How did you feel at your first kiss?
最近、近所の神社がちょっとしたパワースポットとして有名になっている。
毎年初詣に行っていた馴染みの小さな神社なだけに、ここ最近の賑わいぶりに神尾はびっくりしていた。
「やな予感はしてたんだけどよう。初詣に行ったら大行列で大変だったんだ、一月一日から」
思い出して溜息をつく神尾は、跡部の片腕に抱き込まれている。
今年になって初めて、跡部に会った。
跡部の部屋に入ってから、何だかんだと接触が多くて、広い広い部屋の中で始終くっついているような状態だ。
「俺、パワースポットとか、そういうの判んないけど。恋愛運とかよくなるんだって」
「てめえには必要ねえだろ」
「何で?」
聞いた途端頭を叩かれた。
「何すんだよ!」
どうしてこんな甘ったるく抱き寄せてくる腕と同じ手で、無慈悲に叩いてもくるのかと、怒鳴った神尾など物ともせずに。
綺麗な顔を見るからに不機嫌そうにさせて、跡部は神尾を睨み据えてくる。
「俺様と付き合ってて、それ以上恋愛運とやらを良くする必要がどこにある」
「……自分で言うか、そういうの…」
それが跡部でもあるのだけれど。
神尾ががっくりと肩を落とすと、跡部は今しがた自分が叩いた神尾の頭部に唇を埋めてくる。
冷たい。
優しい。
不機嫌。
甘い。
訳が判らない。
「………別に恋愛運だけじゃないし。成功運とか、金運とか、そういうのにも効くって」
「ますます必要ねえだろ」
「………………」
王様然とした風体で言い切られれば、確かにそうだけどさあ、と神尾は溜息をつくしかない。
今更ながら、とんでもない奴だよなあと跡部を見ていて思う。
「俺は別に、そういうの目当てで行ったんじゃないんだけど」
「もしそうだったらとっくに泣かしてる」
「…泣…、………泣くか!」
「泣くだろ」
軽い笑み混じりに、ふいうちで唇にキスされた。
跡部の髪から、ふわっといい香りがして、くらっとくる。
いつの間にか入り込んできた舌で口腔を探られて、神尾は咄嗟に跡部の腕に指先を縋らせた。
「…涙目じゃねえの」
「………………」
深く絡まったキスが、するりとほどけて。
至近距離から囁かれる。
神尾が恨めしく睨みつけても跡部は笑うだけだ。
ほんの少しも嫌な感じのしない、むしろ優しい笑い方だから神尾も言い返せない。
瞼の上に跡部の唇を押しあてられて、おとなしく目を閉じてそれを受け止める。
「パワースポットなんざ、わざわざ出かけていく必要ねえよ」
「……え…?」
「いちいちそんな事しなくても、もっと簡単に出来るだろうが」
何だかもう、べったりだ。
くっついて。
跡部に背後からしっかりと抱きこまれて、座り込んでいる神尾は。
自分自身を皆、跡部に取り囲まれている。
「出来るって……パワースポットとかって、そんな簡単に作れるものか?」
「そこに行けば元気になる、楽しくなる、落ち着く、そうなればいいだけの話だろ。だったら、自分の部屋をパワースポットにしちまえば、わざわざ出かけて行かなくたって毎日部屋に戻るだけで普通に気分も上がるだろ」
その発想はなかったと神尾はびっくりして、跡部って時々すごいなと言うと、いつも凄いんだと怒鳴られた。
「え、じゃあさ。テニスコートとかも、なるかな」
だったらいいなと思って問えば、もうなってんじゃねえのと言って跡部が軽く笑った。
「そっかー、パワースポットって、そういう事でいいんだよな」
そこに行けば気持ちが改まって、気分が和んで、嫌なことを払拭出来て。
楽しくなって、元気が出て、頑張ろうって思えて。
今よりもっと、良い事が増えていく。
「今更なこと言ってんじゃねえよ」
跡部が呆れたような声で神尾の耳元に囁いて、腕の力を強めて抱き込んでくる。
身包み抱きしめられて、あれ?と神尾はふいに気づいた。
パワースポット。
もしかして、これって、まさにそうなんじゃないだろうか。
跡部のいる所。
跡部という存在。
神尾はそう思ったのに。
「俺専用だけどな」
「………………」
身体と身体が密着する。
あれ?と神尾は再度首を傾げた。
それはつまり。
もしかして、跡部にとっての自分が、そうだということなんだろうか。
パワースポットなんて跡部には無縁そうなのに、彼はすでにそれを持っていると、その仕草で伝えてくる。
自分がそうなのだろうか。
本当に?と神尾はこっそりと背後を窺うように目線で振り返って。
透きとおるような瞳の色を間近に見つけた。
瞬きすると接触しそうなくらいに近い。
「………跡部…?」
そっと、小さく呼びかける。
どちらからともなく引き合うように、唇と唇が。
かすかに、重なる。
「………………」
やけに神妙な、丁寧なキスになってしまったのが。
気恥ずかしかった。
毎年初詣に行っていた馴染みの小さな神社なだけに、ここ最近の賑わいぶりに神尾はびっくりしていた。
「やな予感はしてたんだけどよう。初詣に行ったら大行列で大変だったんだ、一月一日から」
思い出して溜息をつく神尾は、跡部の片腕に抱き込まれている。
今年になって初めて、跡部に会った。
跡部の部屋に入ってから、何だかんだと接触が多くて、広い広い部屋の中で始終くっついているような状態だ。
「俺、パワースポットとか、そういうの判んないけど。恋愛運とかよくなるんだって」
「てめえには必要ねえだろ」
「何で?」
聞いた途端頭を叩かれた。
「何すんだよ!」
どうしてこんな甘ったるく抱き寄せてくる腕と同じ手で、無慈悲に叩いてもくるのかと、怒鳴った神尾など物ともせずに。
綺麗な顔を見るからに不機嫌そうにさせて、跡部は神尾を睨み据えてくる。
「俺様と付き合ってて、それ以上恋愛運とやらを良くする必要がどこにある」
「……自分で言うか、そういうの…」
それが跡部でもあるのだけれど。
神尾ががっくりと肩を落とすと、跡部は今しがた自分が叩いた神尾の頭部に唇を埋めてくる。
冷たい。
優しい。
不機嫌。
甘い。
訳が判らない。
「………別に恋愛運だけじゃないし。成功運とか、金運とか、そういうのにも効くって」
「ますます必要ねえだろ」
「………………」
王様然とした風体で言い切られれば、確かにそうだけどさあ、と神尾は溜息をつくしかない。
今更ながら、とんでもない奴だよなあと跡部を見ていて思う。
「俺は別に、そういうの目当てで行ったんじゃないんだけど」
「もしそうだったらとっくに泣かしてる」
「…泣…、………泣くか!」
「泣くだろ」
軽い笑み混じりに、ふいうちで唇にキスされた。
跡部の髪から、ふわっといい香りがして、くらっとくる。
いつの間にか入り込んできた舌で口腔を探られて、神尾は咄嗟に跡部の腕に指先を縋らせた。
「…涙目じゃねえの」
「………………」
深く絡まったキスが、するりとほどけて。
至近距離から囁かれる。
神尾が恨めしく睨みつけても跡部は笑うだけだ。
ほんの少しも嫌な感じのしない、むしろ優しい笑い方だから神尾も言い返せない。
瞼の上に跡部の唇を押しあてられて、おとなしく目を閉じてそれを受け止める。
「パワースポットなんざ、わざわざ出かけていく必要ねえよ」
「……え…?」
「いちいちそんな事しなくても、もっと簡単に出来るだろうが」
何だかもう、べったりだ。
くっついて。
跡部に背後からしっかりと抱きこまれて、座り込んでいる神尾は。
自分自身を皆、跡部に取り囲まれている。
「出来るって……パワースポットとかって、そんな簡単に作れるものか?」
「そこに行けば元気になる、楽しくなる、落ち着く、そうなればいいだけの話だろ。だったら、自分の部屋をパワースポットにしちまえば、わざわざ出かけて行かなくたって毎日部屋に戻るだけで普通に気分も上がるだろ」
その発想はなかったと神尾はびっくりして、跡部って時々すごいなと言うと、いつも凄いんだと怒鳴られた。
「え、じゃあさ。テニスコートとかも、なるかな」
だったらいいなと思って問えば、もうなってんじゃねえのと言って跡部が軽く笑った。
「そっかー、パワースポットって、そういう事でいいんだよな」
そこに行けば気持ちが改まって、気分が和んで、嫌なことを払拭出来て。
楽しくなって、元気が出て、頑張ろうって思えて。
今よりもっと、良い事が増えていく。
「今更なこと言ってんじゃねえよ」
跡部が呆れたような声で神尾の耳元に囁いて、腕の力を強めて抱き込んでくる。
身包み抱きしめられて、あれ?と神尾はふいに気づいた。
パワースポット。
もしかして、これって、まさにそうなんじゃないだろうか。
跡部のいる所。
跡部という存在。
神尾はそう思ったのに。
「俺専用だけどな」
「………………」
身体と身体が密着する。
あれ?と神尾は再度首を傾げた。
それはつまり。
もしかして、跡部にとっての自分が、そうだということなんだろうか。
パワースポットなんて跡部には無縁そうなのに、彼はすでにそれを持っていると、その仕草で伝えてくる。
自分がそうなのだろうか。
本当に?と神尾はこっそりと背後を窺うように目線で振り返って。
透きとおるような瞳の色を間近に見つけた。
瞬きすると接触しそうなくらいに近い。
「………跡部…?」
そっと、小さく呼びかける。
どちらからともなく引き合うように、唇と唇が。
かすかに、重なる。
「………………」
やけに神妙な、丁寧なキスになってしまったのが。
気恥ずかしかった。
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