How did you feel at your first kiss?
神尾はベッドにうつ伏せになっている。
両手の手のひらの上に顎を乗せて肘をつき、上半身だけ僅かに持ち上げ、じいっと見つめている。
少しだけ首を傾けて、真夜中。
見つめているのは跡部だ。
「………………」
隣で眠る綺麗な寝顔。
それはいつ見ても、そうなのだけれど。
神尾は瞬きもしないで跡部を見つめる。
見惚れているというよりは、ちょっと、実は、笑いたい。
神尾は今、結構本気で笑いたい。
けれどもここまで圧倒的に綺麗な寝顔を晒されては、笑うに笑えない。
跡部ー、と神尾は声にしないで口の中で呟いた。
「……腹出して寝るなよう…」
面白すぎると神尾は思った。
でも笑えない。
面白いのと同時に、色気過多だろうこれはと心底から思うからだ。
するりとなめらかな肌と鋭利な顔のライン、目を閉じていても跡部のきつく整った風貌は変わらない。
そんな寝顔なのに、仰向けになっている跡部のシャツの裾は無防備に捲りあがっていて、引き締まった腹部が際どく露だ。
直してやった方がいいのだろうかと思うものの、神尾は迂闊に手を伸ばせない。
跡部の熟睡を妨げるのもこわいし、腹を出して寝ている様が婀娜めいているなんて、いったいどういう男なんだと感じてこわい。
さわれない。
確か以前は、人がいて熟睡なんか出来るかと怜悧な目をして言っていたのに。
つきあい始めて一年近くになった今、こんなにも深い眠りで跡部は今神尾の隣に横たわっている。
固く滑らかな腹筋は、呼吸に合わせて微かに動いて、じっと、いつまで見つめていても、飽きなくて。
神尾は先程からずっとこの体勢だ。
おもしろい。
色っぽい。
可愛らしい。
「………………」
ここに、寝ているのは跡部だ。
むさぼるように深い眠りへと沈んで、無防備にしている、跡部だ。
安心、してるのかな?と、神尾は誰に問うでもなく思う。
跡部が、安心しているのだとしたら、神尾は嬉しい。
どうしてかなんて説明できないけれど、ただ、そういう風に思うのだ。
ベッドの上は静かだ。
神尾は自分の心臓の音を聞いている。
とくとくと血液の流れを聞いている。
目でみる跡部の腹部、その動きに自分の呼吸を合わせてみる。
すこし、最初は苦しい気がする、ゆったりとした呼吸だった。
跡部のリズムはゆっくりと次第に神尾のリズムになる。
同じ速さで息をする。
同じ深さで息をする。
跡部の中に溺れていくような緩やかな浮遊感。
跡部の呼吸は神尾の呼吸になって、全身を隅々まで走りぬけていくように気持ちいい。
神尾は目を閉じて、もう身体が覚えたリズムで息を吸い、息を吐く。
もう見なくても判る、跡部と同じやり方で。
「…………俺も行こ」
つぶやいた。
行こう、このまま、同じリズムで跡部のところに。
神尾は目を開けて、同じ体勢でいて少し痺れている手を伸ばし、跡部のシャツを直してやった。
はだけたシャツで露になっていた腹部を覆ってやった。
跡部は起きない。
上掛けをかけてやる。
跡部は起きない。
神尾は片手で頬杖をつき、ぽんぽん、ともう片方の手で跡部の額を軽くたたいた。
跡部は起きない。
赤ん坊寝かしつけてるみたいな手つきだな、とぼんやり神尾は考えた。
跡部は、赤ん坊でも何でもないけれど。
よく眠っていて、そこは可愛い、それが嬉しい、神尾はそう思うのだ。
「…………跡部…」
実際にくっつきはしないけれど、横たわって、並んで。
跡部と同じ呼吸をしながら神尾は身体をベッドに埋める。
横向きに、跡部の寝顔を横顔で見据える。
本当に熟睡だ。
「ちゃんと…連れてけよな」
神尾は眠気にとろけた声で呟いた。
ちゃんと自分も眠って、今跡部がいる場所に行くから、だから跡部もちゃんと連れてけ、と念じる。
その日神尾の夢の中に跡部はいた。
もしくは跡部の夢に神尾は忍んだ。
どちらの中であったかは、別段問題ない。
ただそこに跡部がいて、神尾がいて、昼間二人でふと見上げた桜と、同じ花が咲いていて。
重ねる呼吸が同じだったから。
目覚めはこの上なく穏やかで、ひどく安らいだものだった。
両手の手のひらの上に顎を乗せて肘をつき、上半身だけ僅かに持ち上げ、じいっと見つめている。
少しだけ首を傾けて、真夜中。
見つめているのは跡部だ。
「………………」
隣で眠る綺麗な寝顔。
それはいつ見ても、そうなのだけれど。
神尾は瞬きもしないで跡部を見つめる。
見惚れているというよりは、ちょっと、実は、笑いたい。
神尾は今、結構本気で笑いたい。
けれどもここまで圧倒的に綺麗な寝顔を晒されては、笑うに笑えない。
跡部ー、と神尾は声にしないで口の中で呟いた。
「……腹出して寝るなよう…」
面白すぎると神尾は思った。
でも笑えない。
面白いのと同時に、色気過多だろうこれはと心底から思うからだ。
するりとなめらかな肌と鋭利な顔のライン、目を閉じていても跡部のきつく整った風貌は変わらない。
そんな寝顔なのに、仰向けになっている跡部のシャツの裾は無防備に捲りあがっていて、引き締まった腹部が際どく露だ。
直してやった方がいいのだろうかと思うものの、神尾は迂闊に手を伸ばせない。
跡部の熟睡を妨げるのもこわいし、腹を出して寝ている様が婀娜めいているなんて、いったいどういう男なんだと感じてこわい。
さわれない。
確か以前は、人がいて熟睡なんか出来るかと怜悧な目をして言っていたのに。
つきあい始めて一年近くになった今、こんなにも深い眠りで跡部は今神尾の隣に横たわっている。
固く滑らかな腹筋は、呼吸に合わせて微かに動いて、じっと、いつまで見つめていても、飽きなくて。
神尾は先程からずっとこの体勢だ。
おもしろい。
色っぽい。
可愛らしい。
「………………」
ここに、寝ているのは跡部だ。
むさぼるように深い眠りへと沈んで、無防備にしている、跡部だ。
安心、してるのかな?と、神尾は誰に問うでもなく思う。
跡部が、安心しているのだとしたら、神尾は嬉しい。
どうしてかなんて説明できないけれど、ただ、そういう風に思うのだ。
ベッドの上は静かだ。
神尾は自分の心臓の音を聞いている。
とくとくと血液の流れを聞いている。
目でみる跡部の腹部、その動きに自分の呼吸を合わせてみる。
すこし、最初は苦しい気がする、ゆったりとした呼吸だった。
跡部のリズムはゆっくりと次第に神尾のリズムになる。
同じ速さで息をする。
同じ深さで息をする。
跡部の中に溺れていくような緩やかな浮遊感。
跡部の呼吸は神尾の呼吸になって、全身を隅々まで走りぬけていくように気持ちいい。
神尾は目を閉じて、もう身体が覚えたリズムで息を吸い、息を吐く。
もう見なくても判る、跡部と同じやり方で。
「…………俺も行こ」
つぶやいた。
行こう、このまま、同じリズムで跡部のところに。
神尾は目を開けて、同じ体勢でいて少し痺れている手を伸ばし、跡部のシャツを直してやった。
はだけたシャツで露になっていた腹部を覆ってやった。
跡部は起きない。
上掛けをかけてやる。
跡部は起きない。
神尾は片手で頬杖をつき、ぽんぽん、ともう片方の手で跡部の額を軽くたたいた。
跡部は起きない。
赤ん坊寝かしつけてるみたいな手つきだな、とぼんやり神尾は考えた。
跡部は、赤ん坊でも何でもないけれど。
よく眠っていて、そこは可愛い、それが嬉しい、神尾はそう思うのだ。
「…………跡部…」
実際にくっつきはしないけれど、横たわって、並んで。
跡部と同じ呼吸をしながら神尾は身体をベッドに埋める。
横向きに、跡部の寝顔を横顔で見据える。
本当に熟睡だ。
「ちゃんと…連れてけよな」
神尾は眠気にとろけた声で呟いた。
ちゃんと自分も眠って、今跡部がいる場所に行くから、だから跡部もちゃんと連れてけ、と念じる。
その日神尾の夢の中に跡部はいた。
もしくは跡部の夢に神尾は忍んだ。
どちらの中であったかは、別段問題ない。
ただそこに跡部がいて、神尾がいて、昼間二人でふと見上げた桜と、同じ花が咲いていて。
重ねる呼吸が同じだったから。
目覚めはこの上なく穏やかで、ひどく安らいだものだった。
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