How did you feel at your first kiss?
海堂のその異変に気づいたのは、最初に母親で、それと殆ど時を同じくして、乾だった。
「海堂」
「…何っすか」
呼び止められるだけでなく、二の腕もとられた。
乾の手は指が長いだけでなく手のひらも相当大きいので。
あまりにも簡単に海堂の腕は乾の手に包まれる。
「………乾先輩」
「身体のサイズは一緒。だとすると……」
乾のその手で、勝手に自分のサイズを知られているらしい事に海堂は複雑な思いをしながら、ぎこちなく腕を引いた。
乾はすぐに逃がしてくれたが、じっと見つめてくる視線は、ずれなかった。
「海堂、最近服の買い方、変えた?」
「………………」
やっぱり、と海堂は思った。
今朝方母親にも同じ事を言われたのだ。
そしてそれは、誰に言われずとも海堂自身が最もよく判っている事だった。
「手足に合わせると、服のサイズが極端に大きくなるの嫌がってただろ?」
手足の長い海堂は、乾が指摘するように、服選びが難しい。
胸元や腰周りが不恰好に泳ぐくらいならと、丈を無視する事が多いのだ。
結果、袖や裾が足りない服が多い。
どうせ成長期だと海堂は構わずにいるのだが、それが最近、海堂は服を買う度、失敗する。
私服であっても制服のシャツであっても、何故だかいつも丈が充分足りてしまう。
つまり今までは避けていた、胸や腰周りにゆとりがありすぎる服を買ってしまう。
それも、時々は更に、全然サイズの違うような服をもだ。
今朝洗濯物を干す母親に言われた矢先、今度は学校に来て乾に指摘された。
「………………」
「………ん?」
顎を引くようにして乾を見上げた海堂に、乾は僅かに首を傾けてくる。
促されるような小さな問いかけに、海堂は低い声で言った。
「…………あんたのせいだ」
「俺? 何で?」
「………………」
乾は心底不思議そうな顔をした。
もうこれ以上言えるかと、海堂は後退りしかけた所をまた乾の腕に捉まった。
「おっと……」
「…………、…」
「何で俺のせい?」
優しげに笑う乾は、今度は海堂が身を捩っても、逃がしてはくれなかった。
何かに興味をそそられた時の乾は、普段よりも少し強引になる。
「海堂?」
答えるまで乾は自分を離さない気だと悟って。
うっかり口を滑らせた己を海堂は自責したけれど。
こうなったらもう仕方ない。
「………服、広げてみて」
その時に。
「これくらいだって」
頭で。
「思って」
「…海堂?」
「肩の幅とか、頭があんたのサイズで覚えちまってて」
だから失敗する。
ああこれくらいだ、と。
肩幅だとか。
服を広げてみた手が覚えているのは。
頭が判断するのは。
いつも乾の。
「……、…っ…に…すんですか……!」
いきなり身包み抱き込まれて海堂は思わず叫んだ。
耳元で、何だか気恥ずかしくなる甘い笑い声が聞こえてくる。
「照れ隠し」
「……っ……、」
甘ったるい照れは、その低い声での囁きと供に、海堂にも伝染してきてしまった。
離せととにかく怒鳴ってみても。
何だか妙に力ない言い方になってしまって、却って居たたまれない。
服のサイズを間違って買い続けてしまう事も、それを返品や交換する事もなく、着たままでいる事も。
何もかもが海堂にしてみれば恥ずかしいというのに、乾が嬉しがっている気配ばかりが伝わってくるから。
海堂もまた、照れ隠しの所存で。
抱き締められるままに乾の胸元に顔を伏せるのだった。
「海堂」
「…何っすか」
呼び止められるだけでなく、二の腕もとられた。
乾の手は指が長いだけでなく手のひらも相当大きいので。
あまりにも簡単に海堂の腕は乾の手に包まれる。
「………乾先輩」
「身体のサイズは一緒。だとすると……」
乾のその手で、勝手に自分のサイズを知られているらしい事に海堂は複雑な思いをしながら、ぎこちなく腕を引いた。
乾はすぐに逃がしてくれたが、じっと見つめてくる視線は、ずれなかった。
「海堂、最近服の買い方、変えた?」
「………………」
やっぱり、と海堂は思った。
今朝方母親にも同じ事を言われたのだ。
そしてそれは、誰に言われずとも海堂自身が最もよく判っている事だった。
「手足に合わせると、服のサイズが極端に大きくなるの嫌がってただろ?」
手足の長い海堂は、乾が指摘するように、服選びが難しい。
胸元や腰周りが不恰好に泳ぐくらいならと、丈を無視する事が多いのだ。
結果、袖や裾が足りない服が多い。
どうせ成長期だと海堂は構わずにいるのだが、それが最近、海堂は服を買う度、失敗する。
私服であっても制服のシャツであっても、何故だかいつも丈が充分足りてしまう。
つまり今までは避けていた、胸や腰周りにゆとりがありすぎる服を買ってしまう。
それも、時々は更に、全然サイズの違うような服をもだ。
今朝洗濯物を干す母親に言われた矢先、今度は学校に来て乾に指摘された。
「………………」
「………ん?」
顎を引くようにして乾を見上げた海堂に、乾は僅かに首を傾けてくる。
促されるような小さな問いかけに、海堂は低い声で言った。
「…………あんたのせいだ」
「俺? 何で?」
「………………」
乾は心底不思議そうな顔をした。
もうこれ以上言えるかと、海堂は後退りしかけた所をまた乾の腕に捉まった。
「おっと……」
「…………、…」
「何で俺のせい?」
優しげに笑う乾は、今度は海堂が身を捩っても、逃がしてはくれなかった。
何かに興味をそそられた時の乾は、普段よりも少し強引になる。
「海堂?」
答えるまで乾は自分を離さない気だと悟って。
うっかり口を滑らせた己を海堂は自責したけれど。
こうなったらもう仕方ない。
「………服、広げてみて」
その時に。
「これくらいだって」
頭で。
「思って」
「…海堂?」
「肩の幅とか、頭があんたのサイズで覚えちまってて」
だから失敗する。
ああこれくらいだ、と。
肩幅だとか。
服を広げてみた手が覚えているのは。
頭が判断するのは。
いつも乾の。
「……、…っ…に…すんですか……!」
いきなり身包み抱き込まれて海堂は思わず叫んだ。
耳元で、何だか気恥ずかしくなる甘い笑い声が聞こえてくる。
「照れ隠し」
「……っ……、」
甘ったるい照れは、その低い声での囁きと供に、海堂にも伝染してきてしまった。
離せととにかく怒鳴ってみても。
何だか妙に力ない言い方になってしまって、却って居たたまれない。
服のサイズを間違って買い続けてしまう事も、それを返品や交換する事もなく、着たままでいる事も。
何もかもが海堂にしてみれば恥ずかしいというのに、乾が嬉しがっている気配ばかりが伝わってくるから。
海堂もまた、照れ隠しの所存で。
抱き締められるままに乾の胸元に顔を伏せるのだった。
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