How did you feel at your first kiss?
肩を丸めて身体を縮めて、泣きじゃくるような呼吸を未だ引きずる神尾の背に、跡部が手のひらを宛がうと、綺麗に浮き出た肩甲骨が羽ばたき損ねた羽の様にぎこちなく動いた。
「………戻ってこれないのか」
「………………」
目が合っているのに、神尾は跡部を探すような顔をする。
上気した顔や、浅く忙しない呼吸。
瞬くと睫毛にもつれるような涙がはっきりと見え、跡部は神尾の目元を手で拭いながらベッドの縁に腰掛けた。
「神尾」
「………………」
聞こえてるかと静かに問いかけた跡部の手に擦り寄るようにして神尾の身体がまた小さく丸まった。
「おい……?」
「あとべのて、きもちいい……」
「…………………」
片手にしがみつかれるような体勢に、跡部は片手を神尾に預けたまま、身体を並べるようにして横たえる。
そうやって、横になって顔を見合わせると、尚も涙に潤んでいる目を震わせるようにして神尾がぽつんと呟いた。
「跡部、キレー……」
「…………………」
どっちがだよと跡部は微かに眉間を歪める。
「……跡部の瞳ってビー玉みたいにキラキラしててきれくて好き」
だからどっちがだと。
濡れそぼる黒い瞳の眦を跡部は指先で辿った。
跡部のその手にも擦り寄ってくるような神尾の仕草は何の媚もなく、寧ろ普段は感じ取れないいたいけさが色濃くて跡部はそのまま神尾を胸元に抱き寄せた。
「…………………」
跡部が抱いた後の神尾はいつもこんな風で、最中にむさぼった快感の代償ように力ない。
ぐったりとしている神尾の身体を、跡部が自分の上に乗せてしまっても、くたりとのびている子猫のようにおとなしい。
跡部の胸に顔を伏せている神尾の小さな頭に、跡部は両手の指先をもぐらせて、撫でるようにあやし続けると。
少しずつ神尾の荒いだ呼吸が和いでいくのが跡部の手のひらに伝わってきた。
「…………………」
抱きたいと思う衝動はいつでも強く、そうやって抱いた後にうまれるひどくやわらかくて繊細な飢餓感を、跡部は神尾で知った。
「………なにゴソゴソやってんだ」
「…………ねむい…」
「寝りゃいいだろ」
「……おりる………」
「おりなくていい」
「………ぇ…?……でも…さ……」
「でもじゃねえよ」
「…………おもいだろ?…」
「どこが」
跡部が強引に腕を回して、身じろぐ神尾を引き寄せると。
何だか熱っぽい感触が胸に当たって、そのゆるい熱さが跡部の深いところにも浸透してくる。
「…………………」
なだめて、あやして、寝かしつけたい欲求なんて、聞けばどこの母性か父性かという感じだが、生憎どちらにも当てはまらない己を跡部は熟知していた。
「苦しくねーの?……」
「…………………」
「……あとべ…?」
抱いた後に殊更。
手放したくなくなる。
「あとべ」
朝になればまた、やたらと元気のいい、威勢のいい、笑って怒って目まぐるしい神尾になるのだろうけれど。
今は。
とろとろと甘い惰眠のように柔らかい神尾を抱き締めて。
手のひらの下の滑らかな背中を感じて。
跡部は静かに眠りに沈んだ。
眠っている間でも。
意識のない間でも。
跡部には、もう、手放せなかった。
「………戻ってこれないのか」
「………………」
目が合っているのに、神尾は跡部を探すような顔をする。
上気した顔や、浅く忙しない呼吸。
瞬くと睫毛にもつれるような涙がはっきりと見え、跡部は神尾の目元を手で拭いながらベッドの縁に腰掛けた。
「神尾」
「………………」
聞こえてるかと静かに問いかけた跡部の手に擦り寄るようにして神尾の身体がまた小さく丸まった。
「おい……?」
「あとべのて、きもちいい……」
「…………………」
片手にしがみつかれるような体勢に、跡部は片手を神尾に預けたまま、身体を並べるようにして横たえる。
そうやって、横になって顔を見合わせると、尚も涙に潤んでいる目を震わせるようにして神尾がぽつんと呟いた。
「跡部、キレー……」
「…………………」
どっちがだよと跡部は微かに眉間を歪める。
「……跡部の瞳ってビー玉みたいにキラキラしててきれくて好き」
だからどっちがだと。
濡れそぼる黒い瞳の眦を跡部は指先で辿った。
跡部のその手にも擦り寄ってくるような神尾の仕草は何の媚もなく、寧ろ普段は感じ取れないいたいけさが色濃くて跡部はそのまま神尾を胸元に抱き寄せた。
「…………………」
跡部が抱いた後の神尾はいつもこんな風で、最中にむさぼった快感の代償ように力ない。
ぐったりとしている神尾の身体を、跡部が自分の上に乗せてしまっても、くたりとのびている子猫のようにおとなしい。
跡部の胸に顔を伏せている神尾の小さな頭に、跡部は両手の指先をもぐらせて、撫でるようにあやし続けると。
少しずつ神尾の荒いだ呼吸が和いでいくのが跡部の手のひらに伝わってきた。
「…………………」
抱きたいと思う衝動はいつでも強く、そうやって抱いた後にうまれるひどくやわらかくて繊細な飢餓感を、跡部は神尾で知った。
「………なにゴソゴソやってんだ」
「…………ねむい…」
「寝りゃいいだろ」
「……おりる………」
「おりなくていい」
「………ぇ…?……でも…さ……」
「でもじゃねえよ」
「…………おもいだろ?…」
「どこが」
跡部が強引に腕を回して、身じろぐ神尾を引き寄せると。
何だか熱っぽい感触が胸に当たって、そのゆるい熱さが跡部の深いところにも浸透してくる。
「…………………」
なだめて、あやして、寝かしつけたい欲求なんて、聞けばどこの母性か父性かという感じだが、生憎どちらにも当てはまらない己を跡部は熟知していた。
「苦しくねーの?……」
「…………………」
「……あとべ…?」
抱いた後に殊更。
手放したくなくなる。
「あとべ」
朝になればまた、やたらと元気のいい、威勢のいい、笑って怒って目まぐるしい神尾になるのだろうけれど。
今は。
とろとろと甘い惰眠のように柔らかい神尾を抱き締めて。
手のひらの下の滑らかな背中を感じて。
跡部は静かに眠りに沈んだ。
眠っている間でも。
意識のない間でも。
跡部には、もう、手放せなかった。
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