How did you feel at your first kiss?
例えば過度に金銭を使われたり、四六時中食べ物を奢られたりすることを、宍戸は本気で嫌う。
「俺は何か物を見て、いいなと思うとただ宍戸さんにあげたくなるだけなんですけどね……」
「時々やりすぎんだよ」
鳳に渡される物を、簡単に受け取ったものの、それが後から本当にびっくりするような値段だったりする事を知った経験は一度や二度ではないのだ。
「食事に誘うのも、もっと一緒にいたいだけですし」
「じゃあ馬鹿高い所で食う必要ねえだろ」
おっとりと苦笑いを浮かべる鳳をきつい眼差しで見上げて、宍戸は胸の前で腕を組む。
「それで? 今日は何なんだよ」
土曜の今日は、学校は休みだが部活はあった。
全てのメニューを済ませて、解散となった途端。
宍戸は鳳に、そっと腕を取られた。
人目を忍んだ微かな接触。
鳳の腕はすぐに離れていった。
しかしやわらかく微笑している後輩は、あからさまに物言いたげで。
宍戸は深い溜息を吐き出しながら、大概の事を察した。
常に邪気なく宍戸に接してくる鳳だったが、時折こんな風に、誘いを断られる事を恐れるような気弱な態度をとる。
それに宍戸は弱かった。
「宍戸さん。ミルク鶏食べにいきませんか」
「………ミルク鶏?」
「はい」
水の代わりにミルクを飲ませて育てた鶏だと鳳は説明した。
「普通の鶏とは味が違うそうですよ。タンパク質も特に豊富で、スポーツする人には最適なんだとか」
「へえ……」
「……食べてみませんか」
「…………………」
微笑んでいるけれど、もし断ったら地の果てまで落ち込んで沈んでいきそうだなと宍戸は鳳を見て思う。
ここのところ断ってばかりだったしな、と宍戸は心中でのみ呟き。
頷いた。
「いいぜ」
「本当ですか?」
「疑ってんじゃねえよ」
「すみません」
そう言った鳳の笑い顔が。
純粋に明るくて。
宍戸もつられて薄く笑み、ついてくるように片手で鳳を促して歩き出した。
部室に行くまでの僅かな時間で、今晩の約束を交わす。
「車出すとか言うなよ」
「判ってます。電車に乗って歩いて行く方が、宍戸さんと一緒にいる時間が長いからそうします」
「………アホ」
こんなに従順で。
こんなに可愛いのに。
そのくせどんどんと大人びていく身体つきや表情が。
近頃の鳳を危うく目立たせる。
最近キスの仕方も濃厚だよなあと。
考えて、宍戸は。
「え、あれ…?…宍戸さん…首、真っ赤ですけど…どうかしましたか?!」
「………うるせ……」
何考えてんだと羞恥に焼かれそうな宍戸にお構い無しに。
鳳は至ってマイペースに宍戸を心配し、慌てていた。
それは夕方に、再度待ち合わせをしてからも変わらず。
風邪を心配しているようで、鳳は、彼自身が巻いていたマフラーを外して宍戸の首にかけるという真似まで往来でやってのけた。
本当に、最近激しくも甘く悪目立ちするこの年下の男をどうしたものかと。
宍戸はあちこちから向けられてくる密やかな注目を自覚しながら悩むのだった。
悩みながらも、ミルク鶏は美味だった。
宍戸の気に入った。
食事を済ませた帰り際。
盗むような鳳からのキスが宍戸に苦かったのは、食事の最後に鳳が食べたパセリのせいのようだった。
「パセリは結婚の約束を表すんですよ。知ってました?」
そう言って見るからに苦そうなつけあわせのパセリを齧った鳳は。
その苦い唇で。
今。
少し長く、宍戸の唇を塞いだ。
「俺は何か物を見て、いいなと思うとただ宍戸さんにあげたくなるだけなんですけどね……」
「時々やりすぎんだよ」
鳳に渡される物を、簡単に受け取ったものの、それが後から本当にびっくりするような値段だったりする事を知った経験は一度や二度ではないのだ。
「食事に誘うのも、もっと一緒にいたいだけですし」
「じゃあ馬鹿高い所で食う必要ねえだろ」
おっとりと苦笑いを浮かべる鳳をきつい眼差しで見上げて、宍戸は胸の前で腕を組む。
「それで? 今日は何なんだよ」
土曜の今日は、学校は休みだが部活はあった。
全てのメニューを済ませて、解散となった途端。
宍戸は鳳に、そっと腕を取られた。
人目を忍んだ微かな接触。
鳳の腕はすぐに離れていった。
しかしやわらかく微笑している後輩は、あからさまに物言いたげで。
宍戸は深い溜息を吐き出しながら、大概の事を察した。
常に邪気なく宍戸に接してくる鳳だったが、時折こんな風に、誘いを断られる事を恐れるような気弱な態度をとる。
それに宍戸は弱かった。
「宍戸さん。ミルク鶏食べにいきませんか」
「………ミルク鶏?」
「はい」
水の代わりにミルクを飲ませて育てた鶏だと鳳は説明した。
「普通の鶏とは味が違うそうですよ。タンパク質も特に豊富で、スポーツする人には最適なんだとか」
「へえ……」
「……食べてみませんか」
「…………………」
微笑んでいるけれど、もし断ったら地の果てまで落ち込んで沈んでいきそうだなと宍戸は鳳を見て思う。
ここのところ断ってばかりだったしな、と宍戸は心中でのみ呟き。
頷いた。
「いいぜ」
「本当ですか?」
「疑ってんじゃねえよ」
「すみません」
そう言った鳳の笑い顔が。
純粋に明るくて。
宍戸もつられて薄く笑み、ついてくるように片手で鳳を促して歩き出した。
部室に行くまでの僅かな時間で、今晩の約束を交わす。
「車出すとか言うなよ」
「判ってます。電車に乗って歩いて行く方が、宍戸さんと一緒にいる時間が長いからそうします」
「………アホ」
こんなに従順で。
こんなに可愛いのに。
そのくせどんどんと大人びていく身体つきや表情が。
近頃の鳳を危うく目立たせる。
最近キスの仕方も濃厚だよなあと。
考えて、宍戸は。
「え、あれ…?…宍戸さん…首、真っ赤ですけど…どうかしましたか?!」
「………うるせ……」
何考えてんだと羞恥に焼かれそうな宍戸にお構い無しに。
鳳は至ってマイペースに宍戸を心配し、慌てていた。
それは夕方に、再度待ち合わせをしてからも変わらず。
風邪を心配しているようで、鳳は、彼自身が巻いていたマフラーを外して宍戸の首にかけるという真似まで往来でやってのけた。
本当に、最近激しくも甘く悪目立ちするこの年下の男をどうしたものかと。
宍戸はあちこちから向けられてくる密やかな注目を自覚しながら悩むのだった。
悩みながらも、ミルク鶏は美味だった。
宍戸の気に入った。
食事を済ませた帰り際。
盗むような鳳からのキスが宍戸に苦かったのは、食事の最後に鳳が食べたパセリのせいのようだった。
「パセリは結婚の約束を表すんですよ。知ってました?」
そう言って見るからに苦そうなつけあわせのパセリを齧った鳳は。
その苦い唇で。
今。
少し長く、宍戸の唇を塞いだ。
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