How did you feel at your first kiss?
神尾が自宅に帰る事を告げる時、跡部は返事をしないのが常だ。
それは少しばかり神尾を落ち着かなくさせる。
帰りづらい。
かといって。
実際帰らない訳にもいかないので、神尾は小さく溜息をつき、立ち上がり、跡部の部屋を後にする。
「じゃあな。跡部」
扉のノブに手をかけた神尾は、音も無かったのに近くなった慣れた香りに背後を振り返る。
跡部がいた。
もう唇が触れそうに近い。
跡部は睫毛を伏せて目を閉じていた。
「………………」
ノブを掴んでいた神尾の右の手は、跡部の左手に握りとられて。
片手だけつなぐようにして。
キスされた。
舌で探られはしないけれど。
深くかみあわされて頬が重なる。
するりと擦ってすべる感触に、頬に熱が集まりそうで神尾は少し身じろいだ。
後ずさっても背後にあるのは扉で、却ってキスでそのまま押さえつけられてしまう。
「ん…、……」
握られている手も、少し強くなった。
唇がゆっくり角度を変えて、その間も、もつれるようにキスは重なったままだ。
跡部の唇の感触はさらさらと甘い温かさで、キスで、身体も頭の中も抱き締められているみたいになる。
「……っ…ぁ…」
唇がずれた拍子に小さく声がもれてしまうのが居たたまれない。
確か自分は帰ろうとしていた筈なのにと、神尾はうまく動かない思考で考える。
今している、今日最後のキスが、今日した中で一番深くて。
どんどんどうしようもなくなっていく。
跡部の舌が、神尾の口腔にゆっくりと入ってくる。
上顎を撫でられて、舌先を小さく吸われて、濡れた音が唇の合間に生まれる。
もう、帰るのに。
「も……やめろよ…ぅ…」
「何でだよ…」
何で、なんて聞きたいのはこっちだと神尾は思った。
背にある扉に身体をあずけて、辛うじて足場を踏みとどまらせ、囁くほどに小さく低い跡部の声に息をのむ。
跡部の唇も濡れていた。
「…………帰れなくなるだろ……」
「そうしてんだよ」
「何でだよ…」
「帰したくないからだろ」
跡部が上体を屈ませてきた。
俯く神尾の唇を、下からすくいあげるようにして口づけてくる。
手をつないでいない方の跡部の右手が神尾の頬を包んで、キスがまた深くなった。
あまり肉感的な印象のない跡部の唇が、次第に貪欲なやり方で自分の唇をむさぼってくるのに。
神尾は結局どうしようもなくなって、その場に座り込んでしまった。
跡部はキスをしたまま同じように膝をついてきた。
「………あ…とべ…」
「……………」
歩けなくして、立てなくして。
帰したくないなんて本当だろうか。
跡部の考えは神尾には判りにくい事も多くて、それはお互い様だと跡部に言われた事もある自分達だけれど。
「…跡部……」
跡部の首の裏側に両手を伸ばす。
自分が縋りついているのか、跡部を抱き寄せているのか、神尾自身判らなかったけれど。
そうしたくて、強く。
近く。
身体がぴったりと重なって。
体温が滲んでくる。
跡部の小さな吐息が神尾の首筋でとける。
「…………帰せなくなるだろ……」
「そうしてんだよ」
「何でだよ…」
「帰りたくないからだろ」
会う度に、離れる度に、名残惜しんで大切に思っている。
歩けなくなって、立てなくなって。
帰りたくないなんて本当だ。
それは少しばかり神尾を落ち着かなくさせる。
帰りづらい。
かといって。
実際帰らない訳にもいかないので、神尾は小さく溜息をつき、立ち上がり、跡部の部屋を後にする。
「じゃあな。跡部」
扉のノブに手をかけた神尾は、音も無かったのに近くなった慣れた香りに背後を振り返る。
跡部がいた。
もう唇が触れそうに近い。
跡部は睫毛を伏せて目を閉じていた。
「………………」
ノブを掴んでいた神尾の右の手は、跡部の左手に握りとられて。
片手だけつなぐようにして。
キスされた。
舌で探られはしないけれど。
深くかみあわされて頬が重なる。
するりと擦ってすべる感触に、頬に熱が集まりそうで神尾は少し身じろいだ。
後ずさっても背後にあるのは扉で、却ってキスでそのまま押さえつけられてしまう。
「ん…、……」
握られている手も、少し強くなった。
唇がゆっくり角度を変えて、その間も、もつれるようにキスは重なったままだ。
跡部の唇の感触はさらさらと甘い温かさで、キスで、身体も頭の中も抱き締められているみたいになる。
「……っ…ぁ…」
唇がずれた拍子に小さく声がもれてしまうのが居たたまれない。
確か自分は帰ろうとしていた筈なのにと、神尾はうまく動かない思考で考える。
今している、今日最後のキスが、今日した中で一番深くて。
どんどんどうしようもなくなっていく。
跡部の舌が、神尾の口腔にゆっくりと入ってくる。
上顎を撫でられて、舌先を小さく吸われて、濡れた音が唇の合間に生まれる。
もう、帰るのに。
「も……やめろよ…ぅ…」
「何でだよ…」
何で、なんて聞きたいのはこっちだと神尾は思った。
背にある扉に身体をあずけて、辛うじて足場を踏みとどまらせ、囁くほどに小さく低い跡部の声に息をのむ。
跡部の唇も濡れていた。
「…………帰れなくなるだろ……」
「そうしてんだよ」
「何でだよ…」
「帰したくないからだろ」
跡部が上体を屈ませてきた。
俯く神尾の唇を、下からすくいあげるようにして口づけてくる。
手をつないでいない方の跡部の右手が神尾の頬を包んで、キスがまた深くなった。
あまり肉感的な印象のない跡部の唇が、次第に貪欲なやり方で自分の唇をむさぼってくるのに。
神尾は結局どうしようもなくなって、その場に座り込んでしまった。
跡部はキスをしたまま同じように膝をついてきた。
「………あ…とべ…」
「……………」
歩けなくして、立てなくして。
帰したくないなんて本当だろうか。
跡部の考えは神尾には判りにくい事も多くて、それはお互い様だと跡部に言われた事もある自分達だけれど。
「…跡部……」
跡部の首の裏側に両手を伸ばす。
自分が縋りついているのか、跡部を抱き寄せているのか、神尾自身判らなかったけれど。
そうしたくて、強く。
近く。
身体がぴったりと重なって。
体温が滲んでくる。
跡部の小さな吐息が神尾の首筋でとける。
「…………帰せなくなるだろ……」
「そうしてんだよ」
「何でだよ…」
「帰りたくないからだろ」
会う度に、離れる度に、名残惜しんで大切に思っている。
歩けなくなって、立てなくなって。
帰りたくないなんて本当だ。
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