How did you feel at your first kiss?
走っていると雨が降り出した。
目的地まではあと少し。
神尾はスピードを上げた。
いきなり辺り一面に轟く大きな音で雷が鳴った。
勢いづいた雨粒は大きい。
「やっべ……」
これは急がないと。
これよりも、もっともっと強烈な雷を食らう羽目になる。
案の定、神尾の考え通り。
神尾を一喝した雷の剣幕たるやそれは凄まじかった。
「そんな怒鳴んなって。跡部」
冗談でなく思わず耳を押さえてしまった程の怒声だ。
ずぶ濡れですみませんと結構真面目に言った神尾は、さすがにこれは人様の家を訪れる恰好ではないと我が身を省みている。
びしょびしょと言うよりも、もはやぐちゃぐちゃだ。
「……ええと…今日は帰った方がいい…?」
顔を合わせるなりこの馬鹿!と神尾を怒鳴りつけた跡部は、この神尾の問いかけに一層険しい顔をした。
はっきり言って恐ろしい形相だった。
神尾としては、この有様で家に上がっては室内を濡らして汚す事は判りきっていたので言ったまでなのだが、涼しそうな亜麻布のシャツを羽織った跡部は物凄い力で神尾の二の腕を掴み、引き寄せてきて、息も止めるような深い口付けをしかけてきた。
「…………、…ん」
「……何で俺が怒るのかも判らねえのか。お前は」
「…あと…べ…?」
ずぶ濡れの神尾を、躊躇いもなく身包み抱き締めて。
同じように濡れていきながら跡部は低く囁いてくる。
吐息程度のささやきは神尾の唇にかるくぶつかって。
跡部だなあと神尾は思った。
三週間ぶりの。
「………跡部」
神尾も両腕で跡部の背を抱いた。
見目はすらりとしている跡部の身体は、しなやかでいて、しかし固い。
ひどく熱い。
「…………風邪ひく前にシャワー浴びろ」
「うん……」
跡部の口調は平静で、でも肌は熱くて、返事をしてからぽつりと神尾がそれを告げれば即答で返された。
「お前が冷えてんだよ」
「………そう…なのか…?」
「神尾」
跡部は多分、早く神尾にシャワーを浴びせさせたいようだった。
神尾もそうと気づいていたが、こうして近くに居て抱き締めあってしまうと、どうしようもなく離れがたくなってしまった。
促しでまた跡部から名前を呼ばれた神尾は、取り立てて意味のない、ふと思い当たった事を口にする。
「……六月って、何でこんなに雨が降るのに水が無い月で水無月なんだろ…」
「神尾……」
「変じゃね?」
跡部は一瞬また微かな怒気を滲ませてきた。
けれど神尾は、判れよ、と念じてぎゅっと跡部の背のシャツを掴み締める。
判れ。
こうしていたいのだ。
「……………」
跡部がまた神尾の唇を塞いできた。
唇で。
キスは今度も強くて、深くて、甘ったるい。
「水が無い月って意味じゃねえよ」
「……ちがうのか…?」
「無しって漢字は当て字だ。ついでに『な』は『の』って意味の連体助詞だから、六月の意味は『水の月』だ」
「へえ……」
「日照りが続いて水無しになるから水無月って説もあるがな……」
「……………」
六月にはいろいろ意味合いがあるようなので。
神尾は六月の中にいる自分の、渇きと潤いとを否が応でも体感した。
「跡部と会えないでいたから、俺もずーっと水無しの月だったぜ」
「……………」
「でも今は水の月だな」
たっぷりと、溢れかえる程に。
こうして抱き締め合える跡部がここにいる。
「渇いて……」
「………跡部…?」
「餓えてんのは…」
俺だ、と。
跡部の言葉ごとキスをされた。
「……ふ……、…」
神尾は跡部の舌先を口腔に含んで。
沁みこむ様に伝わってくる跡部の存在に。
思考や体内がゆったりと濡れていくのを感じていた。
激しいこの夕立のような雨よりも。
短い時間で、遠慮の無さで。
欲しがられるのが堪らなかった。
目的地まではあと少し。
神尾はスピードを上げた。
いきなり辺り一面に轟く大きな音で雷が鳴った。
勢いづいた雨粒は大きい。
「やっべ……」
これは急がないと。
これよりも、もっともっと強烈な雷を食らう羽目になる。
案の定、神尾の考え通り。
神尾を一喝した雷の剣幕たるやそれは凄まじかった。
「そんな怒鳴んなって。跡部」
冗談でなく思わず耳を押さえてしまった程の怒声だ。
ずぶ濡れですみませんと結構真面目に言った神尾は、さすがにこれは人様の家を訪れる恰好ではないと我が身を省みている。
びしょびしょと言うよりも、もはやぐちゃぐちゃだ。
「……ええと…今日は帰った方がいい…?」
顔を合わせるなりこの馬鹿!と神尾を怒鳴りつけた跡部は、この神尾の問いかけに一層険しい顔をした。
はっきり言って恐ろしい形相だった。
神尾としては、この有様で家に上がっては室内を濡らして汚す事は判りきっていたので言ったまでなのだが、涼しそうな亜麻布のシャツを羽織った跡部は物凄い力で神尾の二の腕を掴み、引き寄せてきて、息も止めるような深い口付けをしかけてきた。
「…………、…ん」
「……何で俺が怒るのかも判らねえのか。お前は」
「…あと…べ…?」
ずぶ濡れの神尾を、躊躇いもなく身包み抱き締めて。
同じように濡れていきながら跡部は低く囁いてくる。
吐息程度のささやきは神尾の唇にかるくぶつかって。
跡部だなあと神尾は思った。
三週間ぶりの。
「………跡部」
神尾も両腕で跡部の背を抱いた。
見目はすらりとしている跡部の身体は、しなやかでいて、しかし固い。
ひどく熱い。
「…………風邪ひく前にシャワー浴びろ」
「うん……」
跡部の口調は平静で、でも肌は熱くて、返事をしてからぽつりと神尾がそれを告げれば即答で返された。
「お前が冷えてんだよ」
「………そう…なのか…?」
「神尾」
跡部は多分、早く神尾にシャワーを浴びせさせたいようだった。
神尾もそうと気づいていたが、こうして近くに居て抱き締めあってしまうと、どうしようもなく離れがたくなってしまった。
促しでまた跡部から名前を呼ばれた神尾は、取り立てて意味のない、ふと思い当たった事を口にする。
「……六月って、何でこんなに雨が降るのに水が無い月で水無月なんだろ…」
「神尾……」
「変じゃね?」
跡部は一瞬また微かな怒気を滲ませてきた。
けれど神尾は、判れよ、と念じてぎゅっと跡部の背のシャツを掴み締める。
判れ。
こうしていたいのだ。
「……………」
跡部がまた神尾の唇を塞いできた。
唇で。
キスは今度も強くて、深くて、甘ったるい。
「水が無い月って意味じゃねえよ」
「……ちがうのか…?」
「無しって漢字は当て字だ。ついでに『な』は『の』って意味の連体助詞だから、六月の意味は『水の月』だ」
「へえ……」
「日照りが続いて水無しになるから水無月って説もあるがな……」
「……………」
六月にはいろいろ意味合いがあるようなので。
神尾は六月の中にいる自分の、渇きと潤いとを否が応でも体感した。
「跡部と会えないでいたから、俺もずーっと水無しの月だったぜ」
「……………」
「でも今は水の月だな」
たっぷりと、溢れかえる程に。
こうして抱き締め合える跡部がここにいる。
「渇いて……」
「………跡部…?」
「餓えてんのは…」
俺だ、と。
跡部の言葉ごとキスをされた。
「……ふ……、…」
神尾は跡部の舌先を口腔に含んで。
沁みこむ様に伝わってくる跡部の存在に。
思考や体内がゆったりと濡れていくのを感じていた。
激しいこの夕立のような雨よりも。
短い時間で、遠慮の無さで。
欲しがられるのが堪らなかった。
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