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How did you feel at your first kiss?
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 最初から勝手に酷い人間だと決め付けてこられて気分がいい訳が無い。
 第一印象が最悪だったというなら否定はしないが、それだって半ば一方的に突っかかってきたのはどっちの方だったのかと言ってしまえば結論は目に見えている。
 会えば突っかかってくるか憎まれ口ばかりきいてくる。
 鬱陶しければ相手にしないのが常だ。
 何だかんだ言いながら顔を合わせ、口をきき、時にはテニスまでして、しまいには家にまで連れ込んで。
 どれも好まざる相手にとる行為ではない。
 跡部にしてみれば数々の妥協だってしてやったのだ。
 好きになってしまったもの仕方ないと、非常にお子様な相手に合わせて、跡部なりに順を踏み、気長に待ってもやったのだ。
 それがだ。
 仮に、生意気にも神尾にとって自分の感情が不本意な好意だと、迷惑だと疎まれるなり責められるならばまだしも、神尾は最初からそんなの嘘だと決めてかかってきた。
 そういう風に遊ばれるの好きじゃないと勝手に傷つき、からかって楽しいかと勝手に責められ、俺は本当に好きなのにと勝手に区別されて告白された。
 神尾のあまりの暴君さに呆れ返った跡部が、その時感じた怒りにまかせて神尾を抱いた事も決して褒められた話ではなかったが、だからといって何もああまで泣かなくてもいいだろうと跡部は唖然とした。
 神尾は、それで跡部が思わず手を止めれば、やっぱり俺じゃ嫌なんだとか出来ないんだとか言って更に泣いたから最悪だ。
 それはどっちの台詞だと思って責めても話は平行線で、抱こうとすれば泣かれ、止めても泣かれ、結局跡部はまるで無理矢理神尾を抱いたような行為をとらされた。
 しかしそうやって滅茶苦茶な中でも触れてしまえば箍が外れて、のめりこんで抱き尽くした自覚はあった跡部が、行為の意味づけを軌道修正しようと全て済んだ後に生真面目に神尾を呼べば、何を怯えるのか神尾は首を左右にうち振って聞き入れようとしない。
 とにかく自分を非道な人間のままにしておきたいのかと跡部もほとほと苛立つくらい神尾は頑なだった。
 好きだとまで言葉にした跡部に、神尾の返答は、また俺としてくれんの?というつくづく的外れなものだった。
 神尾が跡部の事を好きなのは跡部にも判ったし、神尾は神尾で跡部に言葉で告げてもきた。
 それなのに、あくまでもお互いの感情は違うものだと思い込んでいる神尾がいて、跡部は自分が太刀打ちできないほど厄介な相手にそれでも固執する自分自身を生まれて初めて自覚した。
 一緒にいる時間が増えて、二人きりの時には必ずキスをして。
 濃密にその身を抱く事も回数を重ねてきていて、それでも。
「っゃ…、…んぁ、…」
「………そういう声出しておいて嫌がるようなこと言ってんじゃねえ」
「だ、…っ…ぁ…っ…ァ…」
 跡部の手で溶けて、声で乱れて、視線で炙られているくせに。
 神尾は啜り泣いてかぶりを振っている。
 跡部が、例えば神尾の身体を慣らすような所作をとる時や、口でそれを愛撫しようとする時など、神尾は決まって狼狽えた。
「それ…、…しな……っ…ぃ、…で…って、俺、言ってん、…のに…、…な、んで?」
 今も神尾は泣き濡れた目を真っ赤にして跡部の肩をぎこちなくも懸命に押しやろうとしている。
 跡部は神尾の両足の狭間に入り込んでいて、濡れた指が細い下肢から深みに射し入れられている。
 神尾の内側を探りながら跡部が唇で食みかけた所を神尾の拒絶にあっている。
 いつもそうだ。
 神尾の方に負担がかかるような跡部の無茶には寧ろ神尾は至って寛容で。
 しかしそれではまるで跡部が神尾に、耐えさせ奉仕させ付きあわせているようではないかという気になる。
 跡部は不機嫌に舌打ちして、強引に神尾のそれを口に捉えてしまう。
「ア…、…ぁ…、っぁ…っぅ…」
 快感を与えている筈なのに跡部の耳に届いたのはどこか悲痛な泣き声だ。
 決して放出しないと食い止めている反射的な神尾の行動に、この行為が長引けば長引くほど結局辛い快感を溜めさせてしまう事を知っている跡部は、これまでにも強引にそれに逆らって続けた事はあるのだが、いきついた後の神尾の泣きっぷりを思うと苛立ちながらも身を引く事の方が多かった。
 この悪循環はいったい何なのだと跡部は憂いだ。
 抱き締めて、口付ければ、縋りついてくるのに。
 好きだと、その口は跡部に告げるのに。
 同じ言葉を跡部が言えば、神尾は痛みを感じる顔をする。
 その身を拓き、揺さぶり、跡部が快感を追えば例え痛みがあっても安堵した顔を見せるのに。
 神尾の感覚を探るようにしてペースを落とし、腰を送り込み、拾い上げた享楽を高めてやれば、途端に蒼惶して泣き出すのだ。
「…なん、…なんでそれ……っ…、」
「…………………」
「…、ャ…、て…、や、だ…って、言……、…のに……っ……」
 怖がる手が跡部の肩に触れ、一層そこを暴いて揺すれば、しがみついてきた。
 一気に追い上げられていく感覚に涙をいっぱいに溜めた神尾が跡部の身体の下で切羽詰った声を上げる。
「……、…ん、で…?……っ…ぁ、っ…ャ、…っ」
「お前が…縋りついてくるからだ」
「ァ…っ…、ア、っ…ぁ」
「……お前が俺に、めちゃくちゃにしがみついてくるからだって言ってんだよ。聞いてんのか、馬鹿」
「……ぁ、……っ…と…、っゃ、っ、ァ、っん」
「ここまでやらねえと縋ってもこねえだろお前は……!」
 神尾の背に腕を回して、背がベッドから浮くまで抱き竦める。
 耳元に吹き込んでやった跡部の声はどこまで神尾に届いているのか判らない。
 跡部が神尾の腰をも強く抱きこめば、神尾は濡れそぼった声を上げて、跡部を体内に含んだまま一人きざはしを駆け上がる。
 泣きじゃくりながら、ごめんと繰り返す神尾の言葉の意味が、また跡部を追い詰める。
 最後までもやはり、あくまでも自分が酷い人間にでもなったような気になる。
「ごめ…、ね、……跡部……俺、跡部……好き…で…」
「………俺がお前を好きだって、何遍言や判るんだ。てめえは」
 同じ気持ちの同じ言葉に、違う意味をつけあってしまう。
 抱き締めあう力も思いも均等で。
 それなのに何が臆病になる原因なのか。
 深い口付けを噛み合せながら、薄まらない欲に満ちながら、考えている事までも。

 こんなにも。
 同じだというのに。
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