倒見るんですか」
「面倒、か」
 そうしてとうとう笑い出した乾に海堂は不機嫌を通り越し腹をたてた。
 これ以上何を言っても意味ないと思って乾に背を向ける。
「………待って」
「……………、…っ……、…」
 足早に部室を出て行こうとしたところを背後から長い腕に巻き込まれるように抱き寄せられて、海堂がぎょっとしたのを正しく悟って宥めるように。
 海堂の耳元で乾の囁く声がした。
「大丈夫。誰もいない」
「………、離…」
「それとね。俺は面倒なんかみてないよ?」
「………………」
「不二も言ってたろ? 海堂は素直だからそんな風に騙されてくれてるけどさ」
「騙されて……って何っすか」
「面倒みてますなんて見せかけて、ほんとのところ俺違うだろ?」
「……あんたの本当の所なんて、あんたにしか判らないんじゃないのかよ…」
「うーん……そのへんのことは海堂以外にはバレバレっぽいよ?」
「…、悪かったな…!」
 それは自分だけが乾の事を判らないと言われたようなもので、海堂は考えるより先に荒げた声をあげて乾の腕を振り切った。
「………っと…」
「……、……」
 しかし乾は今度は正面から海堂を抱き締めてきた。
 それも今度はもう振りほどけない。
「海堂。待った」
「………、……何なんだよ…あんたは…!」
「だから、面倒みてますって素振りで海堂を独占しようとしてるだけの俺だろ」
「………ああ?」
「俺って、言い回しとか態度、そんなにまわりくどいタイプかな?」
 珍しく弱っているような乾の口ぶりに、僅かに海堂の溜飲も下がって、海堂は抗うのを止めた。
「……だから判りにくいって言ってるじゃないっすか」
「………じゃ…不二の忠告も聞いて、海堂見習って素直になるからさ。怒るなよ」
「………………」
 相手にあまえてこられると強くは出られなくなる自分を熟知している海堂は、嘆息交じりに肩の力を抜く。
「先輩とテニスがあれば、俺は他に何もいらない」
「海堂」
「………俺が単純だから、あんたは七面倒くさくても構わねえよ」
「…………駄目だ…降参。俺の完全なる敗北だ……」
 先程の不二と似たような事を口にする乾が、海堂にはやはりよく判らなかった。
 
 ものすごい力で抱き締めてくる乾が、海堂にはやはりよく判らなかった。
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