How did you feel at your first kiss?
単独行動が多いという自覚は、勿論ある。
でも海堂は、そんな自分よりも実はもっと単独行動が多いと思っている相手がいた。
何故かあまり孤立が目立たないけれど。
その相手、乾は一人で行動する事がとにかく多い。
付き合いが悪い訳ではないようなのだが、ふと気づくと、その場にいないという事が、よくあった。
秘密主義者なのだ。
そんな乾が今、おいでおいでと手招きしている。
乾が顔と手を出しているのは化学準備室だ。
海堂は、乾が自分を呼んでいると判ってはいたが、それでもつい辺りを見回すようにして乾に笑われる。
「そうそう。俺は海堂を呼んでる」
「………………」
「おいで、海堂」
「………………」
何でそんな所にいるのか。
何で自分を呼ぶのか。
何で。
疑問は多々ありつつ、それでも海堂は言われるまま乾の所へと向かう。
何ですかと乾に問うより先に、手首を軽く握りこまれて、するりと室内に入れられた。
「先輩」
返事のように頬にキスをされて海堂は絶句した。
背後で扉はすでに閉められていたけれど、校内でこういう事をされたのは初めてだった。
「一発殴られるかもとは思ってたんだが、ありがとうな海堂」
のんきに笑う乾に海堂は溜息をついた。
「……あんたを殴ったことなんかねえよ」
「コートの中で胸倉つかまれて怒鳴られた事はあるけどな」
「状況考えりゃ当然でしょうが!」
「判ってる。感謝してるんだ」
言葉にかぶせて、今度は唇にキスが落とされてきた。
海堂は目を伏せて、それを素直に受け止める。
不思議と、今度はそうするのが自然な気がしたからだ。
「……つくづくよく出来た奴だよな、海堂は」
「あんた以外にそんなこと言う奴誰もいねえよ」
乾の大きな手のひらが背中に回ってくる。
抱き寄せられて、長身の乾の腕の中に囲われる。
海堂は溜息混じりに呟いた。
「……何でこんな時間に、こんなとこにいるんですか」
「ちょっと考え事しようかなと思ってさ」
「なら、…」
「待った待った。帰ろうとしない」
ぎゅっと抱き寄せられてしまって、挙句背後で施錠の音を聞いてしまって、海堂は乾の胸元で微妙に赤くなった。
随分と子供じみた引き留め方をしてくれたものだと思う。
それこそ突き飛ばすなり怒るなりするのは簡単だが、結局海堂もこの状況に甘んじてしまうのだ。
「海堂を抱き締めてる方が良い」
「……はあ…」
生返事になってしまうのは、返しようがないくらいに乾の声が真剣で、甘いからだ。
「カーテン、開いてます…」
「あっち側から見える角度じゃないから大丈夫」
「………………」
透明なガラス窓の向こうが気がかりで進言した海堂に、乾は子供っぽいような口調で呟いた。
「完全に外と遮断するとまずいだろう。心情的に」
「何が?」
「俺が。暴走したら海堂困るだろ」
「別に……」
「殴ってでも止められる?」
「殴る殴るって、あんたさっきからなあ、」
「海堂にそれだけのことさせるかもっていう自覚があるから言ってるだけだよ」
乾の両手が海堂の腰まで降りてきて。
密着していた胸元が空いた。
海堂は呆れを込めて乾を睨み上げる。
それでも。
近づいてきた乾に対して、唇をひらいたのは海堂の意志だ。
くぐってきた舌を口腔に招き入れて、舌を使われる濃いキスをひとしきり受け入れる。
キスで潤みきった唇を丁寧に愛撫されるようなやり方で、静かに唇と唇の接触は止む。
「海堂、早く高等部おいで」
「一年経てば普通にいきます」
一年かあ、と乾ががっくりと肩を落とすのが海堂には不思議だった。
中等部と高等部とに別れたって、足りない分は学校の外で会えばいいだろう。
別に困らないだろうと思うのに。
乾には案外ダメージが大きいようだった。
それが海堂には不思議だった。
「考え事って、そういう事っすか」
「ん?……んー……、ん」
「返事の意味が判らねえ……」
「うん」
幾分はっきりとした返答と共に、ふいをつくように乾が海堂の額に小さく音をたててキスをしてきて。
甘ったるいやり方にいろいろな事が有耶無耶になってしまう。
ただ何となく、海堂の中に。
落ち込む乾を甘やかしたいような奇妙な感じが残った。
「乾先輩」
海堂は腕を伸ばして乾の頭をそっと抱え込むように引き寄せた。
「………………」
乾は少し驚いた顔をしていて。
しかし海堂の腕に逆らわない。
「海堂」
低い声が鎖骨のあたりにぶつかる。
海堂がそこに乾を引き寄せたからだ。
「……ものすごく……ご褒美を貰ってるような感じなんだが…」
海堂は返事をしなかった。
実際どうなのか判らなかったからだ。
単純に。
率直に。
今したいことをしただけだから。
そう思いを込めた手で抱き締める。
特別な、ひと。
乾の手に腰を抱かれて、お互いがお互いの思いを込めた手で繋ぎ止める。
特別な、ひと。
繋がる、絡まる、結びつける。
それは幾つもあったっていい。
もしどこか一つが緩んでも、他がある。
解けた個所を直している間も大丈夫だ。
卒業くらいで離れようもないことは。
こうしていれば判るだろう。
でも海堂は、そんな自分よりも実はもっと単独行動が多いと思っている相手がいた。
何故かあまり孤立が目立たないけれど。
その相手、乾は一人で行動する事がとにかく多い。
付き合いが悪い訳ではないようなのだが、ふと気づくと、その場にいないという事が、よくあった。
秘密主義者なのだ。
そんな乾が今、おいでおいでと手招きしている。
乾が顔と手を出しているのは化学準備室だ。
海堂は、乾が自分を呼んでいると判ってはいたが、それでもつい辺りを見回すようにして乾に笑われる。
「そうそう。俺は海堂を呼んでる」
「………………」
「おいで、海堂」
「………………」
何でそんな所にいるのか。
何で自分を呼ぶのか。
何で。
疑問は多々ありつつ、それでも海堂は言われるまま乾の所へと向かう。
何ですかと乾に問うより先に、手首を軽く握りこまれて、するりと室内に入れられた。
「先輩」
返事のように頬にキスをされて海堂は絶句した。
背後で扉はすでに閉められていたけれど、校内でこういう事をされたのは初めてだった。
「一発殴られるかもとは思ってたんだが、ありがとうな海堂」
のんきに笑う乾に海堂は溜息をついた。
「……あんたを殴ったことなんかねえよ」
「コートの中で胸倉つかまれて怒鳴られた事はあるけどな」
「状況考えりゃ当然でしょうが!」
「判ってる。感謝してるんだ」
言葉にかぶせて、今度は唇にキスが落とされてきた。
海堂は目を伏せて、それを素直に受け止める。
不思議と、今度はそうするのが自然な気がしたからだ。
「……つくづくよく出来た奴だよな、海堂は」
「あんた以外にそんなこと言う奴誰もいねえよ」
乾の大きな手のひらが背中に回ってくる。
抱き寄せられて、長身の乾の腕の中に囲われる。
海堂は溜息混じりに呟いた。
「……何でこんな時間に、こんなとこにいるんですか」
「ちょっと考え事しようかなと思ってさ」
「なら、…」
「待った待った。帰ろうとしない」
ぎゅっと抱き寄せられてしまって、挙句背後で施錠の音を聞いてしまって、海堂は乾の胸元で微妙に赤くなった。
随分と子供じみた引き留め方をしてくれたものだと思う。
それこそ突き飛ばすなり怒るなりするのは簡単だが、結局海堂もこの状況に甘んじてしまうのだ。
「海堂を抱き締めてる方が良い」
「……はあ…」
生返事になってしまうのは、返しようがないくらいに乾の声が真剣で、甘いからだ。
「カーテン、開いてます…」
「あっち側から見える角度じゃないから大丈夫」
「………………」
透明なガラス窓の向こうが気がかりで進言した海堂に、乾は子供っぽいような口調で呟いた。
「完全に外と遮断するとまずいだろう。心情的に」
「何が?」
「俺が。暴走したら海堂困るだろ」
「別に……」
「殴ってでも止められる?」
「殴る殴るって、あんたさっきからなあ、」
「海堂にそれだけのことさせるかもっていう自覚があるから言ってるだけだよ」
乾の両手が海堂の腰まで降りてきて。
密着していた胸元が空いた。
海堂は呆れを込めて乾を睨み上げる。
それでも。
近づいてきた乾に対して、唇をひらいたのは海堂の意志だ。
くぐってきた舌を口腔に招き入れて、舌を使われる濃いキスをひとしきり受け入れる。
キスで潤みきった唇を丁寧に愛撫されるようなやり方で、静かに唇と唇の接触は止む。
「海堂、早く高等部おいで」
「一年経てば普通にいきます」
一年かあ、と乾ががっくりと肩を落とすのが海堂には不思議だった。
中等部と高等部とに別れたって、足りない分は学校の外で会えばいいだろう。
別に困らないだろうと思うのに。
乾には案外ダメージが大きいようだった。
それが海堂には不思議だった。
「考え事って、そういう事っすか」
「ん?……んー……、ん」
「返事の意味が判らねえ……」
「うん」
幾分はっきりとした返答と共に、ふいをつくように乾が海堂の額に小さく音をたててキスをしてきて。
甘ったるいやり方にいろいろな事が有耶無耶になってしまう。
ただ何となく、海堂の中に。
落ち込む乾を甘やかしたいような奇妙な感じが残った。
「乾先輩」
海堂は腕を伸ばして乾の頭をそっと抱え込むように引き寄せた。
「………………」
乾は少し驚いた顔をしていて。
しかし海堂の腕に逆らわない。
「海堂」
低い声が鎖骨のあたりにぶつかる。
海堂がそこに乾を引き寄せたからだ。
「……ものすごく……ご褒美を貰ってるような感じなんだが…」
海堂は返事をしなかった。
実際どうなのか判らなかったからだ。
単純に。
率直に。
今したいことをしただけだから。
そう思いを込めた手で抱き締める。
特別な、ひと。
乾の手に腰を抱かれて、お互いがお互いの思いを込めた手で繋ぎ止める。
特別な、ひと。
繋がる、絡まる、結びつける。
それは幾つもあったっていい。
もしどこか一つが緩んでも、他がある。
解けた個所を直している間も大丈夫だ。
卒業くらいで離れようもないことは。
こうしていれば判るだろう。
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