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How did you feel at your first kiss?
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 薔薇は甘酸っぱい匂いがする事を、神尾は跡部の家で知った。
 跡部の家の庭には薔薇の茂みがある。
「お前、なに当たり前の事言ってんだ」
「ええ? だってよぅ、俺こんなにたくさん薔薇の花が咲いてるとこ来た事ねえし」
 呆れ返っている跡部に告げて、神尾はゆっくりと歩いた。
 庭にはいろいろな種類の薔薇が植わっている。
 名前や種類など知らなくても、綺麗なものは綺麗だ。
 いい匂いがして、気持ちが良い。
 迂闊に手折る事は出来ないし、棘もよく見るとかなり鋭い。
 極たまに花束なんかで神尾が見る薔薇は、当然棘の処理がされているのだから。
 野生の状態で目にすると、綺麗な薔薇の棘はいっそ強暴だ。
「跡部ってさぁ……何かもう、…薔薇ー!…って感じだよな」
「ああ?」
「だから、薔薇ー!って感じ」
「………………」
 意味が判らねえとうんざり吐き捨てる跡部に神尾は唇を尖らせた。
「何で俺達って、会話出来ねえんだろ?」
「どう考えても貴様のせいだ」
「ええー、どう考えたって跡部のせいだろ!」
 薔薇の咲く茂みに沿って、それでも二人。
 肩を並べて歩いている。
「薔薇なんざ、いい喩えじゃねえだろうが」
「何で? いいじゃん」
 綺麗。
 薔薇も、跡部も。
 それは神尾だって思っている。
 けれども跡部は、さも嫌そうに嘆息した。
「薔薇みたいに害虫に弱い植物にこの俺を喩えんな」
「……そうなのか?」
「だから葡萄畑の周囲に薔薇が植えられてるんだろ」
「は? 葡萄?」
 意味が判らねえと今度は神尾が眉根を寄せる。
 何がどう繋がってそういう話になるのか、神尾には全く理解出来ない。
「ワインの葡萄だよ」
「…はぁ?」
「……何で俺とお前は、こうも会話が成り立たねえんだ」
「どう考えてもそれは跡部のせいだろ」
「バカヤロウ。お前だお前」
 先程したばかりの会話を繰り返す。
 そうして、やっぱり、どうしたって、そうなのに。
 自分達は。
 噛みあわない事の方が、圧倒的に多いのに。
「薔薇は害虫に弱いってさっき言ったろうが」
「ああ。それは聞いたぞ」
「だから薔薇が被害を受けると次は葡萄が被害を受ける。ワインをつくるための葡萄畑の回りには、だから薔薇が植えてあんだよ」
「……葡萄が害虫の被害にあわない目安でってこと?」
「綺麗な薔薇が咲いてりゃ、そこのワインは美味いんだよ」
 跡部が、ふっつり言葉を切る。
 何だ?と神尾は足を止めて隣に居る跡部を見上げた。
 それと同時に唇が軽く重なった。
「………………」
「俺が薔薇でもいいぜ」
 ふ、と吐息に笑みを混ぜた跡部の表情は艶然としていて神尾はくらくらした。
「せいぜいうまいワインになるんだな。お前」
「………は?…」
「側で薔薇が綺麗に咲いてる以上、葡萄は最高級のワインにならなきゃいけねえんだよ。判ったか」
「……、ぃ…、ってぇ…!」
 言葉と同時に、後頭部を景気よく叩かれた。
 手加減も何もない。
「痛ぇだろっ。何すんだ跡部っ」
「うるせえなぁ……」
 薔薇の茂みで。
 甘いような気配もこんなにも簡単に吹き飛ぶ自分達だけれど。
 喧嘩ばかりをこうして繰り返すけど、時々は素直な気持ちを口に出してもみるし。
 手やら足やら出して争う事もあるけれど、時々は抱き締めたり抱き締められたりして安寧してもいるし。
 薔薇と葡萄で、いいのだろう。
 これはこれで。
 自分達は共存しているのだから。
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