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How did you feel at your first kiss?
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 乾が欲しくなったのを海堂は聡く察したようだった。
 異変は乾が、それまで深く拓いていた海堂の身体から、引き抜いていくさなかに感じ取られてしまったらしく、海堂の目元が赤くなって、乾は苦笑交じりに唇をそこに近づける。
 そうしながら全て身体を退けて、海堂の隣に乾も身体を横たえる。
 気づかなくていいよと事実を封印するように乾は海堂に唇を寄せたのだが、余韻というには未だ生々しい甘い倦怠感と深い疲労感を纏わせて海堂のしなやかな身体が乾の身体に乗ってきた。
 名残も、新たな兆しも。
 重なりあってしまう。
「………どうするの」
 それから?と乾の苦笑は深まった。
 正直なところ乾はかなり驚いてもいて、何だか小声になってしまった問いかけで尋ねれば、顎を引いて俯いてしまった海堂の表情は見えなくなってしまう。
「海堂」
 さらさらと、指の合間から零れる黒髪を、何度も何度も乾はすきあげた。
 指先に感じる甘さに無心でそれを繰り返していると、海堂の視線が乾の元へゆっくりと戻ってきた。
「海堂、…?…」
「………………」
 海堂の指先が丁寧に乾の頬に宛がわれ、ふわりと重なるキスで唇を掠られて乾は目を瞠る。
 先程まで、あらゆる体液で濡れそぼっていたような海堂の唇が乾に伝えてくるのは清潔で温かな体温だった。
 ただ重ねられているだけで甘い優しい感情がひたひたと身のうちを埋めてくるような気がする。
 乾が目を閉じると海堂はもう少し深く擦り寄るようにして角度を変えてきた。
 こすれあった頬が微かな熱を帯びている。
 唇の入口の浅いところにいる海堂の舌は、とけそうに柔らかな印象で。
 なのに乾の舌と絡ませ合うと濡れた強い弾力が伝わってくる。
 海堂が放つ熱はひどく熱いが決して相手を傷ませない。
「どうするの……」
 乾が口にした言葉は、今度は意味が全く違う。
 先程は海堂に動向を尋ねた。
 今度は海堂を少しだけ甘くなじった。
 もう散々にのみこませて、おぼれさせて、したたらせた。
 海堂は先程から声も出せないままでいる。
 体温も、嬌声も、体感も、すべてこのベッドの上で狂わせた。
 今はもう乾の身体の上に乗り上げるのが精一杯の様子で、それにも関わらずキスを繰り返して乾を唆す清廉な卑猥さに乾はつけこむ。


 乾のそんな声を聞き、海堂の瞳はひどく幸せそうに濡れてきらめいてから閉ざされた。
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