How did you feel at your first kiss?
誰かに起こされたとか、物音がしたとか、そういう理由は何もなくただ目が覚めて。
窓の外が不思議な色味を帯びているのに気づいた神尾は、そっとベッドから身体を起こした。
「………………」
同じベッドで、横向きになって寝入っている跡部の顔に。
見つめれば今更のようにドキドキして、神尾は慎重にベッドから降りた。
跡部の部屋は、壁際の大きな窓を開けた先のバルコニーから庭へと出られるようになっている。
音をたてないように窓を開けて、神尾は、ほの暗いバルコニーに出た。
夜明けにもまだ少し早い。
紫色の見慣れぬ色の空を見上げて、神尾は冷たいながらも春先の気配をはらむ夜と朝の合間の空気を吸い込んだ。
そんな神尾にいきなりバサッと音をたてて背後からガウンが肩にかけられる。
「あ、…とべ?…」
「風邪ひくぞ。バァカ」
結局起こしてしまったかと、神尾が複雑そうに背後を振り仰ぐと、口調ほどは不機嫌そうではないものの、跡部は眉根を寄せて神尾を見下ろしていた。
「跡…、…」
後ろから伸びてきた手に顎を掴まれ、回り込んできた跡部の唇で神尾の唇が塞がれる。
窮屈な角度で重なった唇は、舌を絡ませあうことはしなくても、唇の表面がゆがむように合わせられていやに気恥ずかしい。
「……っ……ん」
「……………」
「…ぅ………、」
「………寝らんねえのか」
寝かせてやろうか?と卑猥に腿を辿られて神尾は赤くなった。
「…………っ、ゃ」
跡部の笑みを含んだ吐息が耳元に当たって、からかわれていると判れば神尾も意地になる。
本当は、こうやって抱き締められるのはすごくすごく好きなのだけれど。
「離せ…ってば…!……」
「お前が俺より先に目が覚めるなんて初めてじゃねえか?」
余裕じゃねえの、と首筋に唇を這わされて神尾は身体を強張らせる。
「………跡部」
「………………」
胸の前。
跡部の腕に、両手でぎゅっとしがみついた神尾は、声を振り絞って跡部を呼んだ。
怖い訳ではなく、嫌な訳でもなく、寝起き様には刺激が強すぎると伝えたくて跡部の腕を胸元で抱え込む。
「…………無理矢理やるわけねえだろ」
どこか憮然とした跡部の物言いに、神尾はかぶりを振って、違うのだと訴えた。
「抜け出してんじゃねえよ」
「……え?」
続けざまの舌打ち交じりの跡部の声に神尾は息を詰まらせる。
跡部の腕を抱いたまま。
ぎこちなく振り返ると。
寝乱れた前髪の隙間から色の薄い跡部の瞳が細められているのが見えた。
その目の色に、まさかこれだけの事で自分は跡部を驚かせたのかと狼狽する。
「跡部……?」
肩に羽織ったガウンごと背後から抱き締められて、神尾の視界から跡部は消えたけれど。
神尾は小さな声で言った。
「………空が…見たことない色してたから。ちょっと出てみただけだよ」
「ドーンパープルだろ」
「…なにそれ?」
「明け初めの空の色。産まれてすぐの赤ん坊も、最初はこの色なんだとよ」
自然の始まりの色なのだと跡部は言った。
「へえ……」
どこか不可思議な色。
生まれたての色。
それを空いっぱいに、神尾は跡部に抱き取られながら見上げた。
まだどこか肌寒く感じていた外気が、今は背中から滲むように温かくて、何も気にならない。
身包み神尾を抱きこむように回されている、跡部の腕の強い感触に。
もう少しこうしていたくなって。
神尾は喉の下辺りにあるその腕を、両手で掴んだ。
すると微かに跡部が笑ったから。
神尾の気持ちは正しく温かく跡部へと伝わったようだった。
窓の外が不思議な色味を帯びているのに気づいた神尾は、そっとベッドから身体を起こした。
「………………」
同じベッドで、横向きになって寝入っている跡部の顔に。
見つめれば今更のようにドキドキして、神尾は慎重にベッドから降りた。
跡部の部屋は、壁際の大きな窓を開けた先のバルコニーから庭へと出られるようになっている。
音をたてないように窓を開けて、神尾は、ほの暗いバルコニーに出た。
夜明けにもまだ少し早い。
紫色の見慣れぬ色の空を見上げて、神尾は冷たいながらも春先の気配をはらむ夜と朝の合間の空気を吸い込んだ。
そんな神尾にいきなりバサッと音をたてて背後からガウンが肩にかけられる。
「あ、…とべ?…」
「風邪ひくぞ。バァカ」
結局起こしてしまったかと、神尾が複雑そうに背後を振り仰ぐと、口調ほどは不機嫌そうではないものの、跡部は眉根を寄せて神尾を見下ろしていた。
「跡…、…」
後ろから伸びてきた手に顎を掴まれ、回り込んできた跡部の唇で神尾の唇が塞がれる。
窮屈な角度で重なった唇は、舌を絡ませあうことはしなくても、唇の表面がゆがむように合わせられていやに気恥ずかしい。
「……っ……ん」
「……………」
「…ぅ………、」
「………寝らんねえのか」
寝かせてやろうか?と卑猥に腿を辿られて神尾は赤くなった。
「…………っ、ゃ」
跡部の笑みを含んだ吐息が耳元に当たって、からかわれていると判れば神尾も意地になる。
本当は、こうやって抱き締められるのはすごくすごく好きなのだけれど。
「離せ…ってば…!……」
「お前が俺より先に目が覚めるなんて初めてじゃねえか?」
余裕じゃねえの、と首筋に唇を這わされて神尾は身体を強張らせる。
「………跡部」
「………………」
胸の前。
跡部の腕に、両手でぎゅっとしがみついた神尾は、声を振り絞って跡部を呼んだ。
怖い訳ではなく、嫌な訳でもなく、寝起き様には刺激が強すぎると伝えたくて跡部の腕を胸元で抱え込む。
「…………無理矢理やるわけねえだろ」
どこか憮然とした跡部の物言いに、神尾はかぶりを振って、違うのだと訴えた。
「抜け出してんじゃねえよ」
「……え?」
続けざまの舌打ち交じりの跡部の声に神尾は息を詰まらせる。
跡部の腕を抱いたまま。
ぎこちなく振り返ると。
寝乱れた前髪の隙間から色の薄い跡部の瞳が細められているのが見えた。
その目の色に、まさかこれだけの事で自分は跡部を驚かせたのかと狼狽する。
「跡部……?」
肩に羽織ったガウンごと背後から抱き締められて、神尾の視界から跡部は消えたけれど。
神尾は小さな声で言った。
「………空が…見たことない色してたから。ちょっと出てみただけだよ」
「ドーンパープルだろ」
「…なにそれ?」
「明け初めの空の色。産まれてすぐの赤ん坊も、最初はこの色なんだとよ」
自然の始まりの色なのだと跡部は言った。
「へえ……」
どこか不可思議な色。
生まれたての色。
それを空いっぱいに、神尾は跡部に抱き取られながら見上げた。
まだどこか肌寒く感じていた外気が、今は背中から滲むように温かくて、何も気にならない。
身包み神尾を抱きこむように回されている、跡部の腕の強い感触に。
もう少しこうしていたくなって。
神尾は喉の下辺りにあるその腕を、両手で掴んだ。
すると微かに跡部が笑ったから。
神尾の気持ちは正しく温かく跡部へと伝わったようだった。
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