How did you feel at your first kiss?
海堂には、口に出せない事がたくさんあって、それらは例えば、弱音だとか諦めだとか泣き言だとかいうものだった。
どれもが海堂の好きでない行動や感情で、そして同時にそれらはいつでも、海堂の手の届く所にあったりもした。
だからこそ絶対につかまえない。
絶対に認めない。
そんな暇があったら、もっとするべき事がある筈だと、海堂は信じていた。
それでも時折、自分が負けない為の術を見つけられない事もあって。
そういう時に、ひどく上手な方法で手を貸してくれたのが乾だった。
海堂には物慣れない、自分自身の深い所まで曝け出すような乾との付き合いが、苦痛であった事は一度もない。
それはきっと、様々な可能性を示唆してくれる乾の、言いなりになるのではなくて。
乾のくれる手段から、自分で考えて選び信じる事が出来るからだと海堂は思っていた。
テニスが強くなりたくて。
そんな海堂にその為の手段を教えて、そして選ばせてくれたのは乾だった。
「……海堂? 大丈夫か?」
「………………」
そんなテニスと、何だか同じだと海堂が思ったのが、乾との付き合いの変化で。
テニスがもっと強くなりたいと思ったように、乾の事ももっと欲した。
テニスの時と同じように、乾はそんな海堂に、どうするといいのかを教えてくれた。
とても生真面目に、海堂にもよく判る言い方で、乾に好きだと告げられて初めて、海堂も自分の感情に正しい名前をつけられたのだ。
そして今、海堂の目の前。
優しくて長いキスをそっとほどいた乾が、海堂の様子を真剣に伺ってくる。
海堂の体内から退いた乾に、宥めるようなキスをされながら、落ち着いてきてはいるものの、海堂の身体は乱されたまま、浅い呼吸に蠢き、ひききらない汗に濡れている。
テニスへの熱と、乾への熱は、最初はひどく似通っていると海堂は思った。
だが徐々に、同じではないという事を知るようにもなった。
海堂が、テニスであれば絶対に認めたくないような、弱音や諦めや泣き言といったものが、何故か乾といるこういう時には、ぽろりといつの間にか零れ落ちてしまうのだ。
「海堂」
「………おかしく…なる…」
「…ん?」
「……あんたに…され、ると…、…どんどんおかしくなる…」
息を乱しながら、涙まじりのこんな言葉。
泣き言でなくて何なのだと海堂は思う。
でも、貪られるキスに喉を鳴らし、揺すられる動きに声を嗄らし、名を呼ばれる声に身体を震わせる、そういう事がどんどんひどくなる。
自分はおかしいんじゃないかと思うくらい。
乾が好きで、何をされても、頭も身体も乱されていくばかりだ。
「当たり前だろ」
「………………」
吐息を零すように乾が笑った。
困惑する海堂を腕の中に閉じ込めるよう組み敷いて、頬に口付けてくる。
無き濡れた海堂の睫毛の涙を払うよう、乾の睫毛も瞬きと供に触れてくる。
あんなに卑猥に動いていたのが信じられないくらい。
それはきっとお互い様なのだろうと海堂は思ったが、それでも。
こうして静かに肌を寄せている自分達を、けだるい身体でぼんやり感じ入りながら、海堂は乾を見つめた。
「海堂が、よくって、頭も身体もおかしくなるって思うように、やってるんだから」
「………………」
「本気でおかしくなるように、本気で抱いてるんだから当たり前なんだよ」
「………そうなん…すか…?」
「そうなんです」
「……俺も、そういう風に考えて、したら……乾先輩も本気でおかしくなるんですか」
「これ以上おかしくならないって。俺は」
面食らったような顔をした後、乾は海堂を抱き込むようにして隣に横たわった。
屈託なく笑い出した乾に肩を抱かれたまま、海堂に睡魔が差し込んでくる。
「…………乾先輩は………余裕があるように…見えるんですけど…」
「余裕ある奴があんな真似するか?」
身体の際どい箇所を幾つか。
大きな手のひらに触れられる感触がして、海堂の全身に震えが走るけれども。
乾の声は、海堂の耳に、何だか愕然としているように聞こえたのだけれども。
海堂の睡魔もまた一層濃くなってしまって。
もう確かめる余力も何もなく、海堂は乾の胸元に、顔を伏せて寝入ってしまった。
どれもが海堂の好きでない行動や感情で、そして同時にそれらはいつでも、海堂の手の届く所にあったりもした。
だからこそ絶対につかまえない。
絶対に認めない。
そんな暇があったら、もっとするべき事がある筈だと、海堂は信じていた。
それでも時折、自分が負けない為の術を見つけられない事もあって。
そういう時に、ひどく上手な方法で手を貸してくれたのが乾だった。
海堂には物慣れない、自分自身の深い所まで曝け出すような乾との付き合いが、苦痛であった事は一度もない。
それはきっと、様々な可能性を示唆してくれる乾の、言いなりになるのではなくて。
乾のくれる手段から、自分で考えて選び信じる事が出来るからだと海堂は思っていた。
テニスが強くなりたくて。
そんな海堂にその為の手段を教えて、そして選ばせてくれたのは乾だった。
「……海堂? 大丈夫か?」
「………………」
そんなテニスと、何だか同じだと海堂が思ったのが、乾との付き合いの変化で。
テニスがもっと強くなりたいと思ったように、乾の事ももっと欲した。
テニスの時と同じように、乾はそんな海堂に、どうするといいのかを教えてくれた。
とても生真面目に、海堂にもよく判る言い方で、乾に好きだと告げられて初めて、海堂も自分の感情に正しい名前をつけられたのだ。
そして今、海堂の目の前。
優しくて長いキスをそっとほどいた乾が、海堂の様子を真剣に伺ってくる。
海堂の体内から退いた乾に、宥めるようなキスをされながら、落ち着いてきてはいるものの、海堂の身体は乱されたまま、浅い呼吸に蠢き、ひききらない汗に濡れている。
テニスへの熱と、乾への熱は、最初はひどく似通っていると海堂は思った。
だが徐々に、同じではないという事を知るようにもなった。
海堂が、テニスであれば絶対に認めたくないような、弱音や諦めや泣き言といったものが、何故か乾といるこういう時には、ぽろりといつの間にか零れ落ちてしまうのだ。
「海堂」
「………おかしく…なる…」
「…ん?」
「……あんたに…され、ると…、…どんどんおかしくなる…」
息を乱しながら、涙まじりのこんな言葉。
泣き言でなくて何なのだと海堂は思う。
でも、貪られるキスに喉を鳴らし、揺すられる動きに声を嗄らし、名を呼ばれる声に身体を震わせる、そういう事がどんどんひどくなる。
自分はおかしいんじゃないかと思うくらい。
乾が好きで、何をされても、頭も身体も乱されていくばかりだ。
「当たり前だろ」
「………………」
吐息を零すように乾が笑った。
困惑する海堂を腕の中に閉じ込めるよう組み敷いて、頬に口付けてくる。
無き濡れた海堂の睫毛の涙を払うよう、乾の睫毛も瞬きと供に触れてくる。
あんなに卑猥に動いていたのが信じられないくらい。
それはきっとお互い様なのだろうと海堂は思ったが、それでも。
こうして静かに肌を寄せている自分達を、けだるい身体でぼんやり感じ入りながら、海堂は乾を見つめた。
「海堂が、よくって、頭も身体もおかしくなるって思うように、やってるんだから」
「………………」
「本気でおかしくなるように、本気で抱いてるんだから当たり前なんだよ」
「………そうなん…すか…?」
「そうなんです」
「……俺も、そういう風に考えて、したら……乾先輩も本気でおかしくなるんですか」
「これ以上おかしくならないって。俺は」
面食らったような顔をした後、乾は海堂を抱き込むようにして隣に横たわった。
屈託なく笑い出した乾に肩を抱かれたまま、海堂に睡魔が差し込んでくる。
「…………乾先輩は………余裕があるように…見えるんですけど…」
「余裕ある奴があんな真似するか?」
身体の際どい箇所を幾つか。
大きな手のひらに触れられる感触がして、海堂の全身に震えが走るけれども。
乾の声は、海堂の耳に、何だか愕然としているように聞こえたのだけれども。
海堂の睡魔もまた一層濃くなってしまって。
もう確かめる余力も何もなく、海堂は乾の胸元に、顔を伏せて寝入ってしまった。
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