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How did you feel at your first kiss?
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 シャワーだけで大丈夫かなと、乾は海堂に問うでもなくひとりごちている。海堂はといえば、何故か乾も一緒に浴室に入ってきているので、ひどく困惑していた。
「あの、…乾先輩」
 しかし海堂の戸惑いなど物ともしない乾の手によって、海堂の雨に濡れそぼった衣類は次々と剥がれていく。
「ちょ…、…っ……」
「シャワーしかない時に身体を効率よく温めるにはな、海堂」
 乾が、自らの手で全裸にさせた海堂の両肩にタオルをふわりと被せた。
 その上からシャワーを宛がってくる。じんわりと、深い温かさが肌に滲みた。
 確かに、直接シャワーだけ浴びるのとでは格段の違いだ。
 海堂が、目を見張ったのに気づいた乾が、甲斐甲斐しく海堂の冷えた身体にシャワーの温流を注ぎながら微苦笑と共に囁いてきた。
「ひょっとして、また猫に傘貸した…?」
「……違う」
 あからさまに意外そうな顔をする乾を見上げ、海堂は憮然と言った。
「傘は飛んでいった」
 ここに。
 乾の家に、向かう途中。
 傘は突風で一瞬のうちに、ホオズキのような形になって空へ飛んでいった。
 秋雨前線が猛威を振るい、朝からの大雨だったにも関わらず、手のつけようもない程にびしょ濡れになって乾の元を海堂が訪ねることになった経緯はそんな訳だ。
 そして、海堂の物言いのいったい何がおかしかったのか、小刻みに肩を震わせて乾は笑い出している。
 笑いながらも優しい手のひらは絶えず海堂を冷やさぬよう気遣っていた。
 シャワーの湯だけに限らない。
 丁寧な所作の乾の手に、海堂は身体をゆっくり温められていく。
 身体は温まる。寒さを、ふと海堂が覚えた箇所は、もうひとつだけ。
 そこにもすぐ、乾はやってきた。
 唇に、飢えた様なキスが被さって。
 これでもう、海堂は全身くまなく乾によって温められたのだった。
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