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How did you feel at your first kiss?
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■結構切羽詰ってる乾先輩×おとなしめに可愛い薫■



「ここの筋トレ。少ないか?」
「……………っす」
 ノートの紙面を指差す乾に向かい合って、海堂はこくっと頷いた。
 今日も部室に最後まで残ったのは乾と海堂だった。
 毎日乾の作った練習メニューをこなす海堂に、一日の終わりに簡単に調整をしてやるのが乾の日課だった。
「物足りないかもしれないけど、ここはいじれないな。かわりにこっちならもう少し増やしてもいい」
「二倍」
「…二倍?うーん…二倍はなあ…」
「………………」
 海堂は口数が少ない。
 そして言葉は端的だ。
 彼は曖昧な表現を使わない。
 生真面目な顔をしてノートを見据えている。
「海堂」
 呼びかけてから。
 海堂の首の裏側に指先を当てて、引き寄せて唇を合わせる。
 先に確認をとると断られそうだと乾は思って、でもこれも随分と卑怯なやり方だと
ひっそり自嘲する。
「………先輩」
「ずるいな。こういうのは」
 やんわりと笑んだ乾の柔和な顔から、笑みが消える。
 張り詰める。
 目つきが急にきつくなって、海堂を直視した。
「でも」
「……………………」
「卑怯でもずるくても何でもいい」
「……………………」
 息を呑んでいる海堂に、机一つ挟んだ体勢から身体を乗り上げるようにして口づける。
 乾の手のひらの中の海堂の首筋は、細かった。
 怯えながら熱くなっていく肌が、乾の手のひらをひどく疼かせた。







■モテモテ乾先輩×きつめに可愛い薫■



 駐輪場の所に、数人の人だかりが出来ていた。
 鞄を小脇に挟んで、海堂は興味もなくその横を取って校外に出ていこうとする。
 さすがにすれ違う時にそこにいた面々の顔が目に入った。
 乾がいた。
「…………………」
 いたというより、乾を中心にその輪は出来ていた。
 半泣きになっている女生徒が一人。
 彼女を取り囲むように、友人らしい女生徒が3人。
 状況をからかって見ているような男子生徒が乾の後ろに2人。
「だから、乾君、いっつも好きな人がいるからって断ってるけど、それって誰なの?だいたいほんとに好きな人いるの?」
「そうだよ。口から出任せで言ってるんだったら、頑張って頑張って告白したのに、この子が可哀想じゃない」
 海堂は肩で溜息をつく。
 出来ればこんなところを通りたくはなかった。
 そこにいるのは全員3年生で、乾は部活の先輩で。
 何だかもめてるし。
「……………………」
 勝手にやっててくれと思うのが半分、こんなところでやってんじゃねえよと思うのが半分。
 海堂は不機嫌に歩みを早めた。
「もしどうしてもこの子と付き合えないんだったら、せめて乾が誰のこと好きなのかちゃんと教えてよ」
 うーん、と乾の困ったような声がした。
さっさと通り過ぎてしまおうと海堂はその横を抜けた。
「こいつ」
「…………………」
 抜けた、筈だったのに。
 ぐいっと腕を引かれていた。
 バランスの崩れた海堂が、何事が起きたかと思えば、二の腕を乾に掴まれていた。
 何してるんだこの人とぎょっとしているうち、乾は海堂の方を見ずに、ぶっきらぼうに言った。
「こいつがね、好きなんだよ。俺」
「……………は?」
 そこに居たほぼ全員が同じ声を上げたが、一番怪訝に、は?と口にし、表情にも出ていたのが海堂だった。
 ひどく怖いものがそこにあるような目で、海堂は乾を見上げる。
 何を言ってるんだと乾をどれだけ食い入るように見つめても視線は合わなかった。
「…………………」
 場は呆けたように静まり返ってしまって、暫くしてみるとそこには乾と海堂だけが残されていた。
 海堂の腕は、まだ乾に掴まれたままだ。
「…………その場逃れに、ああいう馬鹿みたいなこと言い出すんじゃねえ」
 不機嫌を極めるような勢いで言った海堂は、二の腕が握りつぶされそうになって息を詰めた。
「………海堂」
「………ぃ…っ…てぇ…んですけど……」
「海堂」
 痛いのは腕だけではなくなった。
 身体中、と海堂が気づいた時には、全身を身包み抱きしめられていた。
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