How did you feel at your first kiss?
そういえば最後の方が思い出せなかった。
終わったんだっけ?と神尾はぼんやり考えてみたもののやはり何も思い出せない。
そしてそれで今は。
何をしているのか。
今は?と神尾は再度自問する。
何だかひどくふわふわと気持ちがいい。
さらさらと温かい。
確か少し前までは、熱くて、熱くて、熱くて。
それが痛みなのか快楽なのか区別出来ない強さで、神尾の身体の内側で、放熱している硬い熱を、のんでいた。
体内で砕けて弾けた熔けた感触を神尾は思い出した。
終わったのだ。
思い出した。
その瞬間を思い出してみれば、身体が震えた。
「……………」
ふと、神尾は肩を抱かれた。
眼が開かない。
でも判った。
今、神尾の肩を抱いたのは、跡部だ。
支えられた肩から、湯をかけられる。
シャワーのようだった。
「……………」
どうやら浴室に運ばれているらしかった。
湯船の中にいるらしかった。
神尾の感覚は少しずつ戻ってきているが、眼を開けるのも動き出すのも酷く億劫で、そのまま頭だけで状況を考える。
跡部が、自分を浴室に運び、肩を支えられながら自分はバスタブに沈んでいて、肩口からシャワーをかけられている、それが今の状況。
しかし、意識だけが覚醒し始めた先程の神尾の身震いを跡部はどう思ったのか。
強い力でいきなりバスタブから抱きかかえられた。
膝裏に回った腕と、肩を抱かれたままの腕。
そんな簡単に抱き上げるなと神尾は思ったが、跡部のそのひどく丁寧なやり方に募るのは心地良さばかりだ。
このままでいてもいい、むしろいたい、そんな風に神尾は思ってしまった。
跡部が自分を抱き上げたまま歩き出す。
手足の先から、ぽたぽたと水滴が落ちる。
爪先が擽ったかった。
跡部はいつもこうしてくれていたのだろうか。
湯船に浸され、浴室から運ばれ、バスローブらしきものに包まれて。
そのまま抱き締められる。
濡れた身体の水滴はバスローブに吸い込まれていく。
抱き上げられ、ベッドに寝かされる。
気持ちのいい厚手のタオルの感触が、手足を辿り、バスローブがゆるめられて、肌触りのいい何かを着せられる。
跡部は終始無言のまま。
ゆっくりと進めてくる。
神尾に触れてくる手は、すごく、丁寧だった。
おざなりな感触はなく、適当な印象もまるでない。
いつも、こうされていたのだろうか。
神尾は眼を閉じたまま、横たわったまま、ゆるい甘さにひたひたと胸の内を埋められてしまう。
跡部の手に頭を撫でられた。
髪を撫でつけられたようだった。
その指先で頬にも軽く接触を受ける。
折り曲げられた指の関節で、そっと辿られた頬が、熱を帯びないのが不思議なくらい。
跡部は何もかもが、どうしようもなく優しかった。
「………………」
いつもは、神尾はこの跡部を知らない。
跡部とした後に訳が判らなくなって、翌日目覚めれば自分の身なりは整えられていて、跡部にされているのは判っていたもの、こんなやり方だったなんて神尾は今日初めて知った。
丁寧すぎる。
優しすぎる。
意識もない、眠っている自分に。
目じりに唇が寄せられる。
髪がまた撫でられて、跡部が隣に横たわったのが、弾んだベッドのスプリングで判った。
頬にも唇が。
だから、本当に、何で今こんなにも甘く優しく丁寧なのだ。跡部は。
神尾は、自分の知らないところで、こんな風にされていたのだと気づかされ、それこそもう何か甘ったるいものにどっぷりと浸ってしまって落ちていく。
目覚められない。
起き上がれない。
「………………」
跡部はゆるやかな指先での接触と、幾度かのキスとで、何のリアクションもない神尾をかまった後、静かに寝入っていった。
跡部に抱かれて自失している間も、こんなに、とんでもなかったんだと。
神尾はその日、初めて知った。
終わったんだっけ?と神尾はぼんやり考えてみたもののやはり何も思い出せない。
そしてそれで今は。
何をしているのか。
今は?と神尾は再度自問する。
何だかひどくふわふわと気持ちがいい。
さらさらと温かい。
確か少し前までは、熱くて、熱くて、熱くて。
それが痛みなのか快楽なのか区別出来ない強さで、神尾の身体の内側で、放熱している硬い熱を、のんでいた。
体内で砕けて弾けた熔けた感触を神尾は思い出した。
終わったのだ。
思い出した。
その瞬間を思い出してみれば、身体が震えた。
「……………」
ふと、神尾は肩を抱かれた。
眼が開かない。
でも判った。
今、神尾の肩を抱いたのは、跡部だ。
支えられた肩から、湯をかけられる。
シャワーのようだった。
「……………」
どうやら浴室に運ばれているらしかった。
湯船の中にいるらしかった。
神尾の感覚は少しずつ戻ってきているが、眼を開けるのも動き出すのも酷く億劫で、そのまま頭だけで状況を考える。
跡部が、自分を浴室に運び、肩を支えられながら自分はバスタブに沈んでいて、肩口からシャワーをかけられている、それが今の状況。
しかし、意識だけが覚醒し始めた先程の神尾の身震いを跡部はどう思ったのか。
強い力でいきなりバスタブから抱きかかえられた。
膝裏に回った腕と、肩を抱かれたままの腕。
そんな簡単に抱き上げるなと神尾は思ったが、跡部のそのひどく丁寧なやり方に募るのは心地良さばかりだ。
このままでいてもいい、むしろいたい、そんな風に神尾は思ってしまった。
跡部が自分を抱き上げたまま歩き出す。
手足の先から、ぽたぽたと水滴が落ちる。
爪先が擽ったかった。
跡部はいつもこうしてくれていたのだろうか。
湯船に浸され、浴室から運ばれ、バスローブらしきものに包まれて。
そのまま抱き締められる。
濡れた身体の水滴はバスローブに吸い込まれていく。
抱き上げられ、ベッドに寝かされる。
気持ちのいい厚手のタオルの感触が、手足を辿り、バスローブがゆるめられて、肌触りのいい何かを着せられる。
跡部は終始無言のまま。
ゆっくりと進めてくる。
神尾に触れてくる手は、すごく、丁寧だった。
おざなりな感触はなく、適当な印象もまるでない。
いつも、こうされていたのだろうか。
神尾は眼を閉じたまま、横たわったまま、ゆるい甘さにひたひたと胸の内を埋められてしまう。
跡部の手に頭を撫でられた。
髪を撫でつけられたようだった。
その指先で頬にも軽く接触を受ける。
折り曲げられた指の関節で、そっと辿られた頬が、熱を帯びないのが不思議なくらい。
跡部は何もかもが、どうしようもなく優しかった。
「………………」
いつもは、神尾はこの跡部を知らない。
跡部とした後に訳が判らなくなって、翌日目覚めれば自分の身なりは整えられていて、跡部にされているのは判っていたもの、こんなやり方だったなんて神尾は今日初めて知った。
丁寧すぎる。
優しすぎる。
意識もない、眠っている自分に。
目じりに唇が寄せられる。
髪がまた撫でられて、跡部が隣に横たわったのが、弾んだベッドのスプリングで判った。
頬にも唇が。
だから、本当に、何で今こんなにも甘く優しく丁寧なのだ。跡部は。
神尾は、自分の知らないところで、こんな風にされていたのだと気づかされ、それこそもう何か甘ったるいものにどっぷりと浸ってしまって落ちていく。
目覚められない。
起き上がれない。
「………………」
跡部はゆるやかな指先での接触と、幾度かのキスとで、何のリアクションもない神尾をかまった後、静かに寝入っていった。
跡部に抱かれて自失している間も、こんなに、とんでもなかったんだと。
神尾はその日、初めて知った。
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