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How did you feel at your first kiss?
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 圧迫感をはらんだまま、蠕動し出しているのは観月だ。
 赤澤に食い入るように見据えられながら、涙と、あえかな呼気と、震えや熱を帯びた小さな声を洩らす。
 手のひらと手のひらを一部の隙間もなく重ねた上で絡めとられた指で、赤澤の手の甲に縋り、爪を立てる。
 強張る身体は尚募る緊張と唐突な弛緩とを繰り返した。
「赤澤……、……」
「………大丈夫だ。待ってる」
 欲望に切羽詰ったような息を洩らしているのに、赤澤の唇はそっと観月の目元の端に落ちてきた。
「観月」
 好きだと呟くように言って、淡く微笑むから。
 繋ぎとめられていない方の手を観月は必死で伸ばした。
 汗の落ちる赤澤のこめかみに。
 指先は、観月自身が呆れる程に震えていた。
 熱い汗がその指の先に触れて、観月はまた少し泣いた。
「観月?」
 触れ合わせている肌も、息も、汗も、全てが熱い。
 観月を圧し拓いて、観月を抱き締めて、観月だけを見ている赤澤に。
 もう、何なんだこの男はと観月は胸が押し潰されそうになる。
 力づくなのに優しい。
 余裕があるようで切羽詰っていた。
 甘ったるくて焦れてもいる。
 観月だけを見つめている。
 観月だけしか見ていない。
 そんな事あっていい筈ない。
「……赤澤…」
「何だ?……」
 赤澤の両手に頬を包れ、骨ばった指の先に眦を拭われる。
 慰めるような、いたわるような仕草に。
 凪ぐ気持ちと焦れる気持ちが沸き起こる。
「………なにを……言わせたいんですか…あなたは…」
 責めるように言った言葉は泣き濡れて弱々しくなってしまった。
 顔を背けようとすれば、自然と赤澤の手のひらに自分の方から頬を寄せる仕草になってしまって、観月はますます追い詰められる。
「……観月…」
 しかし濡れた頬にやわらかいキスが押し当てられて、身体の奥が慎重に揺すられれば、観月は赤澤の背に取り縋るように腕を伸ばした。
「………、…っ……」
 観月の唇が触れた赤澤の肩は、熱くて、なめらかに硬かった。
 日に焼けた太陽の匂いがする。
「ん、…っ…、……」
「……殴れよ…?」
「な…に…、……?…」
「嫌だったり、痛かったりしたらちゃんと」
「………………」
「言葉に出すのが嫌でも、殴って止めるくらいはしてくれ」
「……れるわけ、ないでしょう……!」
 そんな事を真顔で危惧する男の事が、いったいどれだけ好きでいると思っているのか。
 両腕でかき抱くように抱き締めている赤澤にこそ、欲しいなら欲しいでちゃんと、言葉で言うなり態度に出すなりして欲しがれと願う。
「僕にそんな真似……させる気でいるんですか」
「……泣くなって」
「誰が、泣かせて…、…」
「俺だ。………俺だよ。判ってる。何をどうやっても泣かせちまうんだ。お前の事」
「赤澤…」
「お前が可哀相で、可愛くて、自分で自分がどうしようもないって思うけどな……」
 どこか仄かに自嘲を残したまま、好きだ、と掠れる声で繰り返され、幾度も幾度も請われるように囁かれて、観月の中で感情が揺れる。
 気持ちの揺らぎは招待の判らないうねりを呼んで、体内に含まされている赤澤に観月の方から関わっていくような動きを呼んだ。
「……っ…ぅ…」
「…、…バカ……お前…」
 息を詰めた赤澤に、珍しくなじるような言い方をされても観月は何も苛立たない。
 羞恥ついでにまた少し泣いて、焦った声を出す赤澤の、欲に濡れていく表情をじっと見上げた。
「おい」
「………っぁ…」
「観月…?……おい、大丈夫か」
「も、…しつこい…っ…」
「しつこいってお前……泣くなよ」
「……いい加減慣れろ…っ……」
「慣れねえよ。何回見たって可哀相だわ可愛いわ…お前は何なんだよ、ほんと」
 八つ当たりじみた言葉が耳に甘い。
 広い背中に腕を回せば赤澤が上体を屈めてきた。
 すでに体内に深くのんでいる熱量が、その動きに伴って、観月の内部で伸び上がってくるような触感で観月の神経を焦がす。
「ふ……ぁ…っ……」
「……、……どうなってんだよ…マジで…」
 くそ、と耳元で毒づかれても嬉しくて。
 観月は上擦った涙声で赤澤の名を繰り返し呼んだ。
 拓かれた箇所から絶え間なく送り込まれてくる刺激は、赤澤が動き出す前から観月が感じていたもので。
「ん…っ…、ん、っ…ぁ…、」
 それが実際にゆっくりではあるが揺さぶられ出してしまうといよいよ誤魔化しきれなくなった。
 観月の濡れた声を探るようにしながら、赤澤は身体を進めてくる。
 退いては、また、奥深くに忍んでくる。
 食い返し、繰り返し、そしてとうとう、こんな中まで。
 入ってきた。
「………っ、ひ…」
「観月」
「…、く…ぅ………」
 熱い息と共に首筋を甘く食まれて。
 とける、と苦しがるような、それでいて低い、甘い、囁く声に観月の方こそそうなった。
 気持ちが溢れて涙になる。
 声になる。
 観月が嗚咽交じりに赤澤の名を呼べば、そんな自分に執着した優しい手で頭を撫でられて、キスを重ねられ、身体を揺さぶられたからおかしくならない筈がない。
 シーツをかきむしろうとした手を再び奪われ、強く指を絡めとられた。
 密着した手のひらの熱さに浮かされる。
 組み合わせた指と指で、互いへと縋りつく。
「観月」
 浅いキスが、唇に触れる。
 幾度も。
 荒いでいる呼気とは裏腹に、赤澤の所作は丁寧で優しかった。
 執着のように繰り返されるキスに観月の啜り泣きはますます止まらなくなってしまう。
 身体の中に、恐らくはひどい我慢を強いられている熱がある。
 切ないくらいに優しいキスの感触と、同じ人間のものとは思えない猛々しい気配がする。
 なんてばかなんだと、観月は眦から涙を零しながら、両膝で赤澤の腰を挟みつけ観月の方からキスを返した。
「み、……」
 息をのんだ赤澤の唇を舌先でそっと舐める。
 両足を、その腰にいっそ絡みつかせてしまおうかと、泣き濡れた目で赤澤を強く見据える。
「……っ…ァ、…ぁ…、っ…ァ」
「………、……悪い……」
「ん…、っ…ぅ……く…、…ぅ」
「マジで……やばい…、…」
 赤澤の長い髪が観月の首筋を擽って、ものすごい力で抱きすくめられながら、赤澤が送り込んでくる律動の激しさに観月はしゃくりあげて泣いた。
 両手で、きつく、赤澤の背を抱き込みながら。
 怖いくらいに荒い腰の動きに観月の身体はシーツの上をずれていき、その度に赤澤の強い腕で引き戻された。
「…ひ……、…っ…ぁ、っ」
「観月」
「ン……、…ぁ…、…っ…ァ」
 噛み付くように口付けられ、赤澤の動きが更に加速して、それはいっそ暴挙と言っていいのかもしれなかった。
 けれど観月が今ここで泣くのは、それが、少しも嫌でないからだ。
 手加減も何も出来なくて、それを苦しがりながらも、自分の中で快感を貪っている赤澤が、観月に堪らない安堵感と陶酔感を植えつけてくる。
 我を忘れるくらい、欲しがればいい。
 優しい、優しい、男だから。
 勝手なようで、無茶なようで、しかし何があっても観月を絶対に大切にしている男だから。
「……好き、だ」
「………ッ……ぅ」
「好きだ。観月」
 低い声で、熱に浮かされているような、しかし真摯で切羽詰った声音で、赤澤は観月にそう繰り返した。
「好きだ……」
「…、……ぅ………ぁ」
「観月」
 赤澤は声でも観月をおかしくする。
 言葉で観月の頭の中まで愛撫してくる。
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