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How did you feel at your first kiss?
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 剥き出しになっている肩を、乾の手のひらに包まれた。
 海堂の目線の先にある乾の手の甲は骨ばっている。
 海堂の肩に触れている乾の手のひらは温かく固かった。
 じんわりと染入るような体温に、もう季節は秋なのだなと海堂は思った。
「……肩冷やす」
「………………」
 乾も同じ事を考えたようで、そう呟くとベッドから出て行こうとする。
 海堂は汗で濡れている乾の背に手を伸ばした。
 指先が触れたか触れないかで乾は振り返る。
 上半身を捩じって屈ませ、まだ荒い呼気を零す海堂の唇に乾はキスを落としてきた。
 含んだ乾の舌もまだ熱かった。
「シャワー浴びられるか」
 キスが解けての問いかけに海堂が頷くと、すぐにまた唇は塞がれた。
「一緒に行くか」
 暫くしての再度の問いかけには首を左右に振ったら、ひとしきり舌で口腔を弄り合うような口付けに長く捕まってしまった。
 時間をかけたキスが、熱っぽい吐息を漏らしてほどける。
「長袖のシャツと、厚手の上掛けと、どっちがいい?」
「………あんたは?」
 唇の触れ合う距離で、乾は小さく笑った。
「俺はどちらかを選んだ海堂で温まる」
「…………ふざけてねえで、あんたもちゃんとしろよ」
「じゃ、両方用意しておく」
 先シャワー浴びてくる、と目元に音をたててキスされて。
 海堂はじわじわと顔の熱を上げた。
 キスなんかもう、どうしようもないくらい繰り返していたのにだ。
 乾がベッドから出て行く背中を今度を見送って、海堂は枕に片頬を埋めた。
 燻る熱がまだ消えないのに、それでも外気の変化を感じ取れるのが不思議だ。
 余韻の色濃い身体は甘ったるく気だるいのに、些細な異変を感じ取る事も出来る。
 海堂は目を閉じた。
「………………」
 じん、と疼く首筋は乾の最後の吐息を埋められた場所。
 頭皮まで痺れる感触は、乾の指が海堂の髪をすきあげていった経路。
 ひりつく脇腹には乾に執拗に残された痕があって、強靭な四肢に取り縋った海堂の指先全てには未だ生々しく乾の肌の感触がある。
 今しがた乾の手に包まれた肩、食い合わせられた唇、吸い込まれた舌先。
 目で見なくても、こんなにも、判る事が多くて、海堂は寧ろほっとする。
 乾の固執が判る。
 自身の身体のあちこちに在る名残で判る。
 海堂は、結果として形になることばかりを追ってしまう自分の傾向を知っていて、でも、全てが形になっているものではないという事を判ってもいた。
 判りづらい、判りにくい、そういうものの方が実際は圧倒的に多いのだ。
 本当は。
「………………」
 頬に当たる感触。
 乾の手のひら。
 海堂が目を開けた。
 乾の手の中で睫毛を、瞼を、引き上げる。
「……眠い?」
「………………」
 名前を呼ぶと起こしてしまうと思ったのだろうか。
 乾の小さな問いかけに、寝てない、と海堂は呟いた。
「…………もったいないって思っただけだ…」
「海堂?…」
「……あんたの感触が…いろんなとこに残ってるから」
 う、と乾が息を詰めたのが手のひらから伝わってきて、海堂は上目に乾を伺い見た。
「………お前な」
「べつに……シャワーくらいで消えるもんでもないですけど……」
 乾は本当に何とも言えないような顔をしていたので、海堂は微かに笑んだ。
「シャワー借ります」
 ゆっくりと起き上がる。
 あっさりと組み敷かれる。
「…………乾先輩…?…」
 何故再びこうなっているのだろう。
 海堂は今日二度目の不思議に思う。
 首筋に乾が顔を埋める。
 熱の籠もった吐息。
「乾先輩?……」
「………身体は拭くし、パジャマも着せるし、上掛けは秋用にするし、ともかく全部ちゃんとするから」
「………………」
 もういっかい、と唸られた。


 唸られて。
 ねだられたのかも。
 せがまれたのかも。
 しれなかった。
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