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How did you feel at your first kiss?
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 小さな小さな白い花が咲いていて、小さな小さな薄皮の丸い実を生らせている。
 まだ薄緑色の実は時期に掠れた茶色に変わる。
「フウセンカズラか」
「………………」
 自主トレでよく利用する公園の片隅で、ジャージ姿の乾が視線を流す。
 乾の隣で、首にかけたタオルで額の汗を拭っていた海堂は視線を移す。
 二人、同じ物を見つめて、それから互いへと目を向けた。
「…………乾先輩?」
 目が合うといきなり乾の手が伸びてきて、海堂のこめかみから顎へと伝い落ちる汗を、その指先が捕まえた。
 生真面目に海堂の汗で濡れた自身の指先を見つめる乾の表情に、海堂は少し首を傾けて問う。
 乾が、花を見つけた時と同じ眼差しで、自身の指先を見つめているからだ。
 海堂の汗を、乾の瞳は、優しげに、やわらかに、そして気をとられている目で見つめている。
 問いかけにも返答はなく、海堂は複雑に沈黙したまま首にかけていたタオルの端で乾の指先を拭ってしまう。
「ひどいな」
 宝物でも奪われたみたいに苦笑いする乾を軽く睨んで、海堂は群生しているフウセンカズラに視線を逃がした。
「種が」
「…うん?」
「これの」
 種。
 たどたどしい、言葉のうまくない自分から、どうして乾はいつも言葉を引き出すのだろうと海堂は不思議に思った。
「種?」
 低い声。
 あまり抑揚をつけない、淡々とした物言い。
 乾のそんな相槌に、海堂は尚も言葉を返すのだ。
「……ッス。……形、知ってます…?」
「一つの実の中に三つずつ種が入ってるって形は理解してるが……そういう話ではなく?」
「………………」
 海堂は、淡く枯れ色に近づいていっている実をひとつ、片手で軽く取り崩した。
 それを乗せたままの手のひらを乾に差し出す。
 乾の骨ばった手が海堂の手のひらの上に翳され、指先が種を転がす。
「へえ…」
「………………」
「全部になのか?」
 一粒一粒に。
 フウセンカズラの実にはハートのマークが刻まれている。
 黒い種に白いハートだ。
 乾の指先が摘まんだ種にも当然のこと。
「これは知らなかったな」
「……俺は花の名前を知らなかった」
 海堂が知っていたのは種の模様だけだ。
 乾は花の名前だけだと言う。
「海堂」
「………………」
 呼ばれて顔を上げるなり。
 唇に、キスをされた。
 ふいうちの事に目を瞠れば、乾はすぐに離れていって。
「……な……、?」
「お前と居たい」
「…乾先輩?」
「お前が、要る」
「………………」
「そんな事ばかり考えてるんだ。俺は」
 静かな声はとても落ち着いて聞こえて、海堂は、乾の言葉を正しいアクセントで受け入れた。
 そして、何をそんな当たり前の事、と思った。
 居たいのも、要るのも、そんなことは自分こそがだ。
 じっと乾を見上げた海堂の後頭部に、乾の手のひらが宛がわれて。
 乾の肩口に軽く押さえつけられるようにして、海堂は抱き締められた。
「俺は外側の事しか判らないから」
「………………」
「内側の事を知っている海堂に固執する」
「乾先輩」
 海堂の方からも、乾の背中側から回した手で乾の肩を抱き返す。
 請うような事を言わなくてもいいのだと、伝わるだろうか。
 固執というならば、いっそ自分の方がどれだけ。
「………………」
 乾を抱き締めたことで、海堂の手のひらからは三粒の種が零れ落ちていった。
 小さな黒い種の、小さな白いハートは、自分達の抱擁でばらけて、口付けで散らばって、そうしてこの場所に、また根付いて花を咲かすだろう。
 約束のように。


 知っている事が違うというなら。
 知らない事が違うというなら。
 それがどれほどの安堵であるのか、自分達はちゃんと知っている。
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