How did you feel at your first kiss?
絵に描いたような夏だ。
「おー!すっげ眩しい!」
眩しいと言っては笑い、蝉が鳴いてると言っては走って行き、肌がジリジリ痛いと言っては一身にその日差しを浴びている。
「暑いなー…!冷たいアイス食いたい。スイカ食いたい。プールで泳ぎたい。でもやっぱテニスかなー!」
「よくまあ次から次へと思い付くもんだな…」
夏休みも半分以上過ぎた。
昨日から跡部の家に泊まっていた神尾は、跡部と共に外に出るなりこのはしゃぎっぷりだ。
「な、跡部。夏ってやりたいこといっぱいあるよな!」
「お前は春も夏も秋も冬も同じ事言ってやがるよ」
「そっか?……そっか!」
同じ言葉を全く異なった感情で放った神尾を、跡部は怪訝なまなざしで一瞥する。
「何だよ」
神尾は最初不思議そうな顔をして、一瞬後あまりにも鮮やかに、笑顔になったのだ。
跡部が怪訝に問い返すと、神尾は一層明るく笑みを浮かべた。
「そっかー! 俺、跡部と、春も夏も秋も冬も一緒にいたんだな」
「………………」
それがどうしてそこまでの笑顔になって、神尾が口にする言葉なのか。
神尾の行動は跡部には判らない事が多くて、だから余計に跡部は神尾から視線が外せない。
現に、夏の強すぎる日差しを受けて満面の笑みをたたえている神尾は、しかし次の瞬間には。
「来年の夏もこうしてるかな…」
いきなりふっと声のトーンを落とすので、跡部は舌打ちした。
まるいちいさな後頭部を片手で無造作にはたく。
「い…っ……」
潤みやすい目は、もう涙目にも見えた。
自分で口にした言葉のせいか、跡部の暴挙のせいかは不明だ。
それにしたって本当に次から次へと目まぐるしい事この上ない。
いきなり噛み付かんばかりの勢いで神尾は喚いた。
「お前、今すっごい本気で叩いただろっ!」
「間違いの修正は、間違ったその場でが基本だ」
今度は本気で怒鳴って喚いてこの有様だ。
「なんなんだそれ! ペット相手じゃねえんだかんな!」
「ペットの方がよっぽど覚えがいいぜ」
「…、なんだよそれ!」
真夏の光をいっぱいに浴びて、満面の笑みを浮かべていた顔を。
陰らせて見せたのが悪い。
これまでの事を振り返ってあんな笑顔を見せるのなら、未来を思ってそれ以上の笑顔をみせるのが当然だ。
跡部はそう思った。
だから不機嫌になった。
しかしすぐに、今度はぴたりと完全に黙ってしまった神尾の、今考えている事も概ね理解して、跡部は嘆息する。
「……ったく」
跡部に叩かれた後頭部に手をあてがったままの神尾は、どうせまた、ろくでもない事を考えているに違いなかった。
跡部は屈みこみ、下からすくいあげるようにして神尾の唇に掠める程度のキスをした。
「……ゃ」
「嫌じゃねぇよ。バァカ」
こんなにも丁寧にしてしまうキスを跡部は神尾で知って、その他にも跡部にとって神尾で初めて知る事の多さに、大概分が悪いと思っているのだ。
ただでさえ自分の方が。
それなのに。
「ペットよりお前のがいいに決まってんだろ」
お前をペット扱いする気もねえよ、と神尾にも判るように跡部は言ったのだが、当の
本人が正しく理解していなくて参る。
こっちの方が伝わるかと思って、跡部がわざと音のするキスを神尾の唇に繰り返していると、いきなり恥ずかしくなってきたのか突如神尾が暴れ出した。
それを唇の端に刻んだ笑みで跡部は簡単にあしらって、内心は正直おかしくて堪らなくなる。
「何だよ。夏はやりたいこといっぱいあるんじゃねえの?」
夏はキスしたくねえの?と跡部がひそめた声で唆すようにからかえば。
神尾はそれは盛大に赤くなって動きが止まったので。
跡部はこの暑さの中酔狂だと思いながらも、すぐさま自分の両腕の中に神尾を抱きこんだのだった。
「おー!すっげ眩しい!」
眩しいと言っては笑い、蝉が鳴いてると言っては走って行き、肌がジリジリ痛いと言っては一身にその日差しを浴びている。
「暑いなー…!冷たいアイス食いたい。スイカ食いたい。プールで泳ぎたい。でもやっぱテニスかなー!」
「よくまあ次から次へと思い付くもんだな…」
夏休みも半分以上過ぎた。
昨日から跡部の家に泊まっていた神尾は、跡部と共に外に出るなりこのはしゃぎっぷりだ。
「な、跡部。夏ってやりたいこといっぱいあるよな!」
「お前は春も夏も秋も冬も同じ事言ってやがるよ」
「そっか?……そっか!」
同じ言葉を全く異なった感情で放った神尾を、跡部は怪訝なまなざしで一瞥する。
「何だよ」
神尾は最初不思議そうな顔をして、一瞬後あまりにも鮮やかに、笑顔になったのだ。
跡部が怪訝に問い返すと、神尾は一層明るく笑みを浮かべた。
「そっかー! 俺、跡部と、春も夏も秋も冬も一緒にいたんだな」
「………………」
それがどうしてそこまでの笑顔になって、神尾が口にする言葉なのか。
神尾の行動は跡部には判らない事が多くて、だから余計に跡部は神尾から視線が外せない。
現に、夏の強すぎる日差しを受けて満面の笑みをたたえている神尾は、しかし次の瞬間には。
「来年の夏もこうしてるかな…」
いきなりふっと声のトーンを落とすので、跡部は舌打ちした。
まるいちいさな後頭部を片手で無造作にはたく。
「い…っ……」
潤みやすい目は、もう涙目にも見えた。
自分で口にした言葉のせいか、跡部の暴挙のせいかは不明だ。
それにしたって本当に次から次へと目まぐるしい事この上ない。
いきなり噛み付かんばかりの勢いで神尾は喚いた。
「お前、今すっごい本気で叩いただろっ!」
「間違いの修正は、間違ったその場でが基本だ」
今度は本気で怒鳴って喚いてこの有様だ。
「なんなんだそれ! ペット相手じゃねえんだかんな!」
「ペットの方がよっぽど覚えがいいぜ」
「…、なんだよそれ!」
真夏の光をいっぱいに浴びて、満面の笑みを浮かべていた顔を。
陰らせて見せたのが悪い。
これまでの事を振り返ってあんな笑顔を見せるのなら、未来を思ってそれ以上の笑顔をみせるのが当然だ。
跡部はそう思った。
だから不機嫌になった。
しかしすぐに、今度はぴたりと完全に黙ってしまった神尾の、今考えている事も概ね理解して、跡部は嘆息する。
「……ったく」
跡部に叩かれた後頭部に手をあてがったままの神尾は、どうせまた、ろくでもない事を考えているに違いなかった。
跡部は屈みこみ、下からすくいあげるようにして神尾の唇に掠める程度のキスをした。
「……ゃ」
「嫌じゃねぇよ。バァカ」
こんなにも丁寧にしてしまうキスを跡部は神尾で知って、その他にも跡部にとって神尾で初めて知る事の多さに、大概分が悪いと思っているのだ。
ただでさえ自分の方が。
それなのに。
「ペットよりお前のがいいに決まってんだろ」
お前をペット扱いする気もねえよ、と神尾にも判るように跡部は言ったのだが、当の
本人が正しく理解していなくて参る。
こっちの方が伝わるかと思って、跡部がわざと音のするキスを神尾の唇に繰り返していると、いきなり恥ずかしくなってきたのか突如神尾が暴れ出した。
それを唇の端に刻んだ笑みで跡部は簡単にあしらって、内心は正直おかしくて堪らなくなる。
「何だよ。夏はやりたいこといっぱいあるんじゃねえの?」
夏はキスしたくねえの?と跡部がひそめた声で唆すようにからかえば。
神尾はそれは盛大に赤くなって動きが止まったので。
跡部はこの暑さの中酔狂だと思いながらも、すぐさま自分の両腕の中に神尾を抱きこんだのだった。
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