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How did you feel at your first kiss?
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 跡部の家の庭には噴水がある。
 西洋式の言わずもがなゴージャス極まりない代物だ。
 どこか美術館とか公園だとかにあってしかるべきだろうという、桁違いに大掛かりな噴水。
 日も暮れて、薄闇の中、神尾は跡部と共にそこににいる。
「うわ…」
 吹き上げる水力がいきなり強くなった。
 中央の水飛沫が、夜空に高く高く突き上げていく。
 神尾は見上げて、思わず声を上げた。
 それと同時に、すぐさま後ろ髪を掴まれもした。
 跡部に。
 乱暴に。
「……っ…、て…! 痛い、って、跡部…!」
 結構本気の力だ。
 横暴な仕草に神尾が抗議を口にしたのも束の間。
 跡部は低い声で吐き捨ててきた。
「なに余所見してやがる。神尾の分際で」
「あーっ、何だよその言い方!」
「うるせえ」
 綺麗な顔を露骨に不機嫌に歪ませて、跡部は神尾の髪を手に握りこんだまま、きつく神尾に口付けてきた。
 有無も言わせず。
 ただきつく。
 つよく、ふかく。
「…っ、…ぅ、」
 今し方。
 唇と唇が触れる寸前に、噴水に気をとられてしまったのは確かに神尾だったが。
 その事を咎める以上のやり方で卑猥に口付けられてしまって、神尾は身体から芯がなくなっていく不安定さで、跡部からのがっつくようなキスを受けとめる。
 跡部が怒る理由も判らなくはなかったが、でも。
 ここまで怒んなくてもいいじゃん、と神尾は思った。
 しかも、その濃密なキスに、もう充分追い詰められていたのに。
 更にあからさまに舌と舌とを絡められ、濡れた粘膜を啜られた時にはもう、神尾は涙目になっていた。
「……、…、ャ…」
 離れた唇から、濡れたものが零れる。
 喉まで伝っていく。
 跡部はその流れを追って、舌先を神尾の肌の上で動かした。
「……ふ……、…」
 神尾は軽く仰け反って、跡部の肩口のシャツを両手で握りこむ。
 跡部はすぐに戻ってきた。
「てめえが余所見なんざするからだ」
 辛辣に咎めた割には、跡部の手は不意に優しくなった。
 神尾の髪を掴み締めるのを止めて、神尾の後頭部をゆるく撫で付けてくるように動いた。
 強引に塞がれていた唇を、一度、やわらかく塞ぎなおした後。
 跡部の唇は、神尾の下唇と上唇を順に含んでくる。
 唇を啄ばまれて、結局神尾はくたくたと跡部の胸元に顔を埋めた。
 噴水の縁に腰掛けている自分達。
 こんなにも近くにある水の音が、とても遠くの方から聞こえてくるようだった。
「噴水……見ただけなのに…よぅ…」
 焚きつけられて。
 煽られて。
 どうしたらいいのだ。
 こんなで。
「………………」
 神尾の半泣きの抗議を、跡部はいかにも機嫌良さそうに聞いている。
「構いやしねえだろ」
 お前に欲しがらせんのは俺の趣味だ、と耳元でとんでもなくいやらしい声が告げてくる。
 神尾は真っ赤になって唸った。
「そういうこと言うなっ」
「ああ? 何が不満だ」
「…、言うなっ、ばかっ」
 神尾がどう怒鳴ろうとも、跡部は薄笑いで神尾の身体を手のひらで撫で、耳の縁に口付けて、頬を寄せてくる。
 全身で、手加減無く、そそのかしてくる跡部に。
 神尾は乱れてしまいそうな息を噛み殺しながら、跡部にしがみつき、抗議する。
「欲しがれよ。もっと」
「…っ、だ…から…そういうこと言うなってば!」 
「いいじゃねえか。俺が手に入るんなら」
「自分で言うかそういう事っ」
「てめえが一向に言わねえから俺が言ってやってんだよ」
 欲しがれ、と跡部は神尾に何度も告げる。
 今だけでなく、今までも幾度となく、そう告げてきた。
 足りない、足りない、とまるで訴えているかのように何度も。
 跡部がどうしてそうも貪欲に自分から引き出したがるのか、神尾には不思議でならなかったのだけれど。
「……俺が、跡部の事どう好きかなんて…全部知ってるくせによぅ…」
 言わせんなよなあと眉尻を下げる神尾を、跡部はしなやかな腕できつく抱き込んでくる。
「知らねえな」
「………………」
「俺は知らない」
 笑っているのに、熱っぽい声で。
 ぞんざいな言い方なのに、まるで切に祈るように。
 跡部は言うのだ。
「俺を欲しがれよ」
「……もっと…?」
「もっと。…ずっとな」
 どうしようもないようなキスで縛られる。
 夜の噴水の、淡い水飛沫が身体に当たる。
 降ってくるものを身に浴びて、抱き締めあって、外から濡れて、口付けあって、中からも濡れて。
 もっと、も。
 ずっと、も。
 叶えるよ、と神尾は思う。
 望む跡部の背中に回す手に力を込めると、何かにひどく枯渇している男が、やわらかに吐息したのが判って、神尾はほっとした。
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