How did you feel at your first kiss?
脳の中に新しい回路を作ろうかと乾は言った。
海堂の頭部を大きな手のひらに包んで、じっと見つめてくる。
いつもは無機質に感じる目の色が濃くて強い。
何を言われているのかよく判らなかった。
「………………」
だから海堂は乾がそうしてくるのと同様に、じっとその眼差しを見返した。
唇が塞がれる。
いきなり、でも、軽く。
「………………」
海堂の後頭部には乾の手のひらが宛がわれたままだ。
空いている方の手、乾の左手が海堂のシャツの釦にかかる。
海堂は小さく息を詰めた。
「こういう風に、釦を外したりとかさ……」
「………………」
「普段は利き手で当然やるような事を、いつもとは逆の手でやるんだよ」
現に乾の手はぎこちなかった。
釦がなかなか外れない。
そのたどたどしさが奇妙に気恥ずかしく、海堂は目を伏せた。
睫毛が視界に影を落とす。
海堂は黙って自分の胸元で滞っている乾の左手を見つめた。
「うまく出来ないって事は、脳にとっては新しい刺激なんだ」
「……乾先輩」
「相当じれったいけどな」
苦笑いして、乾は海堂の唇に丁寧にキスを落とした。
海堂は俯いていたはずなのに、回りこむようしにして、あくまでも唇に、しっかりと。
「少しずつ、少しずつ、でも頻繁に」
「………………」
「こうやって刺激を与えてやると、脳の中に新しい回路が出来上がっていくんだ」
釦がひとつ、やっと外れた。
乾の指先は次の釦にかかり、二つ目からはもう少しスムーズになった。
三つ目。そして四つ目。
「………………」
長い時間をかけて、釦は全て外された。
海堂の肩からシャツも外される。
露にされた肩先にもキスをしてきた乾の頭を、海堂は左手で触れた。
何か、胸が甘く詰まるような感触がする。
どう、触れればいいのか見失う。
手のひらに甘い体温が籠もった。
よく知っている筈の乾から、初めての感触がする。
「海堂」
乾の左手に髪をすかれる。
だから乾の背中を海堂も左手で抱き返した。
こんなにも近くにいて、それなのに少しもどかしい感じがする。
それは決して嫌な感じではなく、焦がれる思いに油を注がれるような、ゆるやかな甘苦しさだった。
乾の言葉のまま、言うなれば違う回路が海堂の中に出来上がってしまったかのように。
「………どうした?」
「……わかんね……でも…」
「ん………」
言葉でうまく言えない海堂の真情を正しく酌んで、乾は海堂の手を包んだ。
重なった手。
繋いだ手。
自分達は一続きになってキスを交わした。
脳の中にも新しい回路が出来かけでもしているのか、深く唇を重ね合わせる刺激が頭の中に生々しく沈んできた。
「………、…ン………」
ひくりと慄いた海堂の困惑を、乾はゆっくりとキスで舐め溶かした。
乾の舌が海堂の口腔でひらめくのと同じく、左手が海堂の背を擦っている。
その少し慣れない感触に海堂は肩を上下させた。
海堂もまた左手を差し伸べて、乾の後ろ首に指先をうずめた。
互いが互いを抱き寄せて。
むさぼられるようにキスが深くなり、その感触がひどくまわりのいい薬のように四肢を巡った。
いつものようにはいかない手。
その手のする事に引きずられる。
キスを小さく飲みながら、頭の中にも身体の中にも、ゆっくりたまっていく熱の在り処と行方を思った。
行先も、出所も、全ては乾のその手から。
新しく作られた回路を通って、より一層、深く濃く染み渡った恋愛感情は、また一層確かなものとなって埋まってしまった。
海堂の中に。
海堂の頭部を大きな手のひらに包んで、じっと見つめてくる。
いつもは無機質に感じる目の色が濃くて強い。
何を言われているのかよく判らなかった。
「………………」
だから海堂は乾がそうしてくるのと同様に、じっとその眼差しを見返した。
唇が塞がれる。
いきなり、でも、軽く。
「………………」
海堂の後頭部には乾の手のひらが宛がわれたままだ。
空いている方の手、乾の左手が海堂のシャツの釦にかかる。
海堂は小さく息を詰めた。
「こういう風に、釦を外したりとかさ……」
「………………」
「普段は利き手で当然やるような事を、いつもとは逆の手でやるんだよ」
現に乾の手はぎこちなかった。
釦がなかなか外れない。
そのたどたどしさが奇妙に気恥ずかしく、海堂は目を伏せた。
睫毛が視界に影を落とす。
海堂は黙って自分の胸元で滞っている乾の左手を見つめた。
「うまく出来ないって事は、脳にとっては新しい刺激なんだ」
「……乾先輩」
「相当じれったいけどな」
苦笑いして、乾は海堂の唇に丁寧にキスを落とした。
海堂は俯いていたはずなのに、回りこむようしにして、あくまでも唇に、しっかりと。
「少しずつ、少しずつ、でも頻繁に」
「………………」
「こうやって刺激を与えてやると、脳の中に新しい回路が出来上がっていくんだ」
釦がひとつ、やっと外れた。
乾の指先は次の釦にかかり、二つ目からはもう少しスムーズになった。
三つ目。そして四つ目。
「………………」
長い時間をかけて、釦は全て外された。
海堂の肩からシャツも外される。
露にされた肩先にもキスをしてきた乾の頭を、海堂は左手で触れた。
何か、胸が甘く詰まるような感触がする。
どう、触れればいいのか見失う。
手のひらに甘い体温が籠もった。
よく知っている筈の乾から、初めての感触がする。
「海堂」
乾の左手に髪をすかれる。
だから乾の背中を海堂も左手で抱き返した。
こんなにも近くにいて、それなのに少しもどかしい感じがする。
それは決して嫌な感じではなく、焦がれる思いに油を注がれるような、ゆるやかな甘苦しさだった。
乾の言葉のまま、言うなれば違う回路が海堂の中に出来上がってしまったかのように。
「………どうした?」
「……わかんね……でも…」
「ん………」
言葉でうまく言えない海堂の真情を正しく酌んで、乾は海堂の手を包んだ。
重なった手。
繋いだ手。
自分達は一続きになってキスを交わした。
脳の中にも新しい回路が出来かけでもしているのか、深く唇を重ね合わせる刺激が頭の中に生々しく沈んできた。
「………、…ン………」
ひくりと慄いた海堂の困惑を、乾はゆっくりとキスで舐め溶かした。
乾の舌が海堂の口腔でひらめくのと同じく、左手が海堂の背を擦っている。
その少し慣れない感触に海堂は肩を上下させた。
海堂もまた左手を差し伸べて、乾の後ろ首に指先をうずめた。
互いが互いを抱き寄せて。
むさぼられるようにキスが深くなり、その感触がひどくまわりのいい薬のように四肢を巡った。
いつものようにはいかない手。
その手のする事に引きずられる。
キスを小さく飲みながら、頭の中にも身体の中にも、ゆっくりたまっていく熱の在り処と行方を思った。
行先も、出所も、全ては乾のその手から。
新しく作られた回路を通って、より一層、深く濃く染み渡った恋愛感情は、また一層確かなものとなって埋まってしまった。
海堂の中に。
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