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How did you feel at your first kiss?
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 背が高くておっとりしていて、笑顔はやわらかくて物言いも丁寧で。
 人懐っこいけれども、礼儀正しい。
 尊敬してます、大好きです、とそれはもう殆ど盲目的に懐かれて懐かれて。
 たまに邪険してみても、腹をたてるでもなく根気強く後をついてきた。
 もっとそっけなくあしらってみれば流石に傷ついたような顔をして落ち込んで。
 その落ち込みぶりがまたすごいから、結局いつも最後には、甘やかして、機嫌をとってやりたくなる。
 それが日常のことだった。
 多分、そのうち、こうなる予感もあったから。
 宍戸は驚きはしなかったが、それにしたって。
 鳳からのキスを宍戸が拒まずに受けた後、あの鳳が、ここまで暴走するとは。
 宍戸にとって、それはまるで予想外のことだった。




 学年の違う宍戸と鳳が、その日はそれぞれ4時間目が自習になって、他のクラスが授業中の静かな校内で顔を付き合わせることになったのは、単純に偶然だった。
 部員ですらも昼休みには立ち寄らないテニス部の部室に宍戸を誘った鳳が、何か言いたい事がありそうだという事には宍戸も気づいていたのだが、それが言いたいのではなくしたいキスだったということに、された宍戸は驚いて。
 それでも、もう鳳が、本当に耐え切れなくなって欲しがっているキスだと判るから、鳳をあやすような気持ちで唇をひらいたのは宍戸からだった。
 いいんですか?と僅かに離れた唇の合間で鳳が熱っぽい息で聞くのに、いいんだよと不機嫌に鳳の舌を含んだのも宍戸だった。
 宍戸が鳳の舌を食むと、鳳の手にきつく腰を抱きこまれた。
 強い力で鳳の手は宍戸の腰に絡まり、正面から密着させられた互いの下腹部の上ずる熱っぽさに宍戸は初めて状況の生々しさに息を詰めた。
 まさかなと思っていると、鳳は宍戸を壁に押し付けて、制服のシャツを無造作に捲りあげてきた。
 まさかだった。
 頭を突っ込まれる勢いに宍戸が怯んでいると、しかし鳳は乱暴ではなく固執する熱心さで宍戸に触れ出した。
 触れられた所から、広範囲に滲みだしてくる刺激の周りがひどく早かった。
 宍戸は途切れ途切れの息の合間に、余裕のない声を小さく上げ続ける。
 それが何をされているから零れてしまう声なのか、判らなくなるのも早かった。
「宍戸さんの汗って苦いけど……ここはこんなに甘いね」
 胸をあからさまに舐めあげられて、宍戸は片手で額と目元を押さえ込んで歯を食いしばる。
「……ぅ…」
 細かくひっきりなしに震えている宍戸の腕を宥めるように撫でて、鳳は舌ですくいあげたものに今度は深く吸い付いてくる。
「………っひ」
 子供みたいに貪欲で、一つ下の後輩の欲求の全てが自分の身体に向けられていることに、触れられ続けても、まだ慣れない。
 意識ばかりがとろとろと溶けて、身体はどんどん過敏になる。
「…………長…太郎…、…っ…ゃ…、…め…、…」
「あ、………」
 何かに気づいたような鳳の小さな声に、聞く前から何かしらの予感めいたものが沸き起こって。
 宍戸は怯えて身体をもがかせた。
「、っ………」
「……すっげ……やーらかかったのに……」
「……………ッ…、っ…ぅ…っ」
「宍戸さん……少しだけ噛むね…」
「…、……っぁう…」
「………真っ赤だ………こっちもね。痛くしないから…」
「…ぁ…ぅ、っ…」
 両方に鳳の指がかかって、執着を増す唇が飽きもせず交互にそこに被さってくる。
「ぁ…っ…あ……ぁっ……ぁ…」
「………ん? 宍戸さん?」
「……ひぁ…」
「やだ…?…泣いちゃってるね……俺のこと怖い?」
「お前…、……こんな……」
 上半身だけでこんなになる自分がおかしいのか、それともしている鳳がよほど何か特別なやり方をしているのか、宍戸はふらつく足を必死に踏みしめながら鳳の後ろ髪をつかんだ。
「ど……で…覚え……、っ……」
「……どこって」
 鳳は吐息で苦笑いする。
「…俺ね、宍戸さん。ずーっと考えてたんだよ」
「………それ……やめ…、ろ…っ、」
 小さな一点に指も舌も一度に宛がわれた上、指先で固定されて吸い付かれ、宍戸の膝ががくんと砕けた。
 鳳がそれを宍戸の胸元を押さえてくいとどめるから、宍戸の喉はたちどころに細い悲鳴で震えあがった。
 指で、唇で、縫い止められる。
「ひ、……っ……、…っ…ぁ…」
「どこかで誰かに習ったりとか、してないから。ずっと、宍戸さんにしたいこと、いろいろ考えてて」
「……、ぁ、…、…ぁ、っ…、」
「だから、すごい嬉しい……」
 深く唇を塞がれて、宍戸は鳳の肩をつかんだ。 唇を探られながら、とりすがるように強くしがみ付くと、鳳は宍戸の耳元に何度も何度も囁いた。
「すっごい嬉しいです」
「……長太…郎、…?…っ…、ぅ、く……」
「逃げないで…」
 ください、と。
 上目に見られて。
 甘える目、必死な目。
 見慣れている表情に追い詰められた。
「………っぁ、ぅ…」
 鳳の手に足の狭間を握り込まれ、率直すぎるその刺激を振り払えなくなった。
 大きな手のひらに、そこのかたちをかえるようにひっきりなしに触れられて、引き出されたそばから零れてしまうものが自分を伝って部室の床にも落ちようとする。
「ん…ぁ、っゃ、…ぁ…」
 即座に膝をついたのは鳳で、彼の唇に体温を上げているそれを吸い込まれてしまって、加減もなく、くまなく、潤んだ口腔で愛撫される。
「…く…、…ん、…っ」
 鳳の宍戸に向けてくる執着はますます強まるばかりで。
 膝まづいて熱心に舌を使ってくるその表情を見下ろし宍戸はかぶりを振った。
「………長…太、郎……っ…」
「、はい…?」
「も……いい、…っ、も、ゃ…っめ」
「……この後は……宍戸さん…きついだけなんだよ。だから、もう少しね…」
「…もぉ、いいって、…言っ、てんだろ……っ」
「だからね……宍戸さん……」
 困ったような声は下から聞こえてくるばかりで、宍戸はどうしたって鳳がそこから離れないので、結局片手で鳳の肩を押し出し、もう片方の手は鳳の口腔に濡らされた自分に触れ、とにかくその唇から引き剥がす。
 どこから奪い返したのかを物語るような状態のものに自ら触れて、神経が焼ききれそうになっている宍戸は、それを至近距離から見ることになった鳳の息を飲む音を聞いて。
「…………ッ……」
 それまで背にあった壁に、今度は正面から手のひらやこめかみを押さえつけられた。
 腰が浮き上がりそうなほど強く後ろに引かれる。
 宍戸で濡れた鳳の指が、これから鳳が行こうとする道行きを宍戸に知らしめる。
 いつその指を退かされたのか宍戸には判らなかった。
 もの凄い圧迫感に声を詰まらせる。
 少しづつ、でも強く、のみこませようと押し込まれてくるものに、宍戸の両目からは音を立てて涙が落ちた。
「…………苦しいよね…」
「ゥ……、……っ…く」
「……ごめんなさい。判ってた…けど」
 深々とまで行き着いて。
 初めて鳳が口をひらいた。
 耳に直接吹き込まれるように囁かれ、宍戸はかたく閉じた目から尚も涙を落としながら声を振り絞った。
「ごちゃごちゃうるせ…っ……!…」
「…宍戸さん、?」
「べらべら、…余計なこと、くっちゃベる…なら…、今しろ、馬鹿…ッ…」
 そうすれば大丈夫なんだよと宍戸は自分でも何を言っているのか判らないようなことを口走っていた。
 焼切れそうな刺激は強すぎて怖い。
 涙がとまらなくなりそうで怒鳴った。
「…………大好きです。宍戸さん」
「……も……と…」
 宍戸の身体が鳳に大きく突き上げられた。
「ぃ、っ、……、…っ…馬鹿、野郎……ッ…そ、…ちじゃね……、…っ…」
「ひどいなあ」
「…っあ…っぁ…っ…」
「大好き。………大好き。宍戸さん。俺も、もっと欲しい」
「だ、…か…ら、……っ…ち……じゃ、…ね………っ…ァ、っ」
「うん……宍戸さん……」
「……や………も……ちょ…っ……」
 歯の付け根も合わないように、立て続けに強く揺すられた。
 突き上げてくるものに耐え切れず押し出される嬌声は、壁になすりつけられた。
「っ…ぁ…っ」
「宍戸さん」
「も、…や、く……、っ…」
「なんか、も……凄くて…勿体無い……」
「……………る…せ……、…っ…、…ぃ…っ、…っぁ」
 鳳があんまり可愛げに暴走して無茶をし尽くすから、自分の許容範囲を遥かに超えたその状況に、殆ど意識を飛ばしながら宍戸は怒鳴ったり言いつけたり促したりしていて。
 最後はもう何も出来ずに、鳳の暴挙ともいえるような行動に宍戸も溺れきった。







 部員数数百人を誇る氷帝中テニス部の部室は、クラブハウス並みに立派なものだった。
 しかし決して防音加工が施されているわけではないので、例えば外から、部室の壁にぴったり耳を寄せようものなら、多少大きめの声であれば聞き取ることも充分可能だった。
 そこまであからさまではないけれど。
 しかし、部室の外側から寄りかかるようにして、壁に背中を当て座り込んでいるものが数名横に並んでいた。
「…………誰か止めろよ……」
 膝を抱え込んで座る岳人が、ぼそっと呟く。
 こころなしか顔色が青かった。
「言ってる自分がしいや。岳人」
「……っ、だ、だいたい元々侑士が、鳳を煽ったからああなったんだろッ。髪切ってから宍戸が、今までみたいに女受けだけじゃなくて男受けもよくなってるとかなんとか!余計な事言って煽って!おまけにいよいよ今日あたりなんか起きるぞって、ここに集合かけたのも侑士じゃないか!」
「……お前らまでうるせえっての。耐えられないならジロー見習って寝ときゃいいだろ」
「ジローを見習って寝ろって普通それって無理じゃん?! 何だよ滝、何ひとりで余裕かましてんだよ!」
「誰が余裕だっての。こんな濃いーの聞かされて」
 滝ががっくりと肩を落として言う。
 部室の外には3年生を中心とした氷帝中のテニス部員達が声をひそめつつ言い争っていた。
「…………もう面倒だから跡部を早く連れてきちゃえよ。なんで跡部呼ばなかったんだよ忍足」
「呼びに行ったけどおらんかったよ」
「もー樺地見張りにおいてって俺達帰ろうよー」
「樺地粗末にすると景ちゃんにしばかられるでぇ?」
 そんな風に。
 頭を抱えたり、笑うしかなかったり、眠るしかなかったり。
 テンションが上がったり、達観するしかなかったり、やたら怒りっぽくなってしまったり。
 そんな見張り達を実は大勢従えていると、知らないままの二人は今は静かになった部室内で少々甘口の可愛らしげな言い争いを繰り広げているのだった。







 氷帝中に、跡部部隊以外の部隊が発生してしまった、とある日の出来事である。
 跡部部隊は自主的に跡部に魂捧げていますが、今ここで生まれた部隊は、衝撃に無理矢理魂を抜かれてしまい、燃え尽きた哀れな被害者達が、発足せざるを得なかった闇部隊と化していた。
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